いわゆる“イ・スンギ法”はK-POP市場において安全網を提供する薬になるか、活動を制約する毒になるか。
【画像】NewJeans、未成年なのに「衣装が扇情的」と波紋
大衆文化芸術家に所属事務所が収益精算の内訳を年1回以上、義務的に告知するようにする内容が盛り込まれた、いわゆる“イ・スンギ法”をめぐって韓国芸能界が騒いでいる。
去る4月21日、国会文化体育観光委員会は別名“イ・スンギ法”と呼ばれる「大衆文化芸術産業発展法」の改正案を通過させた。改正案は、不透明な会計処理で芸能人と所属事務所の葛藤が生じないように、収益精算の内訳公開を義務化することを骨子とした。
ここには未成年芸能人の労働と関連する条項も含まれた。問題はそこで発生した。
改正案には、未成年芸能人の労働時間の上限ラインをこれまでより低くし、過度な容貌の管理、保健・安全上の危険性がある行為の強要、暴行・暴言およびセクハラ、学校欠席や自主退学など学習権の侵害などを禁止した。
しかし改正された労働時間が公開され、反発の声が出ている。
韓国芸能制作者協会、韓国マネジメント連合、韓国レコード産業協会、韓国音楽レーベル産業協会、韓国音楽コンテンツ協会の5団体は5月16日に声明を出し、「年齢を細分化し、青少年芸能人の用役提供時間を制限する今回の改正案は、現実から背を向けた“大衆文化産業発展阻害法案”に過ぎない」として一部の規定を削除してほしいと要求した。
彼らは所属事務所が年1回以上、定期的に会計の内訳および報酬に対する内訳を公開する条項新設に対しては反対しないが、未成年芸能人の労働時間制限を強化した条項がややもすると彼らの正常な活動を妨げることになるとの憂慮を表わした。
特に改正案の中で、未成年大衆文化芸術家の用役提供時間を制限する内容は、様々な問題を引き起こすという立場だ。改正案は、既存の「15歳未満・週35時間」「15歳以上・週40時間」となっていた労働時間上限規定を「12歳未満・週25時間および日6時間」「12~15歳・週30時間および日7時間」「15歳以上・週35時間および日7時間」に減らした。
この改正案の基準通りであれば、現在、K-POPシンドロームを起こしている第4世代グループメンバーの大部分が活動に制約を受けることになる。
例えばガールズグループNewJeansは、2008年生まれの“末っ子”ヘイン(15)を含め、メンバー全員が15~19歳で未成年に該当する。
LE SSERAFIMは2003年生まれのカズハ(19)と2006年生まれのホン・ウンチェ(16)、IVEも2007年生まれのイソ(16)をはじめ、ユジン(19)、レイ(19)、ウォニョン(18)、リズ(18)と、ガウル(20)を除くすべてのメンバーが未成年者で、週35時間および一日7時間の活動に制限されることになる。
YGエンターテインメントの新ガールズグループ「BABYMONSTER」のメンバー、2009年生まれのチキータ(14)や2008年生まれのローラ(14)、“平均年齢16.8歳”の最年少ボーイズグループというタイトルで5月15日にデビューした「The Wind」の2008年生まれのチャン・ヒョンジュン(14)などは、15歳未満であるため、週30時間および一日7時間しか活動できなくなる。
そのため前出の5団体は、「産業界は現行法にともなう15歳未満の青少年に対する労働時間制限を遵守してきたし、その結果、青少年芸能人の平均活動時間は2020年基準、現在の改正案で制限する用役時間よりも短い」とし、「深夜まで書籍と格闘する学生たちとは異なり、世界的な大衆文化芸術家に成長したい青少年は望む活動ができなくなり、公平性に合わない」と主張した。
特に労働時間制限の規定に対して、「放送会社や制作会社にとって相当の制約になり、該当年齢帯の出演者を忌避することにつながりかねない。それによって第2のBoA、第2のチョン・ドンウォンをこれ以上見ることができなくなることは自明だ」とし、逆差別で不平等と強調した。
5団体は該当条項の削除と産業界との議論を通じた法案の再検討を要求した状態だ。
実際、K-POP産業を担っている現職従事者らは、今回の改正案が業界に対する理解の足りない「机上の空論」と口をそろえている。
K-POP界を率いるアイドルグループの場合、未成年メンバーが含まれたケースが大多数だ。改正案が発効すれば、直ちに芸能活動に困難をきたす未成年者たちが難しい状況に置かれた。
とあるアイドル企画会社の関係者は、「“労働時間”の基準自体が不明確だ。芸能活動は出退勤が不明瞭で、練習時間や海外スケジュール、さらにメイクアップを受ける時間も労働時間に含めなければならないのかどうか、混乱している状況」と吐露した。
特にアイドルグループは大部分が「合宿」をするなど団体活動が多く、大きな打撃を受けるという憂慮が出ている。
今回の改正案は最近、数回にわたって浮上した芸能人と所属事務所間の不合理な契約と収益精算をめぐる葛藤など、慢性的な業界の慣行を解決するために発議された。
昨年、歌手兼俳優のイ・スンギは、前所属事務所HOOKエンターテインメントから約20年間、音源販売による収益精算の内訳を受け取れなかったと暴露し、LOONA(今月の少女)を脱退したチュウも、やはり収益と費用で比率が変わる不公正な契約があったとされ、大きな議論となった。
韓国を越え、グローバルに駆け回るアーティストのために、関連法令と制度を整備し、処遇を改善する努力は必ず必要だ。しかし不公正な契約をしてきた事務所に対する規制が、アーティストに被害を与える結果を生むことになれば問題でしかない。
未成年メンバーが属した、とあるアイドルグループのマネージャーは「一日7時間はとんでもない基準だ。活動の真っ最中に、成人になったメンバーたちと区別され、活動に制約が生じれば、グループ活動をしなければならないアイドルメンバーとしては疎外感と剥奪感を抱く可能性もある」と述べた。
徹夜での撮影が少なくない韓国芸能界の環境で、未成年の芸能人が健康に成長できるよう睡眠権、学習権を保障するのは正しいことだ。国家人権委員会が昨年実施した実態調査によれば、児童・青少年大衆文化芸術家78人中、57.5%が撮影期間中に一日の平均睡眠時間が「4~6時間」と答えた。
この問題点を業界も認知しており、未成年芸能人の保護のためにそれなりの安全網を設置して守ってきた。実際に大衆文化業界は自浄努力を通じて、「青少年芸術家のための指針」などを用意し、夜間活動に対して事前に同意を求めるなど、権利保護のために努力してきた。
今回の改正案が現場の声をまともに盛り込めず、法と現実の乖離だけを大きくしてしまうのではないかとの懸念の声が高まっている。実効性のある方案を講じることができるよう、国会、政府、産業界が参加する協議体を新設するなどし、実質的な議論が必要な段階だ。
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