6月24日に日本公開を迎える是枝裕和監督の最新作『ベイビー・ブローカー』。
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去る5月28日(現地時間)に閉幕した第75回カンヌ国際映画祭では、主演のソン・ガンホが韓国人俳優初となる「最優秀男優賞」を受賞し、またキリスト教関連の国際映画組織がコンペティション部門の中から「人間の内面を豊かに描いた作品」に与える「エキュメニカル審査員賞」も受賞し、2冠の快挙を成し遂げた。
先立って6月8日には韓国で公開初日を迎え、見事初登場1位を記録。プロモーションのためにカンヌから韓国に渡っていた是枝監督が6月13日に日本へと帰国し、同日、日本帰国後初の公の場となる凱旋記者会見が、東京都内で行われた。
空港から会見場に直行となった是枝監督。まずはカンヌでのソン・ガンホの最優秀男優賞の受賞について問われると「ソン・ガンホの名前が呼ばれた瞬間に、“この作品にとって最高のゴールなんだな”と思いました。その夜にパク・チャヌク(『Decision to Leave』で監督賞受賞)のチームと合同でお祝いをしたんですが、みんな幸せな夜でした。役者が褒められるのが一番嬉しいんですよね。柳楽(優弥/是枝監督の『誰も知らない』で最優秀男優賞を受賞)くんがもらったときは、柳楽くんはもう日本に帰っていて、僕だけしかいなかったので、受賞した役者さんとあの場所で抱き合って、称え合って…というのは初めてだったので、特別な夜になりました」と喜びを口に。
今作で行った韓国プロダクションでの映画制作について、「僕の演出のアプローチの仕方は基本的に日本と変わらないアプローチでやらせていただいて、そこは我を通した部分もあります。韓国はアメリカのやり方を現場で導入しているので、脚本はクランクイン前にすべて完成させて、ストーリーボードも全て書いて…ということまでしないとインしないという雰囲気だったんですが、現場で作っていくやり方を通したので、その辺は僕自身は楽でした」とふり返る。
一方で、韓国の現場で進む“働き方改革”に関しては、「良い方向に進んでいる」と高く評価。
「週に52時間という労働時間の上限が明確なので、4日働いて3日休むような感覚で肉体的には楽でした」と語る。その上で「映画界だけに言えることじゃないけど、産業自体の年齢構成が、日本は高齢化して、若い人が入ってこないという状況があり、そこは上に立つ者として責任を感じますが、韓国の現場はほぼ20代、30代が中心。(高齢化が)悪いことばかりじゃないと思うけど、韓国では僕の年齢では監督はほぼ引退して、現場には立たなくなっている。改革のスピードの速さが、若々しくて元気あるけど、ある年齢層を現場から外すタイミングが早くなっていて、そういう速さが、こういうなかなか変わらない国にいると“早すぎないか?”と心配もしています」と両国の状況の違いについて言及している。
そしてソン・ガンホとの共同作業について尋ねると、「本当に楽しい人なんですよ。その場にいると、みんながニコニコしちゃう。クランクイン前にポン・ジュノとご飯を食べて、彼のオフィスに遊びに行ったら、“いろいろ不安はあると思うけど、ソン・ガンホが現場に来たら、全てが彼のペースで進んでいくから何も心配いらない”と言われて、本当にその通りでした。予定よりも早く、現場に来て“昨日、つないだものが見れるなら見せてくれ”と言って、そこで自分の芝居だけでなくつないだものを全部見て、その上で基本的に全てほめてくれるんですけど、“最高だったけど、僕のセリフ、いま使っているテイクじゃない、2つくらい前に言ったのがあると思う。おそらく監督が切り取ったところだけだと、セリフにニュアンスまでは伝わらないかもしれないから、もう一度、比べてみてくれ。最終的な判断は監督に任せるけど、ぜひ比べてみてほしい”というやりとりを毎日やってくれて、それはすごく助かりました。彼はテイクごとに違うので、それを僕がどこまで追えてるか?言葉はわからないので、それを補ってくれているのかなと思いました。自分の芝居に対する基準がかなり高いんです。頼りになりました。最終日の前くらいに、“いま言うことじゃないけど、編集で僕のセリフがひとつ、実は途中で切った方が余韻が残っていいと思うから、間に合えば確認してくれ”と言われまして、それは切りました。それは結果的に本当によかったです。最後の最後まで一緒に走ってくれました」と明かし、強い信頼と絆を感じさせた。
『ベイビー・ブローカー』は、6月24日よりTOHOシネマズ 日比谷ほかで全国ロードショー。
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