【インタビュー①】韓国映画『殺人鬼から~』で10年越しデビューの新鋭監督、処女作に込めたこだわりとは?
今年6月30日に韓国で公開されるや否や、「全く新しい韓国スリラーの傑作!(NYAFF)」と絶賛の声が相次ぎ、新時代の逃走“サイレント”スリラーとして話題を集める映画『殺人鬼から逃げる夜』。
本作は、これがデビュー作となる韓国映画界の新鋭クォン・オスンが監督・脚本を努め、革命的に新しい恐怖の追走劇と、命綱なしで物語に放り込まれるようなノンストップで畳みかける衝撃で、観る者を緊張と興奮の渦中に引きずり込むという。
そして来る9月24日に日本公開を控え、本作で10年越しのデビューを飾ったクォン・オスン監督に書面でインタビューを行った。
――監督は今作で商業デビューを迎えるまで10年以上かかったが、この時間はどのように過ごし、どのような思いを抱えていた?
とりあえずシナリオを書き続けました。映画の製作資金を集め、俳優のキャスティングが決まるまでは長い時間、待たなければなりませんが、その時間がただ過ぎてしまうのが嫌で書き続けたのです。映画の企画が白紙になったら、もう一度、新しいシナリオを準備するということを繰り返しながら10年という時間が経ってみると、10本くらいのシナリオが出来上がり、シナリオとして完成していないトリートメントが数本、残りました。あきらめようか、やめようかという考えと、映画を撮れるまで書き続けようという思いが入り混じり、10年という長い時間、踏ん張ってきました。
――ギョンミの家でドシクが斧で扉を壊し、裂け目から顔をのぞかせるシーンがあるが、『シャイニング』のオマージュ?
はい、その通りです。子どもの頃、大きな影響を与えてくれた作品へのオマージュを私の映画に入れたいと思っています。これからも私が作るさまざまな映画の中で、そんなオマージュを見つけることができるでしょう。そうすれば、ああ、この監督はこの作品に影響を受けたんだなと、私の映画を見た観客に私が影響を受けた素晴らしい作品を知ってもらい、もう一度、見てほしいという願いがあります。今後、私の映画でどんな映画にオマージュを捧げるか、探していただけたらありがたいです。
――映画の中盤でドシクがなかなか手を出さない、もどかしい展開が続きますが、どのような狙いが?
特別な意図を持った展開というよりは、登場人物が出会うことで生まれる状況の変化、それによって派生する関係の変化を意図したところ、それが自然と、もどかしさになって伝わったのではないでしょうか。『殺人鬼から逃げる夜』は冒頭から犯人を公開して始まります。そのため、観客はすでに全ての情報を得た状態で映画を見ることになりますが、一方の登場人物は劇中で展開される状況に反応していくので、その受け止め方の違いから、もどかしさが生じるのだと思います。
――アジア映画として初めてアカデミー作品賞を獲得した映画『パラサイト 半地下の家族』は、どのような存在?
アカデミーの舞台に韓国の監督が立っていること自体、感激して誇らしい気持ちになりました。ポン・ジュノ監督の受賞によって、韓国映画のステータスがより高まったのと同時に、世界的に韓国映画への関心もさらに高まりつつあるので、映画を作る立場にいる者として、ありがたかったです。
――日本映画は見る?また影響を受けた監督/作品は?
最近はあまり見る機会がありませんが、学生時代は数多くの作品を見ました。中でも個人的に大好きな映画は『ラブレター』。今でも時々、頭の中が複雑になると、もう一度見返す大切な映画の1本です。
――今作ではチン・ギジュさん、ウィ・ハジュンさんが主演を務めたが、今後起用したい俳優や女優は?
『殺人鬼から逃げる夜』を苦労して一緒に作ったチン・ギジュさん、ウィ・ハジュンさん、 パク・フンさん、キル・ヘヨンさん、キム・ヘユンさんとぜひまた一緒に映画を撮りたいです。
(文=高 潤哲)
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