『旋風』俳優ソル・ギョングが振り返る30年ぶりドラマ出演「不安はあったが消えた。もう怖くない」【インタビュー】

2024年07月15日 話題

一市民の濃い哀愁を見せてきた俳優ソル・ギョングが変わった。

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近年のソル・ギョングはエリートの配役が多い。最近では、大統領候補(『キングメーカー 大統領を作った男』)や組織のボス(『キル・ボクスン』)、朝鮮の名門家の学者(『茲山魚譜-チャサンオボ-』)などを務めた。

そして、6月28日に公開されたNetflixオリジナルシリーズ『旋風』では、国務総理を演じた。

50代に入り、「知天命アイドル」という修飾語がつくほど洗練されたイメージが一役買った。

ソル・ギョングは『旋風』で、大統領を殺害する国務総理パク・ドンホを演じた。政治の師匠である大統領(演者キム・ホンパ)が、不純な経済権力と手を組んだ事実を知ったことから、彼を殺害するとともに、政界の誤った人事を裁く覚悟で血の嵐を巻き起こす人物だ。

ソル・ギョング
(写真=Netflix)ソル・ギョング

ソル・ギョングは「政治物にはまだ慣れていない。映画『キングメーカー』に続き今作が2回目だが、当時は時代的背景もあったし、実際の人物もいた。『旋風』は、また雰囲気が違って新しかった。普段言わない言葉もあり、重みがあった。冗談の一言がなく、楽なセリフへの渇望があった」と打ち明けた。

国務総理のパク・ドンホは、自分がすべてのことをやりこなせるという危険な信念を持っている。

ともすれば傲慢に映るかもしれないパク・ドンホに、ソル・ギョングは自然さを吹き込んだ。作中の事件はファンタジーに近いが、実際に起こりそうな緊迫感を作りあげた。

「“危険な信念と堕落した信念がぶつかる”というのが、『旋風』に最もふさわしい言葉です。パク・ドンホは自分が一掃させることができるという危険な信念を持っています。ファンタジー的な人物として役作りをしました。現実味はありつつも、特定の人物が思い浮かばないように演じました」

何より、1994年のドラマ『大きい姉さん』(原題)以来、実に30年ぶりのドラマ出演だ。長い間、作品さえ良ければドラマにも出演したい意思を示してきたソル・ギョングだが、いざ出演が決まると不安が押し寄せてきたという。

「ドラマという壁が私のなかにありました。始まる前から怖がっていました。台本を読んで、強い印象を受けました。しても後悔、しなくても後悔すると感じました。最終回まで読んでみて、“厳しく書いたんだな”と思いました。一つ一つ考えると理解できないのですが、妙な快感がありました」

今回の作品を通じて、ドラマに対する不安は完全に消え去った。これ以上、ソル・ギョングが怖がることはない。

「ドラマも“台本が良ければやる”と言ってきましたが、簡単には決められませんでした。でも実際にやってみたら、大したことじゃなかったんです。セリフも多かったですが、息が詰まるほどではありませんでした。次の作品もドラマです。もう楽になりました。ハハ」

ソル・ギョング
(写真=Netflix)ソル・ギョング

そんなソル・ギョングは、昨年公開された映画『THE MOON』、韓国で年内の公開を控える新作映画『普通の家族』(原題)に続き、今回の『旋風』まで、女優キム・ヒエと3作品連続で共演した。

もっとも、『THE MOON』では一度もぶつからず、『普通の家族』も近い関係性ではなかったため、演技で息を合わせる機会は少なかった。ただ、今回は戦うかのようにに立ち向かった。

「キム・ヒエは私にとって身に余る相手役です。現場の緊張感から、会話はあまり交わしませんでした。どこか冷たい感じがありました。大統領が罪を犯したと感じたとき、パク・ドンホにとっては希望がすべて崩れていった感覚だったんです。だからすべて戦うことにしました。キム・ヒエのおかげで良い演技ができました」

『旋風』で2人は国家最高権力をめぐって激しく争う。殺さなければ死ななければならない薄氷の上の政治争いで、2人は命がけの死闘を繰り広げた。

演技で対決した権力争いだが、絶対に勢いで負けてはならないという思いが、2人の表情からうかがえた。強く攻めてくるパク・ドンホをひたすら避け、カウンターパンチを入れるチョン・スジン(演者キム・ヒエ)の姿は、手に汗を握らせた。

「ひたすら攻撃と守備の繰り返しじゃないですか。へとへとになりました。音も退屈で、神経戦もたくさんしました。負けたらダメですから。キム・ヒエのおかげで演技の楽しさを感じました」

ソル・ギョング
(写真=Netflix)ソル・ギョング

韓国最高の俳優に挙げられるソル・ギョングだが、現在も彼にとって良い演技は“宿題”だという。新しい作品に出会うたびに、成長するというよりは自分が持っている武器を一つ出す感じだという。

「演技は私にとって、解決できない宿題です。解決しようともがく人間が“俳優”だと思いながら生きてきました。一年が経つにつれ、作品をするたびに武器を一つ投げる気分です。ある職業は3~40年もすると昇進していきますが、作品ごとに“一体なんのカードを出せばいいのか”と思います。それでもまだ、宿題をもらっています。現場にいるときが一番幸せなのが俳優じゃないですか。現場でリフレッシュし続けたいと思っています」

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