NHK・BSプレミアムで日曜日に放送されている『ヘチ 王座への道』。このドラマで主役のチョン・イルが演じているのが後の21代王の英祖(ヨンジョ)だ。この国王は、1762年に起きた大事件で有名だ。果たして、そのときに何が起こったのか。
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それは、1762年5月22日のことだった。
思悼世子(サドセジャ)の下で働く官僚の羅景彦(ナ・ギョンオン)が、「世子が謀反をたくらんでいます」と訴え出た。
王宮は大騒ぎとなり、英祖は緊急事態を発令した。告発者の羅景彦は厳しく取り調べられた。さらに、告発された思悼世子もあわてて父の英祖のもとに駆けつけ、王宮の中庭で平伏した。
英祖は怒りをあらわにした。
「お前は本当に、側室を殺したり、宮中を抜け出して遊び歩いたりしているのか」
思悼世子はうなだれているしかなかった。英祖は恐ろしい顔をして言った。
「側近の者たちが余に何も知らせなかったが、もし羅景彦がいなかったら、余がどうやってそれを知ることができたのか。こんなことをしていて、いったい国が滅びないとでも言えるのか」
震えながら思悼世子が願い出た。
「羅景彦に会わせてください。彼に問いただしてみたいのです」
英祖は拒んだ。
「そんな必要はない。すぐにここを立ち去れ!」
英祖の怒りはおさまらなかった。思悼世子の素行の悪さは、何度も英祖の耳に入っていた。酒乱であり、側近に暴力をふるうことも……。
それでも、英祖は息子を信じようとした。信じていたかった。しかし、今回ばかりは英祖の忍耐も限界を越えた。
それからしばらくして、英祖は思悼世子を呼び出した。
震えながら思悼世子が英祖の前に出ると、父は刀をふりかざしていた。思悼世子は庭先で頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「許してください。もう二度といたしません」
英祖は息子の言葉を無視した。そして、怒りにまかせて叫んだ。
「自決せよ。今ここで自決するのだ」
思悼世子は恐怖で真っ青になった。