韓国人が日本語を話すときは、「つ」と「ざ」の発音に苦労する。両方とも韓国語にはない発音だからだ。
この点でシム・ウンギョンの日本語に違和感はなかった。彼女がしっかり準備したからだろう。厳密に言えば、シム・ウンギョンの日本語が「韓国人が一生懸命に勉強して覚えた日本語」であったことは事実だが、それ以上に特筆すべきは彼女の演技力だった。
吉岡エリカが真相に近づいていく過程でシム・ウンギョンの演技力が際立ってくる。特に圧巻だったのが、父親の遺体と対面する場面だった。
このシーンにセリフはない。
シム・ウンギョンも、感情をありのままにさらけ出せばいい。その結果が、父親の死を受け入れられずにもらす嗚咽(おえつ)につながった。その迫真の演技に、見ていて涙腺がゆるんだ。
まさに、女優たるシム・ウンギョンの真骨頂であった。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)