政権の裏工作をノンフィクションのようなタッチで描いた映画『新聞記者』。最近の日本では政治に切り込んだ本格的な社会派作品はなかったが、この映画は現状を打破する意欲作となった。
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その作品で日本人記者として堂々たる主役を演じているのが、日本語がネイティブの言語ではない韓国人女優のシム・ウンギョンだ。このキャスティングには驚かされた。
同時に、韓国でも大きな実績があるシム・ウンギョンが「よくこの役を引き受けたなあ」と感心する。
当の本人はこう語っている。
「俳優は、いろいろな作品に挑戦することが大切」「自分の人生でもたくさんの経験を積みたい」
この言葉を聞いているだけで、チャレンジ精神が旺盛であることがわかる。そんなシム・ウンギョンについて振り返ると、すぐに浮かんでくるのが子役時代の印象的な演技の数々だ。
たとえば、『春のワルツ』(2006年)、『ファン・ジニ』(2006年)、『太王四神記』(2007年)……。どれも日本でよく知られる韓国ドラマの話題作だ。こうしたドラマでヒロインの子供時代を演じていたのがシム・ウンギョンだった。当時の印象は“天真爛漫な女の子”。どの役を演じても、自然な明るさが滲み出てくる。しかも、演技が本当に達者だった。
それから数年。
『サニー 永遠の仲間たち』に出演したシム・ウンギョンは、地方から転校してきてソウルの学校で訛りを嘲笑される女子学生を演じたが、あのときのオドオドした表情が秀逸だった。
それは、天真爛漫な子役が大人の女優へと成長していく姿と重なった。そして、映画『怪しい彼女』でシム・ウンギョンはその名を轟かせた。
韓国にも「子役は大成しない」という言葉があるが、シム・ウンギョンはそのジンクスが当てはまらないことを証明した。
そうなると、国内で第一線の女優としてキャリアを積みたくなるのが普通だが、彼女は果敢に国外に飛び出して、様々な挑戦を続けている。その一つが、『新聞記者』での吉岡エリカの役だった。
この『新聞記者』は、医療系大学院大学新設の極秘文書が東都新聞社に送られたところから始まる。社会部記者の吉岡エリカが取材を開始して、極秘文書の送り主が徐々にわかってくるというのが前半のストーリーだが、シム・ウンギョンの日本語は観客にどう受け止められたのだろうか。