笑顔で対応する俳優イ・ビョンホンは賢明だった。
「私は韓国人ですよ…」「私は韓国の俳優ですが?」などとストレートな警告を発することなく、気さくに「ハハハ」と笑い、不必要な誤解をまねくことを払拭した。気持ちを態度に出さなかったのだ。
第74回カンヌ国際映画祭に招待された『非常宣言』の主演陣とハン・ジェリム監督は、7月16日10時50分(現地時間)、フランスのカンヌパレ・ド・フェスティバルのフォトコールイベントに立った。
フォトコールはリュミエール大劇場で行われる公式スクリーニングを控え、同日午前に行われる公式行事のひとつだ。その後、Canal+(フランス民間テレビ局)のインタビュー時間を持つ。カンヌ映画祭に招待された全作品の出演陣と監督が参加する必須イベントだ。
今年の『非常宣言』チームは非競争部門に招待されたため、7月16日22時15分に開催される公式上映を控え、外国メディアの写真記者たちの前に朝から立った。この席には、演出を引き受けたハン・ジェリム監督、ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、イム・シワンら俳優が上がった。映画祭の公式フォトイベントであるフォトコールを通じて世界中の予備観客たちと挨拶を交わしたのだ。
4人は一緒に入場し、まず団体写真を撮った。海外のカメラマンたちは一斉に「私を見てください」「右」「左」と叫びながら、より良い写真を撮るため、骨身を削る努力を傾けた。
その後、ハン監督から順番に個人のカット撮影に入った。ハン・ジェリム監督とソン・ガンホの撮影までは何の問題もなかったが、イ・ビョンホンの順番に笑えない寸劇が繰り広げられた。
ある外国メディアの記者が、微笑みながらカメラを見つめるイ・ビョンホンに、感謝の意味を込めて、日本語で「ありがとう」と叫んだのだ。これに対しイ・ビョンホンは「ハハハ」という笑いを見せながら最後まで記者たちの写真撮影に応えた。日本の俳優と誤解した外国メディアに「I'm Korean actor」と指摘してもおかしくないが、イ・ビョンホンは、ただただ笑顔で応えた。
普通、西洋人は外見からアジア人の国籍を明確に区分できないとされる。韓国人も中国人も日本人も、彼らの目にまったく同じアジア人だ。
もちろん、東洋人も西洋人の外見だけを見て、どの国籍なのか正確に把握するのは難しい。すぐに区別することは難しいということは十分理解できるが、事前に十分な準備がなかったという点は残念だ。
少なくとも写真記者であるなら、撮影前にこの作品はどの国が出品した映画なのか、どの国の俳優が主人公なのか知っておかなければならない。もし時間が足りず、それができなかったら、隣の記者が「イ・ビョンホン」と叫ぶ言葉に適切な判断を下すべきだった。目の前に東洋人を見て、やみくもに日本人だと判断したのは時代錯誤的な行動だろう。
それでも感情を押し殺し、最後までプロらしい姿を見せてくれたイ・ビョンホンの態度は賢明だった。
(記事提供=OSEN)
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