「今年1年間にあったことを一つずつ思い出した」
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)から杭州アジア大会、そして韓国シリーズに至るまで、本当に多くのことがあった。
昨季に誰もが最高のクローザーとして活躍しただけに、大きな期待を受けていたが、ほぼ1カ月ごとに負傷するというアクシデントとも向き合った。
コンディショニングで苦労を強いられ、それに伴う起伏も見せた。それでも最後、自らのピッチングで優勝を手繰り寄せた。
韓国プロ野球のLGツインズの守護神、韓国代表投手コ・ウソク(25)の話だ。
切実さと徹底的な準備は誰にも劣らない。
WBCのときからそうだった。3月に行われる国際大会に備え、冬の間はひたすら体作りに努め、誰よりも早い時期からピッチングに突入した。代表選手が一堂に会した最初の日、最も体が仕上がっていて、最も強いボールを投げていたのがコ・ウソクだった。
ところが、予想外のアクシデントに見舞われた。
WBC開幕直前、日本の京セラドーム大阪で行われたオリックス・バファローズとの強化試合で途中から登板した際、わずか12球を投げて肩の違和感を訴え、緊急降板を強いられたのだ。
試合後、大阪市内の病院で検査した当時は「単純な筋肉痛」と診断され、それほど深刻な負傷ではないと見られていたが、本大会は1試合も登板できずに終了した。
そして大会後、韓国で行ったMRI検査の結果、右肩の回旋筋腱板の筋肉痛の一つである棘上筋の炎症を発見。以降、治療とリハビリのため長期離脱を強いられ、昨年11月から休みなく積み上げてきた努力の成果を虚しく崩すことになってしまった。
負傷のためエントリー外のまま迎えた2023年シーズン開幕。4月下旬に復帰したものの、1カ月も経たずに今度は腰の違和感を訴え、再び1カ月の欠場を余儀なくされた。
その後、ようやくマウンドに立つことができる状態にはなったが、調子の起伏を正すことは難しかった。
7月に絶頂の投球を披露して完全復活を予感させたと思えば、シーズン後半は好投と苦戦を繰り返す不安定さを露呈した。昨季に“最高の球種”と絶賛された高速スライダーの失投の比重が特に高かった。
それでも、求められた任務は完遂してきた。孤軍奮闘を続け、10月には杭州アジア大会決勝でクローザーとして登板し、金メダルを確定する最後の瞬間を飾った。
そして11月13日、夢見てきた韓国シリーズ優勝の瞬間も自ら作り上げた。同日の韓国シリーズ第7戦でも9回に登板し、相手打線を3人で打ち取った。こうして、LGに29年ぶりとなる“韓国一”の栄光をもたらした。
プロ入り以前から夢見た瞬間を自分で演出した。
幼い頃からLGファンだったというコ・ウソクは、チームメイトとの優勝セレモニーを終えた後、「本当に嬉しい。ただ、喜びと同時に惜しい瞬間もたくさん思い出した。昨年もできたはずだし、それ以前もできたはずだった。にもかかわらず、ようやく成し遂げたという惜しさがある」とし、「表彰台に立ったとき、来年もまたすぐ優勝したいという気持ちになった」と伝えた。
また、9回のマウンドに上がった当時を振り返り、「イメージトレーニングをたくさんしたからか、特別な考えは浮かばなかった。勝利が確定したときも、何か感じたことはなかった。ただ、チームメイトと一緒に優勝を祝福し、喜びながらセレモニーをしている間、今年1年間にあったことを一つずつ思い出した。そのとき、初めて泣きそうになった」と、目頭が熱くなった瞬間を明かした。
現在に至るまで多くの困難を味わってきただけに、悩みも多かった。韓国シリーズ直前には強化試合の登板途中に腰を痛めたこともあっただけに、焦燥感を避けることができなかった。
そのとき、義父であるイ・ジョンボム(李鍾範)コーチのとある“一言”が大きな力になった。現役時代に中日ドラゴンズにも在籍したイ・ジョンボム・コーチは、同い年の親友イ・ジョンフ(25)、その妹で自身の妻であるイ・ガヒョンさんの父親だ。
コ・ウソクは「義父が“私は韓国シリーズで負けたことがない。私がいるのだから、チームは必ず勝つ”と言ってくださった。自分はもちろん、ほかの選手たちにもずっと自信をもたらしてくださった」とし、「トレーニングコーチたちも本当に気を遣ってくれた。コーチたちがいなければこうして投げることはできなかった」と、周囲に感謝の意を表した。
この1年間で味わった苦難も感動もすべて心に秘めて、コ・ウソクはこの先のさらなる飛躍を誓う。
「1年間、めまぐるしいシーズンだったが、それでも無事に終えることができて幸いだ」というコ・ウソクは、「来季を考えれば回復も重要だし、再び体をしっかり作り上げることも必要だ。キム・ヨンイル・コーチとよく相談して準備する。来季はフォークボールであれチェンジアップであれ、オフスピード系の球種も上手く使ってみたい」と意気込みを伝えた。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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