韓国サッカー協会(KFA)チョン・モンギュ会長の最後の選択は一体何だろうか。
奇襲的に試みた八百長犯赦免騒動の責任を負い、一部の高位幹部を含むKFA理事陣が総辞職したなか、チョン会長も不安な立場に置かれている。
懲戒中のサッカー関係者100人に赦免措置を下すも、世論の猛非難を受けてわずか3日で撤回したKFAの所業は、韓国サッカー界史上最大の“空振り”と呼ばれている。
現在も国政調査の話が出るほど深刻な問題とされるなか、韓国国内では事態収拾の最終責任者であるチョン会長を狙った批判が後を絶たない。
本紙『スポーツソウル』の取材によると、チョン会長はKFAはもちろん、自身が運営する施工会社の建設大手・HDC現代(ヒョンデ)産業開発の主要実務者を通じて、自身の去就と関連した世論の収拾に乗り出した状態だ。
KFAのとある高位関係者は「事態があまりに悪化の一途をたどるだけに、会長も(去就に関する)苦心が大きいようだ」としつつも、「ただ、今すぐ(会長職を)辞任するのも、長期間KFAを率いた首長として道理がないということに助言を求めている状況だ」と伝えた。
チョン会長は“理事陣総辞職”を決心したなか、サッカー界にとどまらず政界などからも強い圧力が入っていることから、辞任に関する具体的な下絵を描き始めた。
理事陣の不在で一部業務に空白が発生する可能性があるだけに、主要懸案に責任を負う人事だけに参加し、後に退く計画も考慮しているという。
だが、彼がKFAを離れることが、一連の事態と本質的な問題を整理する最上の答えではない。リーダーであれば事態を積極的に収拾し、未来志向の刷新策を打ち出さなければならない。
チョン会長本人もこれを認知している。理事陣に続いて自身も今すぐ辞任を表明すれば、「無責任だ」というまた別の批判に直面する可能性が高い。
まず、KFA内部で懸念されるのはA代表の新指揮官に就任したユルゲン・クリンスマン監督と関連している。
韓国サッカー界の構造上、代表チームが揺らぐと全体も揺らぐ。クリンスマン監督招へいに大きな役割を果たしたチョン会長が辞任すれば、クリンスマン監督体制にも直ちに影響が及びかねない。
KFAのとある関係者は、「現実的に、コーチ陣へのサポート問題からあらゆる混乱が避けられないだろう。約8カ月後にアジアカップ本大会を控えたなか、A代表がさらに慌ただしくなるのではないだろうか」と述べた。
また、チョン会長との関わりが強いスポンサーシップなどの懸案をスムーズに引き継ぎ、対処できる首長を早期に見つけ出すことは容易ではない。
このような現実問題を考慮し、チョン会長は総辞職した理事陣内に含まれたマイケル・ミュラー戦力強化委員長の辞任は差し戻すものとみられる。
チョン会長が辞任せず、事態収拾に注力するとなれば、優先されなければならないのは改革意志が盛り込まれた積極的な人事改編だ。
実務最高責任者である専務理事、事務総長の2トップ体制から考え直さなければならない。専務理事と事務総長は協会の財政を担当し、建設的に牽制の役割を果たさなければならない。
しかし、チョン会長3期体制ではいずれも“イエスマン”から抜け出せなかったという批判を受けた。
ネームバリューが先行した有名競技人や行政家だけに任せるのではなく、各界に視野を広げて、サッカーと産業トレンド、民心を均等につなげる適任者を探さなければならない。少なくとも、チョン会長に「ノー」と言うことができなければならない。
実務部署に絞れば、広報とマーケティング部署を再び分離しなければならないという声がKFA内部から出ている。
チョン会長3期体制では別途に広報チームが設置されていない。ファンとのコミュニケーションの窓口を崩したも同然だ。今回のコメディのような赦免事態は、“耳を閉じた組織”の最後と何ら変わりなかった。
KFAは多種目と比べてメディアやファンから大きな関心を受けていることを知りながら、最近は主要な批判の声に対し“非対応戦略”を固守してきた。
今回の赦免事態も理事会1カ月前から水面下で案件を推進し、赦免を求める一部のサッカー関係者と背後勢力の声だけに耳を傾けた。
早期から専門的な広報責任者と実務部署を通じて、世の中の声に予め直接的・間接的に接していれば、調整できる余地があった。結果的にKFAの“非対応戦略”は最悪の事態に直面し、民心を失う決定的な原因となった。
KFA関係者は「一連の事態は広報チーム不在の長期化が根本的原因だということに共感している。さらに大きな問題は、このような状況が持続し、広報チーム長などを信じて任せられる人が大きく減ったということだ」と残念がった。
韓国サッカー界ではあちらこちらから、チョン会長が現事態を整理し、KFA刷新を率いる各界専門家が集った協議体を構成する形で改編に乗り出すべきだという声も出ている。
チョン会長はもし辞任しないのであれば、今回の赦免事態で深く傷ついたファンに再び心から謝罪し、彼らが納得できる今後の計画を残りの任期内で明確に見出すべきだ。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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