史上初となるワールドカップの冬季開催が、むしろ韓国代表には好材料になったということか。
韓国代表は現在、主力を張る選手たちが軒並み不振や負傷に苦しんでいる。
今年(2022年)に予定されているカタールW杯は、6月に開催されていた例年と異なり、開催国カタールの高温多湿な天候を避けた11月に開催される。前例のない冬季開催のワールドカップだ。
ただ、現状だけ見ると、韓国代表にとってカタールW杯の開催時期は“天運”になりつつある。
韓国代表でキャプテンを務め、絶対的エースでもあるFWソン・フンミン(29、トッテナム)は、驚異の得点力でプレミアリーグ得点王争いを繰り広げるなど、キャリアハイのパフォーマンスを見せている。
その一方で、ソン・フンミン以外の主力が軒並み下落傾向に転じている。
この時期は、以前であれば5月に最終エントリーが発表され、W杯本大会を控えて最後の準備に乗り出す重要な局面だった。
つまり、これまでと同じく今年のW杯が6月に開催されていたのであれば、韓国代表は“不完全”な状態で本大会に臨まざるを得なかった。
何より、ソン・フンミンの最大のパートナーであり、現在のパウロ・ベント監督体制で最多ゴール(13得点)を記録しているFWファン・ウィジョ(29、ボルドー)の不振が最も深刻だ。
かつてJ1リーグのガンバ大阪でも活躍を披露したファン・ウィジョだが、今回のカタールW杯アジア最終予選では計8試合に出場するも、一度もゴールを決めることができなかった。代表で最後に決めたゴールは、昨年6月5日のアジア2次予選トルクメニスタン代表戦までさかのぼらなければならない。
所属チームでの沈黙も長引いている。ファン・ウィジョは直近のリーグ・アン12試合でわずか1ゴールにとどまった。去る4月10日のメス戦で約2カ月ぶりのゴールを決めていたが、以降、再び約1カ月近くノーゴールの不振に陥ってしまった。
今季リーグ戦通算11ゴールでチーム得点王のファン・ウィジョがシーズン後半に沈黙したことにより、ボルドーも大不振に陥り、リーグ最下位に転落した。来る22日の最終節ブレスト戦を控えて、ボルドーの2部降格は決定的となっている。
ソン・フンミンと同じくプレミアリーグの舞台を戦うFWファン・ヒチャン(26、ウォルヴァーハンプトン)も、シーズン序盤こそインパクトのある活躍を見せて注目を浴びたが、その勢いも完全に折れてしまった。
ファン・ヒチャンは今年2月25日のアーセナル戦で得点して以降、リーグ戦12試合連続でノーゴールに終わっている。持ち味の猪突的な突破、チャンスクリエイトも、以前までの迫力はないという評価を受けている。
韓国代表守備陣の絶対的存在であるDFキム・ミンジェ(25、フェネルバフチェ)も、右足の負傷でリーグ戦を最後まで消化できないまま、一足先にシーズンを終えることになった。
キム・ミンジェは最近、足首の骨片除去手術を受けたが、6月に予定されているブラジル代表、チリ代表、パラグアイ代表との国際Aマッチには出場できない見通しだ。
また、キム・ミンジェの代役とされるDFパク・ジス(27、金泉尚武)も、直近のリーグ戦でハムストリングを痛めてしまった。
そして、2列目の中核を担うMFイ・ジェソン(29、マインツ)も、5月15日のリーグ最終戦で途中出場から1カ月ぶりに戦列復帰したが、以前負傷した膝を再び痛め、出場わずか7分でベンチに下がってしまった。
試合後、イ・ジェソンは自身のブログに「幸いにも、夏にワールドカップが開催されないことが肯定的だ」とし、オフシーズンの期間は負傷治療に専念することを明らかにした。
韓国代表は前回のロシアW杯で、大会直前に複数の主力選手が負傷で離脱を余儀なくされ、本大会で最精鋭のメンバーを組めなかった。
これまでも大会直前に主力が負傷離脱することから、“魔のジンクス”という異名でサッカーファンの間で語り継がれてきた。今年も同時期に負傷者が多発している状況ではあるが、W杯の冬季開催に助けられ、ひとまず悲劇は避けられた形だ。
それだけに、ブラジルやチリなど南米の強豪と対戦する6月の国際Aマッチに向けて、ベント監督がどのようなメンバー構成を組んでくれるかに注目してみたい。
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