「監督は僕のプレースタイルを知らなかった」磐瀬剛のKリーグ挑戦記。日本の頃より“吹っ切れた”1年を振り返る

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2021年の韓国Kリーグは例年になく多くの日本人選手がプレーしたシーズンだった。2部の安山(アンサン)グリナースで1年を戦った磐瀬剛もその一人だ。

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千葉県の名門・市立船橋高校出身の磐瀬は1年時から主力として活躍し、同年冬の全国高校選手権優勝に貢献して自身も優秀選手に選出。キャプテンを務めた3年時にはインターハイ制覇を経験した。卒業後は京都サンガF.C.でプロデビューし、以後FC岐阜、ザスパクサツ群馬に在籍していた。

そんな磐瀬は、なぜ2021シーズンを韓国でプレーすることを決意したのか。そして、実際に1年間戦って感じたKリーグとJリーグの違いは何だったのか。シーズン終了後の昨年12月、磐瀬がオンラインでの単独インタビューでKリーグ挑戦記を語ってくれた。

磐瀬の韓国進出を導いた“マサ”の存在

「これまでほとんど試合に出てなかった分、韓国ではある程度試合に出場できて、実戦感覚も徐々に上げられました。プロに入って初めてゴールも決められたので、点数を付けるなら60~70点ぐらいですかね」

インタビュー冒頭、2021シーズンをこう総括した磐瀬の今季成績は26試合1989分出場の1ゴール1アシスト。「日本以外の国でサッカーをするのは初めての経験だったので、最初は“大変なんじゃないか”と思っていました。でも、どの国でもサッカーをやることに変わりはないので、個人的には日本の頃と同じ感覚でシーズンを戦いました」と語る。

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)2021シーズンの磐瀬剛(左から2番目)

磐瀬が最後に日本でプレーした群馬での2020シーズン成績はJ2リーグ出場5試合のみ。うち途中出場が3試合で、出場時間も計281分だったのだから、韓国ではデビュー初年度ながら十分なプレータイムを得られていたことがわかる。では、そもそも磐瀬はなぜ韓国に渡ったのだろうか。

「(2020年に)群馬でほとんど試合に出られず、契約満了になるなと思っていました。実際、代理人からも“来年どうする”、“今のところ選択肢ないよ”と言われていたんです。そこで“マサ”が韓国で話をしてくれて、安山がそれならってことで、僕を獲得してくれました。なので、僕に今年プレーできるチームがあったのもマサのおかげですね」

磐瀬の言う“マサ”とは、市立船橋高校時代の同学年である石田雅俊のこと。卒業後も磐瀬と同期で京都に入団し、その後はレンタルでSC相模原、群馬、アスルクラロ沼津と渡り歩いた。韓国では2019年からプレーしており、安山、水原(スウォン)FC、江原(カンウォン)FCを経て今季後半は2部の大田(テジョン)ハナシチズンに在籍した。

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)石田雅俊

石田が一足早く韓国に渡った後も、2人は互いに連絡を取り合っていた。「(石田が)一人で暇だったんだと思います。だから、誰かに来てほしかったんじゃないでしょうか」と微笑む磐瀬は、石田が掛け合ってくれたことで安山からオファーが届き、すぐに移籍を決断したという。

「オファーをもらってからは即決でした。といっても、確実に行けるところが安山しかなかっただけです。それに、元々日本以外の国でプレーしてみたい気持ちもあって、(オファーをもらえば)海外でも普通に行けるのはサッカー選手ならではだと思うので、すぐに決められたと思います。もしどうしても日本でプレーを続けるとなれば、それこそJFLや地域リーグでやっていたかもしれません」

「“日本人だから攻撃的な選手”と思われていた」

かくしてKリーグ進出が決まった磐瀬。韓国に入国して2週間の隔離を過ごす間はひたすら韓国語の習得に励んだ。

「毎日同じような生活でした。起きてから運動、勉強、食事、運動、勉強、就寝というルーティンで…韓国語は一日5~6時間ぐらい、とにかくずっと勉強していました」と勉強漬けの毎日も、「元々外に出るのが好きではないから、そんなに辛くはなかった」と振り返る。

もっとも、必死に学んだ韓国語は「まったく喋れないですよ。なんとなく何を話しているのか理解できるぐらいで、本当に簡単な返事しか。しかもめちゃくちゃ片言」だったという。

日本からそう遠くないとはいえ、初の海外挑戦であることに変わりはない。「海外では自分のことを知らない人しかいないので、自分がどういう選手かを自ら表現できるようにすることを意識した」という磐瀬は、「僕の特徴は守備にあったので、ボールを奪いに行く激しさといった部分を見せられればと思っていました」と、シーズン前に立てていた目標を明かす。

安山ではチームメイトが自身を快く迎え入れてくれた。多くの選手が石田の存在を知っていたからか、磐瀬が“マサの友達”であることもわかっていたというが、肝心のコミュニケーションに難があった。チームには自分に付いてくれる通訳がいなかったのだ。

「最初はすごく緊張していましたが、周りからたくさん話しかけてくれたので、楽にチームに入ることができました。でも、通訳がいなかったので、韓国語で喋られても“何言っていんのかな”って思いながら話していました」と笑う磐瀬。幸いにも、キャプテンのヨン・ジェミンが2019年に鹿児島ユナイテッドFCに在籍していたこともあり、彼とは多少の会話を交わせたという。

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)ヨン・ジェミン

もっとも、自分に対するチームの認識はあくまで“マサの友達”止まりだった。韓国では外国人選手のことを“ヨンビョン(傭兵)”とも表現し、獲得したからには冷徹に結果だけが求められるが、磐瀬はチームからの期待感を感じなかった。

「安山自体、(自分に)そんな期待していなかったと思います。監督も僕のプレースタイルを知らなかったので。“日本人だから、技術があって攻撃的な選手なんだろう”って認識だったと思います。自分が守備的な選手であることは伝えましたが、最初はイメージの食い違いがありましたね」

それでも、ホームで迎えたリーグ開幕戦で磐瀬は先発出場しKリーグ・デビューを飾った。「試合の流れがどのような感じで、選手たちがどんなテンションでプレーしているのかを探っていました」という磐瀬は、Jリーグとの比較も交えてKリーグの印象を語ってくれた。

「日本だと“韓国は激しい”って勝手なイメージが先行していますが、実際にプレーしたらそれほどでもなくて。それでもJリーグよりは激しくて、個人でもスピードのある選手が多い。チームとしても、後ろでゆっくりボールをつないで相手をずらすよりとにかく前に早く攻める。日本でプレーしていた頃の“後ろからゆっくりボールをつなぐ”という意識が頭に残っていたので、最初は自分の考えと試合の流れがマッチしないことが多かったです」

そんな磐瀬は、第3節以降に負傷で2カ月近く戦線離脱を余儀なくされる。ただ、復帰後は徐々に先発の座を勝ち取り、シーズン中盤以降は終了までほとんどの試合でフル出場した。磐瀬本人は「結構試合には出た方だと思いますが、絶対的な存在というより、同じポジションに人がいなくて消去法で出ていたイメージです」と謙遜するが、安定した試合出場にはチームメイトからの信頼獲得もあったはずだ。

安山のシーズン成績は10チーム中7位で1部昇格に及ばず。開幕以降こそ順調に勝利を積み重ねるも、中盤以降から失速して一時9試合未勝利と低迷。終盤には監督交代から調子を持ち直したが、昇格争いに加わることはできなかった。

「勝っていても最後同点に追いつかれたり、引き分けで終わりそうなところで失点したりと、勝てないチームの典型的なパターンになっていたのできつかったですね。監督が代わってから勝てるようになったので、そのときのリズムで1年間チームとして戦えていれば、もっと昇格争いにも絡めたと思います」

“吹っ切れた”韓国での1年間、最終節でベスト11に選出

チームとしては惜しいシーズンに終わったが、磐瀬自身はKリーグでの1年間は「日本にいた頃よりも楽しくプレーできた」という。理由を聞くと、メンタル面で“吹っ切れた”と本人は語る。

「日本の頃はちゃんとボールをつながないといけなくて、“ミスをしたらいけない”という思考が常に頭にありました。もちろんミスはしない方がいいんですけど、韓国に行ってあまり考えなくなって。試合展開が前に早いこともあるので、ミスがあっても“まぁ、いっか”と考えるようになりました。ミスをしても良い気楽さというか、難しく考えず楽しくサッカーをしようというマインドでプレーできましたね」

“失敗してはいけない思考”にとらわれた日本時代から打って変わり、韓国では吹っ切れてプレーすることができた。その結果、磐瀬はシーズン最終節でフル出場しチームの勝利に貢献、その節のベストイレブンに選出された。

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)磐瀬剛(55番)

「そんな目立つような選手でもないので、ベストイレブンに選ばれるかどうかは個人的には気になりません。今まで一度もベストイレブンに選ばれたことがなかったので、最後入れてくれたのかなって思っています。まぁ、選ばれたら選ばれたで嬉しかったですけどね」

初の海外挑戦で充実ぶりが感じられた磐瀬。次回は韓国での日常生活や日本人選手との交流、今後の目標について紹介しよう。

(文・取材=姜 亨起)

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