バルセロナの来韓初戦は圧巻のゴールラッシュに終わった。
バルセロナは7月31日、ソウルワールドカップ競技場で行われたプレシーズンマッチでFCソウルと対戦。前後半で両チーム合計10ゴールが入り乱れる乱打戦の末に7-3で勝利した。
わずか約1週間前には「プロモーターによる重大な契約違反」で来日中止が突如発表され、日韓サッカー界を騒然とさせたバルセロナのアジアツアー。それでも楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏をはじめ、韓国サッカー協会のチョン・モンギュ会長や大韓体育会のユ・スンミン会長ら各所の尽力もあり、予定通りの開催に至った。
バルセロナは27日に日本でヴィッセル神戸戦を戦い、29日午後に韓国へ到着した。練習は前日の30日のみとハードな日程だったが、試合ではFWロベルト・レヴァンドフスキやMFダニ・オルモ、MFフレンキー・デ・ヨング、MFペドリなど主要メンバーが先発出場。今夏新加入のFWマーカス・ラッシュフォードも途中出場し、かつてマンチェスター・ユナイテッドで共闘したFCソウルのMFジェシー・リンガードとピッチ上で再会する場面も見られた。
ただ、その中で最も韓国サッカーファンを魅了させたのは、やはり新10番のFWラミン・ヤマルだろう。神戸戦では惜しくも無得点に終わった18歳は、FCソウル相手に“神童”の名にふさわしいパフォーマンスを見せつけた。
前半8分に自身のシュートの跳ね返りからレヴァンドスフキの先制点を演出すると、14分にはペナルティエリア右側で相手DFをかわし、中央に切れ込んで左足でフィニッシュ。26分には自陣でのロストからFCソウルに1点を返されたものの、アディショナルタイムにはDFライン後方へ抜け出し、鋭い切り返しから豪快なシュートを突き刺した。
スピードから個人戦術、ボールタッチ、連携、フィニッシュまで、あらゆる面で非凡な能力を発揮し2ゴールと活躍したヤマル。神戸戦同様にハーフタイムでの交代となったが、前半45分間だけでも、次元の違いを示すには十分だった。
今回、2010年以来15年ぶりに韓国ツアーを行っているバルセロナだが、彼らの来韓をめぐっては韓国プロサッカー連盟と韓国サッカー協会が警戒心を強めていた。というのも、韓国では海外チームのプレシーズンマッチに関連したトラブルがたびたび発生していたからだ。
その最たる例が、2019年夏に行われたユベントス対チームKリーグの一戦だろう。特に、当時ユベントスに所属したFWクリスティアーノ・ロナウドは主催側と「親善試合で最低45分出場する」との契約があったとされながら、実際には1分も出場しなかったことが物議に。主催側は韓国警察の捜査を受け、国会で叱責を受ける事態にまで発展した。
2023年にはローマ、ウォルヴァーハンプトン、セルティックの3クラブが韓国ツアーを中止とする出来事もあった。一部のプロモーターがスポンサーの投資金や外注業者の費用などを予定通り支給できず、訴訟沙汰になったケースも多い。
こうした経緯もあってか、バルセロナの韓国入り前には「ヤマルなどのスター選手がしっかり出場してもらいたい。特にFCソウル戦を後援するBBQは、外部に伝えられている以上の巨額を投資したと聞いている。外注企業まで含めて、最後まで費用精算がきちんと行われることが重要だ」と強調する関係者もいた。
だが、その心配も今のところは杞憂に終わりそうだ。ハンジ・フリック監督が前日会見で「出場する」と明言したヤマルはFCソウル戦でプレーし、圧巻の技量で会場に訪れた6万2482人の観客を熱狂させた。バルセロナは次戦、8月4日に大邱(テグ)スタジアムで大邱FCと対戦するが、同試合は全席完売には至っていないものの、現時点で約4万8000人の来場が見込まれている。
ここまで神戸戦、FCソウル戦の2試合を無事に終えてきたバルセロナのアジアツアー。残る大邱FC戦もトラブルなく開催され、多くのサッカーファンに好ゲームを届けてくれることを期待したい。
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