2025年の大谷翔平(30、ロサンゼルス・ドジャース)は、2024年の大谷を越えることができない。但し書きの条項は付くが、事実上そうだ。
大谷は2023年12月、優勝を目指してロサンゼルス・エンゼルスからドジャースにチームを移したが、当時は期待と懸念が混在した。
”二刀流”を専売特許とする大谷だが、そのうち一本の刀を下ろし、打席に専念したからだ。ドジャース1年目を指名打者での出場に専念した大谷は、肘の手術の影響で投手を“全面休業”とし、翌年の登板も未知数の状態だった。
そのためか、当時のプロスポーツ最高額である10年総額7億ドル(日本円=約1015億円)の契約は「オーバーペイだ」という反応も多かった。
しかし、その懸念は杞憂に終わった。2024年シーズン、大谷は人間を超越したパフォーマンスでMLB全体を揺るがした。シーズン序盤から着実に本塁打と盗塁を積み重ね、「40-40(40本塁打&40盗塁)」に対する期待感を高めていった。
スーパースターは重要な瞬間、最も劇的に輝くものだ。当時の場面を改めて振り返ってみよう。
大谷はシーズン126回目の試合である昨年8月24日、タンパベイ・レイズ戦で4回の安打後に40盗塁を達成すると、3-3で迎えた9回二死満塁に本塁打を放った。こうして40本塁打を達成し、ドジャースに勝利をもたらした。
同日、大谷はMLB史上6人目、そして史上最速で「40-40」に到達。2006年にソリアーノが記録した147試合をなんと21試合も繰り上げた。
この時点で、シーズン終了までの残り試合は36試合。算術的に「50-50」は可能に見えた。しかし、相手の激しい牽制や選手本人の負担を考慮し、「達成は簡単ではない」という予想も少なくなかった。
だが、これもまた杞憂だった。大谷には誰もが経て行くという「アホプス(“アホプ”は韓国語で“9”。9が10や100などキリの良い数字の直前の数字であることから、韓国では縁起が悪いとされている)」もなかった。
実際、「40-40」達成から1カ月経たずの9月20日のマイアミ・マーリンズ戦(シーズン152回目の試合)で、当時「48-49」だった大谷は盗塁を2度成功させ、まずは「50盗塁」から達成した。
そして、6回に49号本塁打、7回に50号本塁打を放ち、MLB史上初となる「50-50」に到達した。
大台到達によってペースも多少落ちるものと見られたが、“超人”大谷は違った。同試合の9回に51号本塁打を放ち、最終的に6打数6安打(3本塁打)、10打点、4得点、2盗塁という圧巻の成績を記録した。
MLBの歴史で、1試合に3本塁打2盗塁を記録したのは大谷が初めてだ。『ESPN』は同日の試合を最高のパフォーマンスに選出した。
大谷は残りの試合でも本塁打と盗塁を追加し、「54-59(54本塁打&59盗塁)」でレギュラーシーズンを終えた。そして、自身初挑戦となったポストシーズンではワールドシリーズを制し、優勝トロフィーを掲げることにも成功した。
まさに、完璧な一年だった。打者にだけ集中した大谷がどれだけ圧倒的な存在であるかを証明したシーズンだった。
その結果、大谷は指名打者であるにもかかわらず、自身2度目の満場一致MVPを受賞した。また、『AP通信』による「今年の男性アスリート」にも選ばれた。2021年、2023年に続き自身3度目の受賞だ。
では、来る2025年シーズンはどうだろうか。当然、期待に溢れている。懸念や余計な心配はない。年齢もまだ30歳を迎えたばかりだ。これから全盛期を過ごすタイミングだ。
だが、“2025年の大谷”は“2024年の大谷”を越えられない見通しだ。「打者」に限ればそうだ。投手登板によって打席そのものが減少するため、大谷としてもどうしようもない。
今年、大谷は再び“二刀流”に復帰する。
それでも、大谷に対する期待は想像を超える。さまざまな予想が殺到するなか、アメリカのデータサイト『FanGraphs』は“二刀流”大谷の成績について、打者としては打率0.280(592打数166安打)、43本塁打、104打点、123得点、34盗塁、出塁率0.373、長打率0.566、OPS(出塁率+長打率)0.939、WAR(代替選手比貢献度)5.6、wRC+(リーグ平均に対する得点生産力)156だ。二刀流であるにもかかわらず「40-30」を達成し、100打点を超える。
また、投手としては24試合に先発登板し、139回を投げて10勝7敗、防御率3.49、45四球、163奪三振、WHIP(投球回あたりの与四球・被安打数合計)1.16、被安打率0.224、WAR 2.8を記録するものと予想した。
”二刀流”大谷の予想される成績は、打者として「40-30」を達成し、投手として10勝を記録するというのが『FanGraphs』の展望だ。
別の予測システム「ZiPS」は45本塁打、139打点、42盗塁と、『FanGraphs』よりも優れた成績を予想した。仮にこれらの数字まで到達すれば、2年連続で「40-40」を達成することになる。MLBの歴史上、「40-40」を2度も達成した選手は一人もいない。
大谷は自信を示した。彼は「野球選手として頂点に立っていると思う。これをどれだけ維持し、向上させていけるかが重要だ」と。そして、「(負傷など)自分が望まないことに対処する方法も考えなければならない」と、慎重さも表した。
自信と慎重さで武装した大谷が、2025年はどんなシーズンを作り出すか。新しいドラマの誕生を期待せざるを得ない。
前へ
次へ