ユルゲン・クリンスマン前監督の解任以降、4カ月以上“空席状態”にあるサッカー韓国代表の新監督選任のプロセスをめぐり、“密室政治”によるシステム不在の声が再び叫ばれている。
韓国サッカー協会(KFA)の幹部クラスの関係者は最近、「代表監督の選任作業を主導する国家代表戦力強化委員会のトップ、チョン・ヘソン委員長が6月28日、口頭で辞任の意思を伝えた」と明らかにした。
KFAのチョン・モンギュ会長が公式にチョン・ヘソン委員長の辞表を受け入れたわけではないが、現在はイ・イムセン技術発展委員長兼技術総括理事に代理で監督選任作業を任せている。
チョン・ヘソン委員長の突然の辞任は、ある種のミステリーにも感じられる。
ただ、内部事情を詳しく探ってみると、KFA内部の“膿んだ問題”が再び浮上していたことがわかった。
戦力強化委員会はこの4カ月間、10回にわたる公式会議をはじめ、オンラインを通じた非公式会議を経て、新監督の選任作業を進めてきた。
新監督の選任基準などをめぐり、曖昧な態度で世論の批判を受けたこともあったが、それでも試行錯誤を経て、最近では少数の最終候補群まで確定した状況だった。
特に戦力強化委員会は、今年5月にジェシー・マーシュ氏(現カナダ代表監督)など主要な外国人監督を候補に挙げるも、KFAの財政問題などと相まって交渉に失敗した前例を考慮し、現実的な選択肢を用意することに注力した。
加えて、KFAが最近発表した技術哲学と軌を一にでき、韓国人、外国人を問わず持続可能な成長を導ける監督を選ばなければならないという意見も力を得た。
そしてチョン・ヘソン委員長は、6月最終週に戦力強化委員会でまとめた韓国人監督、外国人監督の最終候補者との面接と評価を総合し、チョン・モンギュ会長に報告した。
すると報告直後、チョン・ヘソン委員長は突然辞任の意思を伝えた。
このチョン・ヘソン委員長の辞任表明には、KFA内でも困惑が広がっている状況だという。
チョン・ヘソン委員長本人は口を閉ざしているが、どうやら委員長はじめ戦力強化委員会が心血を注いで提示した最終候補者の評価と、チョン・モンギュ会長の考えが食い違ったようだ。これによって、両者間に不協和音が発生したという。
この一件について、「現時点で委員長が辞任するということは、何かがあったという傍証だ」と疑問を呈したのは、蔚山HD FCを率いる元Jリーガーのホン・ミョンボ監督だ。
2017年から2020年までの3年間でKFA専務理事を務めた指揮官は、「内部のことはよくわからないが、私の経験を基に申し上げると、(自身が)専務理事を務めた時はキム・パンゴン委員長がおり、委員長に責任と権限があった。そのため、本人(委員長)が“この人は韓国サッカーに合う”と思ったら、国籍を問わずその人を選んだ。それがパウロ・ベント氏だった」とし、次のように続けた。
「もちろん、ベント氏も選ばれた当時は“韓国代表に合うのか”と多くの批判を受けた。そこではキム・パンゴン委員長も困難があった。私がいくつか質問をして、“韓国サッカーに合うのか”と聞くと、“合う”と話した。“上手くできるのか”と言う問いにも“上手くやる”と話した。だから、“ならば選ぶべきだ。責任はあなたと私で負えば良い”と伝えた」
そして、今回のチョン・ヘソン委員長辞任については、「今のように韓国人、外国人と分けて選ばなければならないという考えよりは、“この時点で、なぜこの人物を代表監督に選ばなければならないのか”という根本的な理由を考えなければならない。クリンスマン監督を選ぶまでの全体の過程と、その後に起きたことを考えれば、協会がはたしてどれだけ“学習”した状態なのかを聞いてみたい。協会にはチョン・ヘソン委員長をサポートする人物が誰もいなかったのではと感じる。孤立してしまったようで残念だ」と言及し、KFAのシステムに対する厳しい忠告を続ける。
「もうすべては協会のもとに渡ったと考えれば良い。委員長とは専門性のある方々が務める席だ。例えば、賞罰委員会は法曹人、医務委員長は医療関係者と、どれも専門性のあるポストだ」
「この委員長を絶対的に助けなければならないのが、協会の行政職員たちだ。絶対にそうでなければならない。協会でどんなことが起きたのかはわからないが、個人的な利益のためにそうしたのであれば、今のこの時点では別のオプションを探さなければならない。そうしなければ発展しない」
「上にいる人々ではなく、協会内にいる人たちが変わらなければならない。委員長と監督が変わっても、サポートする人々の考えが変わらなければ協会は絶対に変わらない。この問題が残念なのは、チョン・ヘソン委員長が仕事をした際、誰かがそばでサポートしてくれただろうかと考えると、絶対にそうではなかったと感じる。どのような考えとシナリオがあったのかはわからないが、私の経験を基にするとそう思う」
そんなホン・ミョンボ監督自身も、代表新監督の“最有力候補”に挙げられた一人だった。
ただ、指揮官は「最有力候補にいるということはメディアを通じて聞いた。であれば、私の代表監督に対する警戒は決まったと思う。協会で私より経験、経歴、成果がより優れた人物を連れてくることができれば、自然と私の名前は出てこなくなるだろう。その間、私のスタンスは変わらない。ファンはそれほど大きく心配しなくても良いと思う」と一線を引いていた。
チョン・ヘソン委員長の辞任劇には、戦力強化委員会の内部でも批判の声が挙がっている。
匿名を求めた戦力強化委員A氏は、「こんなことなら、なぜ戦力強化委員会を運営するのかがからない。委員長も、このような状況ではこれ以上できることがないという考えだ」とし、「委員ごとに監督選任過程で積極的に意見を出し、調査もした。その結果を総合して報告したが、俗に言うと“握りつぶされた”のではないか」と述べた。
戦力強化委員会は、前回の交渉過程でも十分に権限を行使できずに“無用論”が浮上した。自然と、チョン・モンギュ会長が目星をつけたり、監督人事で影響力を及ぼす人物の意思が優先されるという声が挙がった。
実際、クリンスマン前監督の選任もチョン・モンギュ会長の“独断的判断”で実現したという見解が多かったが、それが今回も繰り返されるのではないかという懸念も伝えられている。
また別の戦力強化委員B氏は、「戦力強化委員も当然、(候補者に対する)評価が少しずつ異なるが、最善の選択のために見解を極限まですり合わせている。このような過程が(上層部から)尊重されず、意図せずに全体が誤解されているようだ。互いに信じられない状況も起きている」と、現状を残念がっていた。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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