侍ジャパンは去る3月17日(日本時間)、WBC準決勝が行われる米フロリダ州マイアミに到着した。そこには当然、大谷もいたのだが、入国現場で捉えられた彼の姿が目を引いた。
大谷はキャップを前後逆に被っていたが、それは侍ジャパンのキャップではなかった。WBC1次ラウンドで対戦したチェコ代表のキャップだったのだ。
彼がチェコのキャップを被ったのには理由がある。大谷は今大会に出場したチェコに大きな感銘を受けた。
WBC初出場を果たしたチェコの選手の大半は、野球選手を本業としていない。ほとんどが仕事を掛け持ちしている。
それも消防士や不動産、MC、営業社員、マーケティング専門家、財務アナリスト、会計監査員、教師、医者などさまざまな職業に従事している。自身の仕事をしながら野球を並行する。それでも予選を勝ち抜き、本大会まで進んできた。
チェコはいわゆる“ロマン野球”を披露した。勝敗に関係なく大会を楽しんだ。チェコのファンとの息もぴったりだった。
試合もそれなりに戦ったわけではない。中国相手に大会初勝利を挙げ、ほかの韓国、日本、オーストラリア相手にも最善を尽くして戦った。
特に、オーストラリアとの最終戦では印象的な場面もあった。先発投手のマルティン・シュナイデル(37)は5.1回1失点と相手打線を上手く抑えた。母国では消防士を務めながら、今大会ではエースとして活躍した。
チェコ率いるパベル・ハジム監督はシュナイデルを交替させる際、帽子を脱ぎ腰を90度に曲げて挨拶した。本来ではそう見られない場面であり、全世界に反響を起こした場面でもある。結果としてオーストラリアに敗れたものの、ハジム監督は「我がチームを誇りに思う」と伝えた。
チェコは日本との試合でも闘魂を発揮した。結果は2-10と敗れたが、チェコの選手は160kmを超える剛速球が脚に直撃する死球を受けても、足を引きずりながら一塁まで歩いていく姿を見せた。
これを見た大谷は試合後、自身のSNSに「Respect」と綴り、尊敬の意を表した。
これで終わりではなかった。それが、チェコのキャップを被っていたことだ。
これを見たチェコ野球協会は、公式SNSに「大谷が我々の代表チームの帽子をかぶってマイアミに到着した。光栄だ」と綴った。チェコ代表のペテル・ジーマ(33)は「帽子がよく似合う。翔平、ありがとう」と感謝を伝えた。
野球は勝負の世界だ。国際大会であるならなおさらである。韓国代表が批判を受けたのも、結局は試合に負けて結果を残せなかったからだ。
だが、このような非情さだけがあるわけではない。尊重と尊敬が生きていることも、また野球なのだ。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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