当時は後半アディショナルタイムに韓国がコーナーキックを得た直後、主審が試合終了のホイッスルを鳴らしたことでベント監督が激しく抗議し、最終的にレッドカードを提示された。
この場面は韓国国内のみならず国際的なイシューとなり、複数の外信を通じて全世界に知られる一件となった。
試合から1日が経ち、会見に登場したベント監督は落ち着いて理性を取り戻した様子だった。
ベント監督は「プレミアリーグの主審が試合を管掌したが、尊重が足りなかった。明確ではない場面があった」と主審の判定に疑問を呈しながらも、「我々の選手たちに申し訳ないと伝えたい。昨日は私の反応が良くなかった。私も人間だからあのような姿を見せるときはある。よくない話題になったようで申し訳ない」と伝えた。
指揮官が選手に謝罪したのは明確な理由がある。来る12月3日に行われるグループステージ最終節のポルトガル代表代表戦でベンチ入りができないためだ。
ベント監督はポルトガル戦を観客席から見守らなければならない。選手たちは大きな枠組みの中で、コーチングスタッフが計画したとおりに試合を戦うが、突発的な状況では変数が生じざるを得ない。
「私がベンチ入りできないことは決して良い状況ではない。すべての責任は私にある」と、ベント監督は重い責任を再び痛感している様子だった。
その一方で、「それでも我々のチームは何をすべきかを理解している。最適な結果を出すと信じている。まだ準備する時間はある。すべてを見せるために試合をする。この試合を通じて良いチームとは何なのか、良い組織とは何なのかをお見せしたい」と自信を示した。
傍から見ると、ベント監督は頑固なキャラクターに感じるだろう。実際、公の場で笑うことはほとんどなく、無愛想な態度を一貫している。ユーモア感覚を持っているのかどうかを知っている人もあまりいない。自身の掲げるサッカースタイルに対する哲学や根気も頑固だ。当然、親近感があったり人の良さを感じられるようなイメージではない。
それでも、この4年間でベント監督体制の韓国代表が揺らぐことなく、W杯の舞台まで戦い抜くことができた理由は、ベント監督の持つ確固たるリーダーシップにある。
代表選手たちは一貫してベント監督を信じ、彼の指示に従う。外部でも全員が口をそろえて「ベント監督を疑わない」と話す。内部で監督のリーダーシップに不信感を抱いたり、分裂したりするような様子も見当たらない。真の“ワンチーム”の面貌を備えたチームが、まさに今のベント監督体制なわけだ。
それも余計な信頼ではない。この4年間で着実に主力として活躍したMFイ・ジェソン(30、マインツ)は、自身のコラムで「監督はいつも選手たちに“信じている”という言葉を投げかける。だからこそ、選手も恩返しするために努力している」と話した。
イ・ジェソンの言葉からわかる通り、ベント監督は常に選手を最優先順位で扱う。今回の一件で、自尊心を捨ててまで公の場で謝罪をしたのも選手たちのためだ。ややもすると監督不在で不安感を抱きかねない選手の心を引き締め、チームを一つにまとめるための措置であると言えるだろう。
最後の結果がどうなろうと、カタールW杯を戦う韓国代表は、歴代最長在任期間となるベント監督のもと、例年になく一つにまとまったチームで大会を終えることになる。
結果に対する評価は賛否が分かれるかもしれないが、監督に対する選手たちの信頼、そして選手に対する監督のリーダーシップは、韓国サッカー史の確かな一部分として記憶に残るはずだ。
韓国のネット上では最近、ベント監督のことを「ベンボジ」と呼ぶ。指揮官の名前と「父親」を意味する韓国語「アボジ」を組み合わせた造語だ。それだけ、ベント監督がW杯で見せるリーダーシップを称賛している。
単に試合内容が良いだけではない。韓国サッカー界全体が代表監督に望んでいた堅固なリーダーシップをベント監督が発揮してくれるからこそ、国内全体が彼にエールを送っている。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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