これ以上疑いを持つ必要はない。
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昨年9月のことだ。当時、ポルトガル人指揮官のパウロ・ベント監督率いる韓国代表は、カタールW杯アジア最終予選の第1~2戦を辛うじて乗り越えた。イラク代表との初戦を0-0の引き分けで終え、続くレバノン代表戦を1点差で制した。
1勝1分という結果は決して肯定的ではなかった。加えて、ベント監督体制でのサッカーの完成度もそれほど高まっていなかったことから、韓国国内の世論は否定的な見方が大半だった。
韓国サッカー協会(KFA)の内部でも批判の声は多かった。なかでも外国人監督に対し、いじましく、保守的な一部関係者がベント監督のマネジメントに強い疑問を呈したのだ。極端な意見では、次の結果次第では監督を交代すべきという主張まで登場した。
これまでも保守的な雰囲気が強かった国内サッカー界において、ベント監督に対する視線は良くなかった。
特に、指導者の間ではベント監督が掲げる“ビルドアップサッカー”への懐疑的な視線が強かった。当の選手本人たちがベント監督の緻密なトレーニングと試合指導方式を支持したのとはまったく対照的な雰囲気だった。
こうしたネガティブなムードが韓国サッカー界を覆ったなか、最終決定者であるKFAのチョン・モンギュ会長は、それでもベント監督への支持を貫いた。
一部サッカー関係者の否定的な意見に対しても、「最後までベント監督で行く」というメッセージを通じて意見の相違を水面下に沈めた。これが、ベント監督に対する“揺さぶり”が力を得られなかった決定的なきっかけとなった。
協会長の信頼を背に、ベント監督は自身の能力を結果で証明してみせた。選手選抜や高対策に対して批判が続くなかでも、試合を重ねるごとにチームの完成度を高めていった。一度の招集期間が短いにもかかわらず、毎回でパフォーマンスの向上が感じられるほどだった。
確固たる“プランA”が生まれたことにより、FWチョ・ギュソンやMFキム・ジンギュといった新戦力も着実に確保した。また、2トップや3バックの採用など、多彩な戦術の実験も幅広く行い、プランBの準備にも取り組んだ。
何より、ベント監督体制の戦い方に結果が付いてきたことが最大の成果だ。実際、毎回のようにギリギリで本大会出場を決めていた過去から脱皮し、今回のカタールW杯アジア最終予選では、歴代最高と言って良いほどに“無風”で突破を決めた。
それでも、ベント監督は依然としてチーム内の疑問符を感嘆符に変える作業を続けている。
実際、ベント監督が追求するショートパスを通じて試合を支配するスタイルのサッカーに対し、「強いチームには通じない」という懸念は今も唱えられている。これがベント監督体制に対する唯一の疑念だ。
ただ、チームは去る3月24日のイラン代表戦でこの懸念を払しょくさせた。アジア勢1番手で本大会出場を決め、対戦成績でも大きく負け越していたイランをシャットアウトする完璧な試合運びだったからだ。
ベント監督に残された課題は、W杯の本番で結果を残すことだけだ。本大会の開幕は来る11月とまだ先の話ではあるが、これまでの歩みを振り返ると、心配よりも期待が上回るのは事実だろう。
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