かつてヴィッセル神戸、京都サンガF.C.で活躍し、“ナミル兄さん”と呼ばれ親しまれた元韓国代表MFキム・ナミル。
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2020年にKリーグ1(1部)の城南(ソンナム)FCの新監督に就任した彼は、同年シーズン、さらには翌2021シーズンと2年連続でチームを1部残留に導いた。
特に昨シーズン、城南FCは12チーム中最下位で降格した光州(クァンジュ)FCに次いでチーム年俸額が下から2番目の60億2424万6000ウォン(日本円=約6億242万4600円)だった。
それでも過酷な残留争いをしぶとく勝ち残り、今季も1部の舞台を戦うことになった。
冬季キャンプ地の済州(チェジュ)島・西帰浦(ソグィポ)で本紙『スポーツソウル』のインタビューに応じたキム・ナミルは、「どのチームの監督でも同じだろう。毎回の試合が緊張の連続だ。この2年間がそうだったし、今年もそうだろう。むしろ、(今年は)最大3チーム降格もあるだけにより必死になりそうだ。厳しいシーズンになると思う」と伝えた。
そのうえで、「昨シーズンを戦いながら多くのことに適応した。多くのことを経験しているうちに、考え方も幅も広がる。段々と面白くなってきている」と余裕たっぷりな表情も見せた。
キム・ナミルはここ2年、城南FCで指揮を執りながら情緒的に安定を取り戻したという。
2015シーズン終了後に京都を退団し、翌2016年4月に現役引退を表明したキム・ナミル。その後、韓国サッカー協会(KFA)の未来戦略企画チームで委員を務めながらA級指導者ライセンスを取得すると、2017年2月、チェ・ヨンス監督(現・江原FC監督)が率いた中国スーパーリーグの江蘇蘇寧のコーチに就任し、指導者キャリアを始動した。
以降、2017年7月には韓国代表コーチに就任し、2018年ロシアW杯までシン・テヨン監督(現・インドネシア代表監督)を支えた。2019シーズンはKリーグ2(2部)の全南(チョンナム)ドラゴンズでコーチを務めるなど、これまでは複数のチームを行き来して家を留守にすることが多かった。
ただ、城南FCで監督を務める今は、自宅から通勤をして家族と過ごす時間も増えた。
キム・ナミルは「家族は私が仕事をすることを望んでいる。妻は言いたいことがたくさんあるようだが、我慢していることが多い。私がストレスを受けてしまうのではないかと顔色を伺っている。試合が上手く行かなかった日は、私が家に帰ると沈黙が流れる。申し訳ない気持ちが大きい。それでも、選手やコーチの頃は(家を)離れていた時間が多かったが、今はほぼ毎日家族と一緒にいる。だから家族のことがより好きになった」と話すと、「これが城南FCで監督をする長所だ」と笑った。
1977年生まれのキム・ナミルはKリーグ1の12チームで最年少の指揮官だが、自分なりのカラーを打ち出し、個性ある指導者としての位置を固めている。何より、選手から絶大な支持を受ける“兄貴”として、カリスマ性あるリーダーシップが注目されている。
「私はチームにおいて自身の役割が最も重要だと思っている。選手たちが見る自分の姿に気を付けなければならない。どんな言葉でも自信を与えなければならない」
「実際、自分でも自分が魅力的ではないと思っている。冷たそうに見え、いつも怒っているような印象を与えてしまう。人付き合いがしにくい性格だ。選手たちの良くしてあげることもない。すべてを愛したいし、手を差し伸べたいのに、そうできなくて申し訳ない」
そう謙遜するキム・ナミルだが、城南FCは彼に率いられ堅実で粘りあるチームとして1部に定着している。
「これまで積み上げてきたものが私たちの姿だと思う。我々のチームは結束力が良い。シーズンを振り返ると良いときも悪いときもあったが、峠を越せる力ができた。昨年はチーム内部もしっかりしていた。今年も外部の影響を受けずにチーム力で戦わなければならない。倒れることがあっても起き上がることが重要だ。今年は若い選手たちがたくさん入ってきた。より活気のあるチームとなりそうだ」と、キム・ナミルはチームへの期待感を示した。
来る2月19日の開幕までもう1カ月もない。キム・ナミルは「昨年に足りなかった部分を補っている。特に、パワーやスタミナのトレーニングを重点的に行っている。新加入選手も多く、連携を合わせる時間が足りない。練習試合をできるだけ多くしながら、問題を見つけて改善したい。現実的には残留が目標となるだろうが、可能であればそれ以上を目指してみたい」と覚悟を語った。
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