Kリーグで珍事…身長2m超えのセルビア人FW、得点に喜びすぎてユニホーム脱ぎ退場処分に

2021年04月12日 サッカー #Kリーグ

韓国Kリーグに新たなスターが誕生する雰囲気だ。城南(ソンナム)FCの長身ストライカー、フェイサル・ムリッチ(26)がその主人公である。

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セルビア出身のムリッチは、今冬の移籍市場で城南FCに加入したストライカーだ。

203センチの身長はKリーグ史上最長身記録を更新。韓国の以前は母国セルビアを始めドイツ、ベルギー、イスラエル、スロベニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナと欧州各国を渡り歩いていた。

フェイサル・ムリッチ(左から2番目)

身長が2メートルを超えるだけに、空中戦の処理に特化した選手に見えるが、実際はそれだけではない。

もちろん、強力なフィジカルを利用したポストプレーやヘディング能力は優秀だが、それよりも体格からは想像できない速いスピードや意外と繊細なテクニック、さらにはハイレベルなキック能力が彼の持ち味でもある。

まさかの退場処分に審判も…

4月10日にホームの炭川(タンチョン)総合運動場で行われたKリーグ1(1部)第9節光州(クァンジュ)FC戦は、ムリッチがどんな選手であるかを証明してくれた一戦となった。

この試合で先発出場したムリッチは、前半14分に先制となるゴールを決めた。

ムリッチはハーフウェイライン付近で後方からのパスに反応し、絶妙なタッチで相手DFを交わすと、爆発的なスピードで約30メートルを走り切ってゴールネットを揺らした。並走した光州FCのDFアレクサンダル・アンドレイェヴィッチ(29)が追い付けないほどの速さだった。

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)先制点直後のムリッチ

後半9分にも似たような展開からゴールが生まれた。カウンターの状況でボールを受けたムリッチは、ハーフウェイラインから一気にドリブルで持ち込み、最後は相手GKとの1対1を冷静に制した。2メートル級のフィジカルを持つ選手がスピードと決定力を兼ね備えることで、どれだけ恐ろしい存在になるかを端的に見せてくれる活躍だった。

興味深いのは、ムリッチが2点目を決めた後に見せた行動だ。

ムリッチは喜びに酔いしれたあまり、ユニホームを脱いでゴール裏のファンのもとに走ろうとした。すると、異変に気付いたのか当惑した表情を見せ、ガックリとうなだれてしまった。

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)脱いだユニホームで顔を覆うムリッチ

というのも、ムリッチはすでに1枚イエローカードをもらっていたからだ。選手はどんな理由であれ、ピッチ上でユニホームを脱ぐと警告を受ける。

主審は笑顔でムリッチに近づき、2枚目のイエローカードとともにレッドカードを提示した。ムリッチは脱いだユニホームに顔をうずめ、悔しげな表情でピッチを後にした。

荒唐無稽な退場にもかかわらず、Kリーグファンの間でムリッチの認知度と好感度が急上昇した。

仮に数的劣勢の城南FCが敗れたり引き分けたりしたら、ムリッチの行動は批判にさらされていたことだろう。ただ、10人の城南FCは最後まで無失点を貫き、2-0の勝利に成功した。

なお、ムリッチはこの試合のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばれた。

「彼の反応がすべてを物語っていた」

この珍事には海外の複数メディアも反応している。

「英雄から逆転するところだった」と見出しを打ったアルゼンチンメディア『Tycスポーツ』は「城南FCのムリッチはチームの勝利を導いたが、2度目の警告を受けるミスを犯し自ら嘆いた」とし、「ムリッチの自らした行動を悟るかのような反応がすべてを物語っている。チームメイトもそばで嘆いていた」と伝えた。また、「試合中継放送のキャスターや解説者が、“ゴール”と叫んだ後に何が起きたのかを説明する異例の状況だった」と続けた。

スペインメディア『ビー・サッカー』も「2点目の後、感情にとらわれたセルビア人FWがすでにもらっていた警告を忘れ、ユニホームを脱いだ」とし、「城南FCは彼の退団後、35分間を10分で戦った」と状況を伝えていた。

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)キム・ナミル監督

かつてヴィッセル神戸や京都サンガF.C.でプレーし、現在は城南FCで指揮を執るキム・ナミル監督は試合後、ムリッチの退場について「呆れた。本人がイエローカード1枚を受けていたことに気づくべきだった」とし、「私の表情が悪く見えるだろう。実際、私の気持ちは良くなかった」と率直な心境を明かした。

「2点目を決めてユニホームを脱いだとき、“あっ”と思った」と当時を振り返ったムリッチは、「(キム・ナミル監督の)表情を見た。ハイタッチだけはしてくれた」とコメント。

続けて「インタビューが終わったら監督が待っているのでは…監督の表情を見て”大事になった”と思った」と、キム・ナミル監督に怖気づくかのような表情を見せた。

Kリーグでのデビューシーズンを過ごすムリッチは開幕9試合で4ゴールを記録しており、リーグやチームへの適応を見せている。まだ序盤戦なだけに、今後パフォーマンスがさらに上がればリーグを支配する怪物になるかもしれない。

城南FCも第9節までを終えて4勝2分3敗の勝ち点15とし、12チーム中3位に位置しているだけに、ムリッチがKリーグの新たなスターに浮上する可能性は十分に考えられる。

ムリッチが欠場する次のKリーグ1第10節で、城南FCは首位の全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースと対戦予定だ。

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