これ以上結果に“オールイン”するような文化ではなくなった。
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かつてのオリンピックでは結果が最も重要な徳目だった。敗北は決して許さず、勝利にだけ執着する文化が支配的だった。決勝で敗れた選手が涙を流して挫折する姿もよく見られていた。
ただ、今回の東京五輪は違った。試合に敗れ、例えメダル獲得を逃したとしても、熱い感動をもたらした選手が大勢登場した。
大衆もこれに応えた。入賞こそ出来なかったものの、明るい笑顔でチャレンジを続けた男子走り高跳びのウ・サンヒョクや、世界的な選手に追いつかんとする技術を披露した男子飛び込みのウ・ハラムも大きな感動を届けた。また、決勝で敗れた直後にウルフ・アロンの手を掲げ、彼の金メダル獲得を称えたチョ・グハムにも注目が集まった。
女子バレー韓国代表もメダル獲得には失敗したが、東京五輪に参加した韓国選手団の中でも屈指の人気を博した。ほかでは、58歳で東京五輪に出場し、卓球女子シングルスで韓国の17歳シン・ユビンと約40歳差の勝負を繰り広げたルクセンブルクのニー・シャーリエンも話題を集めた。これらは、今回のオリンピックを彩った代表的な感動例だ。
そのおかげか、選手たちは大会後も金メダリストに劣らない人気を集めている。一部の未成熟なファンは悪質なコメントで人身攻撃を強行しているが、大衆の多くはオリンピックで最善を尽くした選手に拍手を送っている。メダルの色や入賞は関係ないという意味だ。
2004年アテネ五輪、2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪と3大会連続でオリンピックに出場したユ・スンミン国際オリンピック委員会(IOC)委員も、変化した文化を実感しているという。
8月9日、仁川(インチョン)国際空港で取材陣のインタビューに応じたユ委員は、「今大会を見ていて一番気分が良かったことは、国民の皆さまが単純に結果だけ見ているのではなく、大会に出場した選手のストーリーや、その選手がどのようにして大会に参加したのかの過程まで、すべてを見ていただけたということだった」とコメント。
また、「本当に素晴らしく、成熟した文化が形成されたと思う。今は過去と違って選手たちも成熟している。試合に負けてもただ涙を流すのではなく、勝利した相手を称える。そして、自分の成果に満足し、さらなる自信も得る。世の中は大きく変わった」と評価した。
続けて、「我々の組織のようなリーダーがすべきことは、選手たちがより優れた成績を挙げられるように支援することだ」と、自身に課せられた任務も強調した。
ユ委員は、困難の中で開幕して紆余曲折の末に閉幕した東京五輪が感動をもたらしたと見ている。
ユ委員は「IOC内では感動的なオリンピックと見ている。苦労して準備した。開幕する過程で避難もあった。だが、いざ始めてみてどうだったか。選手たちが流した汗と涙が、全世界の人々に多くのメッセージを伝えた。そうした面でポジティブに評価している」と述べた。
実際、韓国国内の世論はオリンピック開幕前まで反対意見が優勢だったが、大会期間は韓国を代表する選手たちの活躍を見て、一日を過ごしていた。新型コロナウイルス感染症の影響で疲弊した日常の中で、国民に活気をもたらしたイベントだった。
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