結婚して家庭を築いた既婚者のスキャンダルは、社会的にも道徳的にも容認されない。
【写真】「見てられない」イ・ビョンホン夫婦の“キスショット”
普通の俳優であれば奈落に落ちるが、イ・ビョンホン(53)は違った。
彼は映画『インサイダーズ/内部者たち』(2015)の大ヒットに支えられ、翌年の大鐘賞映画祭で主演男優賞、百想芸術大賞の映画部門で男子最優秀演技賞、青龍映画賞で主演俳優賞など数々の賞を受賞。“イメージが命”の芸能人でありながら、演技力でスキャンダルを乗り越えたほぼ唯一の例だ。
8月9日に韓国で公開されたオム・テファ監督の新作映画『コンクリートユートピア』(原題)。そこで披露されたイ・ビョンホンの演技も、やはり絶賛されている。大地震で廃墟となったソウルで唯一残ったマンションを舞台に繰り広げられる話を描いた映画で、イ・ビョンホンは生存のために次第に狂気に囚われていく入居者代表“ヨンタク”を演じた。
新人オム・テファ監督のずば抜けたミザンセーヌと共に、イ・ビョンホンの“目玉を取り替えた演技”が好評を集め、封切り直前の洋画『オッペンハイマー』に続いて前売り予約率2位まで上昇した。
最近、ソウル鍾路(ジョンロ)区で会ったイ・ビョンホンは「試写会で見た私の目つきがCGのようだった」と笑った。
彼が演じたヨンタクは、マイホームの購入が夢の平凡な小市民だ。詐欺師によってすべてを失ったヨンタクは、偶然マンションの入居者代表に選出される。ヨンタクは災難という極限状況で“王冠”の重さを楽しみながら、血なまぐさいリーダーに変わっていく。
「ヨンタクは極端に変な人間ではない。ただマイホームを購入するのが目標だが、それさえも詐欺にあって絶望した小市民だ。ところが予想できなかった身分の上昇があり、その人物が変わっていく過程を見せようとした。災難よりもっと怖いのが人間だからね」
映画はヨンタクの心理変化によって、災難ものからブラックコメディに。そして再びスリラーと恐怖に変わっていく。イ・ビョンホンは「極端な状況に置かれたヨンタクの心理を表現するために、自分を説得する時間が必要だった」とし、「腸が飛び出すほど感情を吐き出しながら吐き気を催すシーンを理解し、表現するのに時間がかかった。私が(台本に)説得された後は、どう表現すれば観客を説得できるか悩んだ」と吐露した。
ヨンタクの内面だけでなく、見た目もイ・ビョンホンの細心な表現力で完成させた。彼はヨンタク役のために額がM字の独特なヘアスタイルから、ヨンタクの習慣まで細かい部分まで関与した。髪が抜け始める直前の平凡な中年、災難の中で整えられなかったヘアスタイルなどは、イ・ビョンホンの積極的なアイデアで実現した。
イ・ビョンホンは「スタッフはみんな喜んでいたが、ファンはみんないなくなりそうだ」と大笑いした。
『コンクリートユートピア』の公開に先立ち、イ・ビョンホンは2人目の妊娠を知らせたりもした。彼の妻で女優のイ・ミンジョンが2015年に長男を産んで以来、8年ぶりに妊娠したのだ。
夫婦は普段から、飾り気のないSNS活動で大衆の目を虜にしたことがあり、さらに大きな祝福を受けている。
「ハハハ、私も相変わらず神秘的になりたい俳優だ。“健歯ダンス”のミームは正直衝撃的だった。どうせ出たし、多くの方々が喜んでくださったので、楽しもうと自分を慰めるだけ」
長らく演技をしながら数多くの作品に出演しただけに、演出に対する欲も出そうだが、イ・ビョンホンは「自分の得意なことにひたすら集中したい。2つの才能を持った同僚たちが羨ましいだけで、演出に挑戦したいという気持ちはない。思いもよらない」と一線を引いた。
イ・ビョンホンはファン・ドンヒョク監督が演出するNetflixオリジナルシリーズ『イカゲーム』シーズン2の出演リストにも名前を載せた。あいにく、彼が大切にしているBIGBANG出身のT.O.Pの出演も決まり、“イ・ビョンホン関係説”が出回ったりもした。
しかしイ・ビョンホンは「今は『コンクリートユートピア』に集中するときなので、『イカゲーム』に対しては答えられない」と言葉を慎んだ。
◇イ・ビョンホン プロフィール
1970年7月12日生まれ。漢陽(ハニャン)大学校在学中にアルバイトを通じて「コカ・コーラ」をはじめとした多数のCMに出演。母親の友人が韓国の地上波KBS主催の公開採用オーディションの願書を手に俳優の道を勧め、1990年にKBS公開採用14期生に合格した。翌年にはトップの成績で研修を終え、すぐにテレビドラマ『アスファルト、我が故郷』でデビューした。2000年に公開された主演映画『JSA』は韓国でメガヒットし、社会現象に。2004年にドラマ『美しき日々』が日本で放送された際には、クールさと強引さを兼ねそなえた男らしいキャラクターで視聴者の心を掴んだ。2019年には主演映画『白頭山大噴火』を通じて北朝鮮の工作員を熱演し、大きな反響を得た。
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