練習生たちの“デビューの夢”を捏造で不当に奪った張本人が復帰…韓国オーディション番組のアイロニー

2023年04月04日 話題

投票結果を捏造して視聴者を欺瞞したプロデューサーを再入社させた放送局。その真正性をどう眺めればいいのだろうか。

【写真】“日本人参加者”、韓国オーディション番組から降板

大人たちの欲で、若者だけが傷ついた事件だった。I.O.I、Wanna One、IZ*ONE、X1まで。アイドルオーディション番組『PRODUCE 101』シリーズでデビューの夢を叶えた彼らも、放送局や制作スタッフ、企画会社の金儲けの犠牲になったのも同じだ。

不正な“捏造アイドル”という烙印で、ボーイズグループX1は最終的に活動も終えられずに解散した。その烙印の原因を作ったのは大人たちだが、3年の間に夢の多い若者だけが非難を浴びた。

そんな状況にもかかわらず、機会を奪った大人たちが再び機会をくれというアイロニーな状況が繰り広げられている。

実刑受けた“捏造プロデューサー”が復帰

投票結果の捏造で実刑を言い渡されたアン・ジュンヨンPDとキム・ヨンボム総括プロデューサー(CP)が再び韓国Mnetに入社した。

アン・ジュンヨンPD

アンPDとキムCPは『PRODUCE 101』シリーズ生放送の競演で、視聴者の有料メール投票結果を操作し、特定の候補者に恩恵を与えた疑惑で、それぞれ懲役2年、懲役1年8カ月を宣告された。

アンPDは芸能事務所の関係者から40回余りにわたり、4000万ウォン(約400万円)相当の接待を受けた疑惑まで加わり、2021年に最高裁で懲役2年、追徴金3700万ウォン(約370万円)が確定した。

アンPDはMnetで『スーパースターK2』(2010)を皮切りに、『ダンシング9』(2013、2014)シリーズ、『PRODUCE』(2017、2018、2019)シリーズなどを演出し、昨年退社した。しかし視聴者を騙して実刑まで受けた彼らは、再び“元の場所”に戻ることになった。

アンPDの再入社が知らされた4月3日、Mnet側は「アンPDが過去の過ちに対する凄絶な反省、Mnetと個人の信頼回復のために役割を果たしたいという切実な意志を考慮して、もう一度機会を与えることに決めた」と説明した。

先立ってMnetは昨年、キムCPも復帰させている。Mnetは当時、「キムCPが“会社と社会に及ぼした被害を挽回する機会がほしい”と要請して受け入れた」と釈明した。現在、キムCPはCJ ENMのグローバルプロジェクト関連の業務を担当しているという。

キム・ヨンボムCP

当然ながら世論は冷ややかだ。先の公判で裁判所もやはり、「今回の犯行で放送番組の公正性が顕著に毀損され、番組に出演した練習生と視聴者を翻弄する結果が生じた」と事件の重大さを指摘した。

だが、わずか3年しか経っていない時点での2人の復職に、ファンは怒りを爆発させている。さらにアンPDは新規コンテンツまで企画する予定であり、火に油を注いでいる。

法の審判を受けたら終わり?

2人の復帰で視聴者の信頼が基盤であるはずの放送局の真正性に対する疑問も提起されている。

Mnetを運営するCJ ENMのホ・ミンフェ代表は2020年7月、この事件と関連して「該当番組で得た収益をすべて出す」とし、「順位操作で被害を受けた練習生に対しても責任を持って補償する」と頭を下げて国民に謝罪した。

また最高裁で刑が確定した後、2人に対する人事委員会を開くとも述べたが、「懲戒措置まですべて終わった」という説明だけで具体的な結果は公開せず、彼らは解雇を免れた。

Wanna One

視聴者の投票を通じてデビュー組が決定され、“国民プロデューサー”という言葉で広報しながら有料メール投票で不当な利益を得て、なんと『PRODUCE 101』シーズン1~4の参加者順位を投票結果と関係なく任意に操作した。

しかし視聴者は彼らがどんな懲戒を受け、なぜ2人の復帰を見守らなければならないのかに対する答えを得られない状況だ。

『PRODUCE 101』の投票操作事件は、雨後の筍のようにあったオーディション番組に多くの変化が起きた。事件後にスタートしたオーディション番組は、常に公正性と正確性に対する疑惑を受けてきた。

大衆とファンはより一層、監視の目を光らせ、制作陣もすでに崩れたオーディション番組に対する信頼回復のために投票の公正性を担保しようと努力を傾けている。しかし問題を起こした当事者だけが、過去に回帰する様子だ。

IZ*ONE

法の審判を受けたのだから、すべて大丈夫というのだろうか。『PRODUCE 101』シリーズで誕生したプロジェクトチームの収益金の半分近くをCJ ENMが持っていく構造であるだけに、投票操作事件をプロデューサーの1、2人の個人的な不正と見ることは難しいというのが業界の見解だ。

今回の事態に対するCJ ENMとMnetの真正性ある反省と責任感に疑問を抱かざるを得ない。

「撮影する毎日を無駄に過ごした練習生も、競演ごとに最善を尽くさなかった練習生も、自分は当然できると信じていた練習生もいなかった。小規模会社の子たちは、その小さな希望で投票のたびに胸を締め付けられ、悪質な書き込みに泣き、1秒の放送分量で笑った」

2016年1月、『PRODUCE 101』制作発表会

投票操作疑惑が起きた後、『PRODUCE 101』シーズン2に出演したある練習生が明らかにした心境だ。アンPDがしたという「凄絶な反省」と「切実な意志」。Mnetが「機会」を与えたいというアンPDは、あれほど凄絶で切実だった数多くの練習生たちの夢を奪った張本人だ。

大人たちの衝突のなかで絶対的な「乙」にならざるを得ない10代・20代の若者たちは、順位が変わり、デビュー組から脱落して、依然としてその時に剥奪された機会を与えられずにいる。誰かとは違ってだ。

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