Netflixのオリジナルシリーズとして9月17日から全世界配信がスタートした韓国ドラマ『イカゲーム』。面白さはあるが、ごちゃまぜチャンポンの感じを拭うことができないのはなぜだろうか。
『イカゲーム』は公開翌日の9月18日、Netflix全世界視聴者数4位を記録し、3日経った20日には韓国で1位となり、関心を集めている。
公開前から「韓国型デスゲーム」というタイトルで熱いPRを行ってきた『イカゲーム』。しかし実際に公開された結果物を見ると、有名なデスゲーム映画を連想させる演出と設定の饗宴で、「イカチャンポン」という感じを消すことができなかった。
【場面写真】人生崖っぷちで“命がけのゲーム”。Netflix新作『イカゲーム』
『イカゲーム』は巨額の借金を抱えていたり、生活に希望のない参加者たちが、456億ウォン(約45億6000万円)の賞金を獲得するために命がけで戦う生存サバイバルゲームだ。
ゲームは、“ムクゲの花が咲きました”(日本の“だるまさんが転んだ”のような鬼ごっこ)、玉入れ、綱引き、タルゴナ模様作り(日本のカルメ焼きに近い遊び)など、子供の頃に韓国人なら一度は経験したことのある、お馴染みのゲームで構成されている。
心は優しいが賭博中毒のせいで家庭を失ったギフン(演者イ・ジョンジェ)と、ソウル大出身で大企業のビジネスマンだったが、先物投資で巨額の借金を抱えて奈落に落ちたサンウ(演者パク・ヘス)などが、生存サバイバル「イカゲーム」で出会ったことで物語が動き出す。
映画『天命の城』(原題:南漢山城)、『トガニ 幼き瞳の告発』『怪しい彼女』といったヒット映画を演出したファン・ドンヒョク監督がメガホンを取り、イ・ジョンジェ、パク・ヘス、チョン・ホヨン、ウィ・ハジュン、ホ・ソンテらが出演していることでも大きな期待を集めた。
しかし、『イカゲーム』は有名ジャンルの映画を思わせる演出と設定が多かった。
最初は“ムクゲの花が咲きました”だったが、これは日本映画の『神さまの言うとおり』を彷彿とさせる場面だった。
またVIPが莫大な金を支払い人殺しをさせる姿を観覧するシーンは映画『ハンガー・ゲーム』を、ゲーム管理者の赤い衣装はNetflixオリジナルの『ペーパー・ハウス』を、賭博中毒になったギフンは日本の有名漫画『賭博黙示録カイジ』を連想させる。
そのほかにも『バトルロワイアル』『今際の国のアリス』など、似たようなサバイバル作品が多く見受けられた。
このように、既存の設定を借用して様々なデスゲームを混ぜたという印象は拭えず、『イカゲーム』ならではの個性を見つけることは困難だったと言える。
ファン・ドンヒョク監督は9月15日、『イカゲーム』制作発表会で「『イカゲーム』は2008年から構想した作品」とし、「2009年に台本を完成したが、当時は馴染みが薄くて難しく、投資もキャスティングもされなかった。1年ほど準備したが、再び引き出しの中に入れてあった作品だ」と制作秘話を打ち明けた。
また2008年に完成したシナリオであるためか、『イカゲーム』では女性、外国人、老人を表現する方法に時代錯誤が見受けられた。
遺体に性的暴行を加えたという不必要なセリフや、「オッパ(お兄さんという意味)」を乱発する迷惑なキャラクター、力が弱いためチームを救うことが難しい女性や老人などを表現する方法にも反転はなかった。
VIPたちが集まった部屋でボディペインティングをした女性たちを家具として使うなど、嫌悪的な表現も少なくなかった。外国人労働者のアリも韓国語に馴染みがないせいで、いつも詐欺に遭ってしまい、挙句2000年代に使い古された「社長が悪い」という一言で済ませてしまうところなども、古臭さを消すには難しかった。
そして蓋然性のない同性愛は、むしろ拒否感を抱くだけでもあった。
脱北者のセビョク(演者チョン・ホヨン)とジヨン(演者イ・ユミ)がビー玉遊びをする途中、互いへの感情が芽生える場面などでは同性愛コードも含まれていたが、蓋然性に欠けるまま急に登場したセビョクとジヨンの叙事は、同性愛が一つのコードとしてよく使われるから一旦入れてみようというような、『イカゲーム』に蔓延していた“クリシェ”(微妙なニュアンスをあらわす技法)の一つとしか感じられなかった。
『イカゲーム』は好き嫌いが分かれるが、その両方の感想が口コミで広がっているようだ。
韓国をはじめ、日本、シンガポール、フィリピンなどアジア諸国の「トップ10」コンテンツで1位となり、タイ、マレーシア、ベトナムなどでは3位になった。
刺激的で新鮮な素材とイ・ジョンジェ、パク・ヘス、イ・ビョンホンなど俳優たちの熱演と、退屈しない展開などで面白さは保障されている。
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