“昭和グルーヴ”でソウルから世界へ。Night Tempoが追求するジャパニーズ・シティポップとは【前編】

2021年05月19日 話題

「昭和グルーヴ」をキーワードにジャパニーズ・シティポップを発信し続け、世界で脚光を浴びている韓国人DJ/プロデューサーのNight Tempo。

【関連】Night Tempo、『昭和アイドル・グルーヴ』のトラックリスト解禁!

Winkや斉藤由貴、竹内まりやなど、80年代の日本のポップスを盛り上げた歌手らの楽曲をリエディットした音源は世界的に熱い反響を得ており、昨今の海外におけるシティポップ・ブームの立役者とされている。

その人気ぶりは日本の音楽シーンでもすでに証明済みだ。2019年には“フジロック”の通称で知られる日本最大規模の音楽フェス「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演も果たし、日本におけるシティポップ・ブームの“逆輸入現象”にも大きな影響を与えた。

そんなNight Tempoが、5月19日にコンピレーションアルバム『Night Tempo presentsザ・昭和アイドル・グルーヴ』をリリース。コロナ化で日本での活動が制限されるなか、昭和の時代を華やかに彩ったアイドル・ソングをリエディットしたアルバムで日本の音楽シーンに帰還する。

ジャパニーズ・シティポップブームの立役者として変わらぬ存在感を誇る彼が追い求める「昭和グルーヴ」とは……。今回、特別に韓国の自宅とオンラインでつながり、話を伺った。

(写真提供=ポニーキャニオン)

ジャパニーズ・カルチャーは「自分の幸せだった時代」そのもの

そもそもNight Tempoが昭和歌謡に興味を持ったのは、少年時代。貿易の仕事をしていた父親から土産でもらったCDを通じて日本の80年代のヒット曲を知ったのがきっかけだったそうだが、もともと幼少の頃から日本文化に抵抗はなかったという。当時の韓国は生活の中に日本の文化がかなり浸透していた時代でもあっただけに、むしろ身近なものに感じていたらしい。

「僕の幼少期といえば80年代後半~90年代前半で、そのころはファッションとか家電とか、日本のいろんなものが韓国に入ってきていた時代でした。だから、自分の幼いころに周りにあったモノって、ほとんどメイド・イン・ジャパンだったんですよ」

日本がバブルに浮かれていた80年代、韓国は政治の民主化を求める運動が勃発するなど、複雑な状況にあった。そのため90年代までは文化的に低迷していたという背景があり、カルチャーといえばお隣の日本から流れ込んでくるのが当たり前の時代だったわけだ。

「韓国では当時“日本産がいちばん”、“日本の物が最も質がいい”って認識で。だからうちの親も多少無理をして(笑)、魔法瓶とかお弁当箱とか、テレビやオーディオなんかもそうですね。全部メイド・イン・ジャパンで揃えていました。

僕にとって“自分が幸せだった時代”とはつまり、“韓国が日本のものに囲まれていて、日本を追いかけていた時代”なんですよね。だから、日本の85~90年代前半に流通されていたものに強い愛着があります。もちろんデザイン自体が好きっていうのもあるんですけど」

実際に彼はかなり熱狂的な昭和カルチャーの愛好家としても知られており、TwitterをはじめとしたSNS上では80年代当時のカセットテープはもちろん、当時のアニメグッズやマンガをずらりと並べた写真などを見ることができる。

一時は日本全国のありとあらゆるリサイクル・ショップを巡ったというのだから驚きだ。

「香港の友人と日本全国のリサイクル・ショップを回ったのが、4~5年前。あのときは日本語がほとんど喋れなくて英語でお店の人に“これありますか?”と聞いていました。だけど英語がわからない店員さんがほとんどでしたから、なかなか思うようにコミュニケーションできず、お互いに困ってしまってばかり。だから切実に感じました。日本語を喋れるようにならなきゃ、とね」

そんな背景があってから、今では日常会話を難なくこなすほどには日本語をマスターしているように見える。日本の友人から少しずつ学んだというが、「自分の欲求を満たすための手段として必要だと思ったら、頑張れました。喋れないと全然欲しいものが買えないから(笑)」という彼の言葉からは“好き”を追求する熱心な姿勢がうかがえた。

ただ、新型コロナウイルスが猛威を振るう昨今は以前のように日本に足を運ぶことが難しくなった。このような状況は彼にとってもかなり歯がゆいはずだが、意外にもコロナ禍だからといってやることは変わらないという。

次回はコロナ禍における音楽活動や、シティポップ・ブームの今後についても触れていく。

(文=姜 由奈)

【『Night Tempo presents ザ・昭和アイドル・グルーヴ』 リリース情報】

『Night Tempo presents ザ・昭和アイドル・グルーヴ』(https://lnk.to/NT_ShowaGroove)

発売日:2021年5月19日(水)  

発売元:ポニーキャニオン  

CD品番:PCCA-06038

価格:2,200円(税込)

(写真提供=ポニーキャニオン)​​​​

収録曲

1. 新田恵利 – Déjà vu (Night Tempo Showa Groove Mix)

2. 西田ひかる – Nice-catch! (Night Tempo Showa Groove Mix)

3. Wink - 淋しい熱帯魚 (Night Tempo Showa Groove Mix)※

4. 工藤静香 - 嵐の素顔 (Night Tempo Showa Groove Mix)

5. BaBe – Give Me Up (Night Tempo Showa Groove Mix)

6. 斉藤由貴 - ストローハットの夏想い (Night Tempo Showa Groove Mix)

7. 森尾由美 – だからタッチ・ミー (Night Tempo Showa Groove Mix)

8. Wink – Get My Love (Night Tempo Showa Groove Mix)※

9. ゆうゆ - サヨナラ志願 (Night Tempo Showa Groove Mix)

10. 斉藤由貴 – 卒業 (Night Tempo Showa Groove Mix)

11. BaBe – I Don’t Know! (Night Tempo Showa Groove Mix)

12. 工藤静香 - ワインひとくちの嘘 (Night Tempo Showa Groove Mix)

※配信アルバムには未収録、CDのみ収録

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