映画『ミナリ』で、韓国人俳優としては初めて米アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたユン・ヨジョンが、米紙『ニューヨーク・タイムズ』とのテレビインタビューで感想を語った。
ニューヨーク・タイムズが4月3日(現地時間)に公開したインタビューは、ユン・ヨジョンの率直でさっぱりとしたな性格がにじみ出ていた。
「まさか73歳のアジア人女性が、オスカー賞候補に挙がるとは想像もできなかった。『ミナリ』は私にたくさんのプレゼントをくれた」と口火を切ったユン・ヨジョン。
彼女は、Apple TV+で配信予定のドラマ『Pachinko(パチンコ)』をカナダ・バンクーバーで撮影後、韓国へと帰国してからオスカーノミネートの知らせを聞いたそうだ。
「最初は戸惑ったが、受賞するかどうかを占う報道が増え、ストレスが多い」とし、「私はサッカー選手かオリンピック選手くらいになると思う。『パラサイト 半地下の家族』が期待値を高めたようだ。ポン・ジュノ監督には“これは全部あなたのせいだ”と言うつもり」とユーモアを交えつつ感想を述べた。
『ミナリ』は、980年代を舞台に希望を求めて“見知らぬ地”アメリカに渡った韓国人家族の特別なストーリーを描いており、第93回アカデミー授賞式では6部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、脚本賞、音楽賞)にノミネートされた話題作だ。
また、ジェイコブ役のスティーブン・ユァンが、アジア系アメリカ人として初の主演男優賞候補に名を連ねたことについては、「そういう時代になったと思う。確かに『パラサイト』の成功は、韓国の俳優が認められるのに大いに役立った」と話している。
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ユン・ヨジョンは今回の『ミナリ』で、ハリウッド映画批評家協会賞など数々の賞を獲得している。ポン・ジュノ監督は、新型コロナ渦の中で行われる各種映画祭、批評家協会など、ユン・ヨジョンの助演女優賞受賞行進をうらやましがったと言う。
数々の受賞についてユン・ヨジョンは、「ただ座ってZoomで話ができてよかった。アメリカでは授賞式が開かれ、あちこちを回らなければならない。私は“レース”が(単に)言葉だけだと思っていたが、パンデミックの影響もありオスカー“アワードレース”(awards race)であちこち歩き回らなくてもいいし、座ってテレビ電話をするだけでいいとボン監督が羨んでいた」と笑いを見せる一面も。
『ミナリ』の脚本と演出を担当したリー・アイザック・チョン(韓国名チョン・イサク)監督とは、釜山(プサン)映画祭で親友のイ・イナプロデューサーの紹介で知り合ったと縁を伝えた。
チョン監督はユン・ヨジョンのデビュー作『火女』(1971年、故キム・ギヨン監督)が印象深かったとし、自分もチョン監督についてもっと知りたくなったと交流を話している。 「チョン監督は非常に静かな人だ。彼が私の息子だったらいいのにと思うほど好いている」
ユン・ヨジョンは、『ミナリ』を通じて国際的なスターになったことについて、「戸惑っている」とし、今の自分を作ったのは劣等感だったと打ち明けた。
「学校で演技を習ってもいないし、映画を勉強してもいないので劣等感があった。それでも台本をもらったら、本当に一生懸命練習した」と自身の内面を語った。
アメリカで2人の子どもを育てながら、主婦として10年余りを過ごした彼女は、「離婚して帰国した時、“あの俳優は離婚した女性だ、テレビに出てはいけない”と、テレビ局に抗議の電話をする視聴者もいた。しかし今は私が大好きだ。人間という存在がそうだ」と過去を語った。
自身は生存者として、「(演技を)やめるか、またアメリカに行こうか悩んだ時期もあった。 しかし、私は依然として生きており、今では演技を楽しんでいる」と伝えている。
ニューヨーク・タイムズはインタビューで会ったユン・ヨジョンについて、「物思いにふけった表情に加え、優しい笑顔と快活な笑いも見え、静かな風貌には自然な気品があった」とし、「自身の考えを説得力のある言葉で話しながらも、さっぱりとしていた」と彼女の人間性を評している。
そんな人間的な魅力に満ち溢れているユン・ヨジョンは、4月25日(現地時間)に開かれる第93回アカデミー賞授賞式で、韓国人俳優初の演技賞を受賞できるのか。全世界からの注目が絶えない現在だ。
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