“15秒で勝負”の時代──「イージーリスニング」から読み解くK-POPの現在地

2025年10月14日 K-POP

「イージーリスニング(Easy Listening)」が、K-POPの核心ワードとして定着しつつある。

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かつて「世界観職人」と呼ばれたような複雑で難解な音楽的ストーリーは影を潜め、今は耳に心地よく馴染む“聴きやすさ”が、第5世代アイドルの主流スタイルとなった。

RIIZEのエモーショナルポップやTWSの爽やかなシンセポップなどは、集中力や高度な解釈を必要とせず、聴いた瞬間に心地よいエネルギーを届ける。ZEROBASEONEやBOYNEXTDOORも同様に、ポップで親しみやすいメロディを重視し、大衆との距離を縮めている。

RIIZE
(写真=OSEN)RIIZE

こうした流れの転換は、単なる音楽的趣向の変化ではなく“時代の欲望”がアイドルに求める役割そのものが根本的に変化していることを示している。5世代アイドルたちは、その時代の空気を最も敏感かつ巧みに捉えた存在なのだ。

“15秒で勝負”の時代、加速する「スピードの欲望」

最も直接的な要因として挙げられるのは、コンテンツ消費の“呼吸”が極端に短くなったことだ。TikTok、ユーチューブ、インスタグラムなどに投稿されるショート動画プラットフォームの拡大が、K-POPの構造にも影響を与えた。

かつては3分以上の楽曲を最初から最後まで聴き、物語を理解するスタイルが主流だった。しかし今はわずか15秒で聴く人と見る人の心を掴む強力な“キリングパート”や“フック”が、楽曲の命運を左右する時代となった。

TWS
(写真=OSEN)TWS

第5世代アイドルはこのショートフォーム文化を柔軟に受け入れ、楽曲の構成をシンプルにし、誰もが簡単に真似できる“チャレンジポイント”を強化した。音楽が“鑑賞の対象”から、“消費と遊びのBGM”へと役割を変えた。

コアからライトへ──ファンダム構造の変化

これまでのK-POPは、「世界観」という壮大なストーリーを構築することでファンの結束を強める戦略をとっていた。代表的な例がBTSである。これは、熱狂的で忠誠度の高い“コアファン”を獲得する上では強力な手段だったが、一方で大衆にとっては“参入障壁”を高める結果にもつながった。

BTS
(写真=OSEN)BTS

一方、第5世代が選んだイージーリスニングはライト層のファンを素早く取り込む戦略だ。メロディも歌詞も直感的で、K-POPに馴染みのない一般リスナーや海外ファンにも届きやすい。K-POPを“学ぶ対象”ではなく“楽しむ対象”として再定義した。こうしてファンダムの裾野を広げ、新規ファンの流入促進に成功した。

疲弊する社会で求められる“心の安息地”

パンデミックを経て高まった経済的不安や終わりなき競争への疲労感が、大衆の心理にも影響を与えている。人々は今、高度な知的刺激よりも日常の中の癒しや安らぎを求めている。人気ドラマも、重厚なジャンルから軽いトーンのコメディへと変化する傾向にある。

第5世代アイドルのイージーリスニングは、こうした時代の空気に最も的確に応えた存在だ。彼ら、彼女らの音楽は、奥深い哲学ではなく、青春の成長痛や初恋のときめきといった誰もが共感できる日常の感情を歌っている。

音楽評論家のイム・ジンモ氏は「かつては怒りと情熱がK-POPの核心ワードだった。パンデミックを経て社会的疲労が蓄積し、人々は軽い音楽を求めている。“ソフト&メロウ”が求められる時代において、イージーリスニングの流行はごく自然な歩みだ」と語った。

薄れていくK-POPの“芸術的野性”

一部では、かつてK-POPのアイデンティティだった「芸術的な野性」が薄れつつあるのではないかという懸念の声も上がっている。1曲を聴くために“世界観”を学び、MVに込められた象徴を解釈しながら知的な快感を味わっていた“コアファンダム”の時代が幕を閉じつつある今、癒しや安定という名のもとに、K-POPが持っていた芸術的な苦悩までもが簡略化されているのではないか、という問いが残る。

イム・ジンモ氏は、「表面的にはイージーリスニングが“簡単に作られた音楽”のように見えるかもしれないが、芸術性の低下という見方はやや飛躍している。場合によっては激しいサウンドよりもイージーリスニングの方が制作が難しいこともある」と語った。

しかし、大衆との接点を広げるという意図の裏側には、常に“芸術性の強化”という課題がつきまとう。K-POPの未来をめぐるこの問いは、第5世代アイドルたちの明るく爽やかな笑顔の奥に、静かに潜んでいる。

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