BTS・SUGAの寄付金を基に設立された「ミン・ユンギ治療センター」が9月30日、韓国ソウルのセブランス病院内「済衆館(チェジュンガン)」1階に開設された。
同日行われた開所式には、延世(ヨンセ)大学のユン・ドンソプ総長、延世大学医療院のクム・ギチャン院長、セブランス病院のイ・ガンヨン院長、セブランス小児病院のカン・フンチョル院長、セブランス病院・精神健康医学科のアン・ソクギュン学科長、「ミン・ユンギ治療センター」の所長を務める小児精神科のチョン・グナ教授などが出席。
外部関係者では韓国自閉人サラン協会のキム・ヨンジク会長らも出席した。
「ミン・ユンギ治療センター」は、SUGAが今年6月に自閉スペクトラム症の児童・青少年の治療を目的とした専門治療センター設立のため、セブランス小児病院へ寄付された50億ウォン(日本円=約5億円)の基金をもとに誕生した。
安全装置が供えられたセンター内部には、言語・行動療法のための治療室や、防音・音響設備を備えた音楽・社会性集団治療室が整備。保護者の待合室には、自閉スペクトラム症の美術作家イ・ギュジェの木彫作品が展示されている。
セブランス病院は今後、センター運営プログラムの専門化、持続可能な長期発展、需要拡大に応じた施設の拡張移転も計画している。
SUGAは2024年下半期から今年上半期にかけて、チョン・グナ教授とともに自閉スペクトラム症の子どもたちを訪ね、ギター演奏などの音楽ボランティアを行ってきた。
こうした活動を土台に、両者は音楽を治療に取り入れた社会性集団プログラム「MIND」を開発。世界の大学病院としては初めて、芸術と医療を融合した自立支援システムを構築した。
「MIND」は非言語的手段である音楽基盤治療のため、認知能力の低い子どもや、言語に反応せず疎通が難しい子どもたちに効果的だ。子どもたちが自ら楽器を選べるように自身の意志表現を誘導し、合奏を通じてそれぞれが自身の演奏順序を待つなど、社会活動経験も支援する。
ここに専門家による統合治療も加わる。小児精神科の専門医はもちろん、音楽療法士、言語療法士、行動療法士、臨床心理士などで構成された専門チームが、事例を中心とした多角的な議論を通じて、一人ひとりの子どもに合わせた治療を提供する。
このような音楽療法の効果はノルウェーなどの研究でも実証されており、自己表現の増進、社会的相互作用の向上に寄与すると報告されている。
実際、SUGAが音楽ボランティアを実施した当時には、言語療法だけでは積極的な反応を示さなかった子どもが自ら楽器を手に取り、合奏に積極的に参加するなどの変化が見られた。
また、サックスを吹いた別の子どもは、言葉や感情表現がほとんどなかったにもかかわらず、ほかの子どもたちと共同作業をする過程で感情を表情で示し、治療者の関心と称賛にも反応を示した。
「ミン・ユンギ治療センター」では、年末にプログラム参加者のためのイベントが予定されている。
まず、11月には「キャンプ・オン・ザ・スペクトラム」が行われ、自閉スペクトラム症の児童・青少年約10人が1泊2日でバンド演奏練習や親向けの教育、家族レクリエーションに参加し、医療スタッフやボランティアとともに社会性を高める機会を設ける。
12月には延世大学の大講堂で発表会が開かれ、子どもたちがこれまで練習してきた演奏を家族や観客に披露する予定だ。バンドの練習とステージ公演は、「ミン・ユンギ治療センター」が治療の域を超えて、自閉スペクトラム症の子どもたちの自立と社会的成長のための土台を提供することを意味する。
「ミン・ユンギ治療センター」所長のチョン・グナ教授は、音楽と言語、行動、社会性訓練を組み合わせた自閉スペクトラム症の治療プログラムが世界で初めて披露されるだけに、音楽だけでなく美術や体育のようなさまざまな芸術活動を治療に加えるなど、プログラムを継続的に発展させるとともに、プログラムに特化した言語治療士、行動治療士など専門家を養成する役割の遂行を目標に掲げている。
これを基に、海外の自閉スペクトラム症治療機関とパートナーシップを締結し、プログラムのグローバル化を図るとともに、プログラムのマニュアル出版を含め、臨床研究や学術発表も進めていく。
チョン・グナ教授はセンター開設に際し、「ミン・ユンギ治療センターでは、子どもたちに音楽を教えながら治療効果を高めるだけでなく、社会性も教育する。大衆が、社会で自立しようと努力する自閉スペクトラム症の子どもたちを見ることで、障がいに対する認識も大きく改善されると期待している」と伝えた。
◇SUGA プロフィール
1993年3月9日生まれ。本名ミン・ユンギ。2010年に所属事務所Big Hitエンターテインメント(現HYBE)が開催した「HIT IT AUDITION」で2位合格し、練習生に。2013年6月にBTSのメンバーとしてデビューした。グループ内ではリードラッパーを担当しており、BTSの一員として活躍する傍らで、高い作詞・作曲・編曲の実力を持つ音楽プロデューサーとしても人気を集めている。2023年9月に社会服務要員として兵役につき、2025年6月21日に召集解除された。
前へ
次へ