兵役逃れ疑惑により20年以上も母国・韓国への入国を禁じられている歌手ユ・スンジュンが、同様の疑惑で執行猶予判決を受けたサッカー選手を引き合いに出し、自身への処遇が不公平だと主張した。
ソウル行政裁判所では6月26日、ユ・スンジュン(英名:スティーブ・ユ)が提起した「ビザ発給拒否処分の取り消し」および「入国禁止決定の不存在確認」に関する審理が行われた。
ユ・スンジュン側は「兵役を忌避しても執行猶予で済んだ例がある」としてソク・ヒョンジュンの事例を挙げ、「比例性および平等原則に反している」と主張。また、ビザ発給を促すために“間接強制”の必要があると訴えた。
これに対し、駐ロサンゼルス総領事館側は「ユ・スンジュンのケースはスポーツ選手の事例とは異なる」と反論。さらに、「法務部長官による入国禁止決定が存在する」としてビザ発給拒否の正当性を主張してきた。
一方、ユ・スンジュン側は「正式な入国禁止決定は存在しない」として、法務部を相手に「入国禁止不存在確認訴訟」も並行して進めている。
韓国法務部は「入国禁止の判断は法務部長官の裁量に基づくもの」と説明。あわせて「ユ・スンジュンが韓国に入国すれば、社会的混乱を引き起こすおそれがある」と強調した。
ユ・スンジュンが引き合いに出したソク・ヒョンジュンとは、いかなる人物なのか。
1991年6月29日生まれのソク・ヒョンジュンは、2010年にオランダの名門アヤックスでプロデビュー。その後はフローニンゲン(オランダ)、マリティモ、ポルト、ヴィトーリアFC(以上ポルトガル)、トラブゾンスポル(トルコ)、スタッド・ランス、トロワ(以上フランス)などを渡り歩き、2010年には韓国A代表デビューも果たしている。2016年のリオ五輪にはオーバーエイジ枠で出場した。
しかし、2012年ロンドン五輪、2014年仁川アジア大会のいずれでもメンバーに選ばれず、兵役免除の機会を逃した。その後も欧州でプレーを続けた結果、2019年に韓国兵務庁が発表した「兵役義務忌避者」名簿に名を連ねた。
当時、ソク・ヒョンジュンは自身のSNSを通じて、「尚武(軍隊チーム)への入団を目指したが、当時所属していたトロワが協力書面を拒否し、移籍の機会を失った」と弁明。「昨年、契約解除の違約金を支払って退団し、現在は無所属。できるだけ早く兵役を履行したい」との意思を表明している。
さらに「韓国国籍の放棄や帰化などの噂は事実無根。韓国国民として兵役を回避する意思はなかった。誤解を招いたことを謝罪する」と付け加えていた。
なおユ・スンジュンは、1997年に『Gaui』でデビューし、数々のヒット曲でスター歌手の地位を築いた。しかし2002年1月、入隊直前に韓国国籍を放棄してアメリカ市民権を取得し、兵役を回避したとの批判が殺到。韓国法務部は直ちに彼の入国を制限した。
以後、ユ・スンジュンは2015年と2020年の2度にわたりビザ発給拒否処分を巡る訴訟で勝訴しているが、韓国政府は依然として「公共の福祉や外交関係を損なうおそれがある」としてビザ発給を拒んでいる。
現在は3度目の行政訴訟が進行中で、ユ・スンジュンは今なお20年以上にわたって韓国への入国を許されていない。
今回のビザ発給拒否取消訴訟および入国禁止不存在確認訴訟の判決は、8月28日に言い渡される予定だ。
(記事提供=OSEN)
■“兵役逃れ”で消えたユ・スンジュン、20年が過ぎても韓国に入国できない理由
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