BIGBANGのG-DRAGONが8年ぶりのワールドツアーでカムバックしたが、ステージ上に“K-POP界の王”としての威厳を見出すことは難しかった。
70分にも及ぶ前代未聞の遅延と期待外れのライブは、苦々しい印象を残した。
3月29日、高陽（コヤン）総合運動場で開催された「G-DRAGON 2025 WORLD TOUR [Ubermensch]」韓国公演は、チケット販売と同時に完売を記録。3rdソロアルバムのリリース後初、かつ2017年以降約8年ぶりに開催されるワールドツアーであった。
しかし、期待が大きかった分、失望も大きかった。開演前からその不安が漂っていた。
悪天候と観客の安全上の理由により、当初30分の遅延が告知されていたが、入場が完了した後も40分以上公演は始まらなかったのだ。体感で氷点下の冷たい風が吹き付けるなか、観客席のあちこちから不満の声が上がった。結局、G-DRAGONがステージに登場したのは予定より70分遅れた19時40分ごろであった。すでに観客の体力も期待感も低下した後だ。
G-DRAGONのライブも不安定だった。1曲目『POWER』で幕を開け、王冠と赤いバラのファージャケットを着て登場したが、“キングの帰還”という形容を付けるには物足りなさが残った。特有のファッションセンスとビジュアル、舞台装置は印象的だったが、肝心のライブは終始不安定であった。
『Home Sweet Home』から『Crayon』『That XX』などの代表曲では、G-DRAGONの音程はなかなか安定せず、『That XX』では感情の流れが乱れ、原曲の感性を再現するには力不足であった。
公演序盤、特に言及のないままステージを続けていたG-DRAGONは、遅れて「（開演が）遅くなって申し訳ない。寒くて申し訳ない」と謝罪した。YG時代の仲間である2NE1・CLがサプライズ登場し、デュエットで雰囲気の転換を図ったが、凍てついた会場を温めるには至らなかった。G-DRAGONの一部のコメントが明瞭に伝わらなかったことや、幾つかのステージ転換時に生じた長い空白は、観客の集中力をそいだ。
後半に入ってからは、G-DRAGONが徐々にステージを立て直した。
『CROOKED』『Heartbreaker』など代表曲メドレーが会場の雰囲気を盛り上げ、特に『TODAY』では観客の合唱を誘導し、BIGBANG時代を思い起こさせる特有の自由奔放さを発揮した。
公演は、G-DRAGONの初のフルアルバムから新譜の『Übermensch』まで、約20曲におよぶセットリストで構成された。G-DRAGONはステージ中央に設置された2つの巨大なオブジェを指し、「『Heartbreaker』当時と今回のアルバムでの僕の姿」と述べ、「始まりと現在が向かい合っている」と説明した。
しかし、この日対面したのは、過去の輝かしさが薄れた現在のG-DRAGONであった。公演タイトルの意味が色褪せてしまったからである。
3rdアルバムのタイトルでもある『Übermensch』は、ニーチェが定義した「超越的な人間」を指し、既存の道徳や限界を越えて自ら価値を創造する理想的存在を意味する。今回の公演でのG-DRAGONは、“超越”というより“未完成”に近かった。
一方、公演終盤にはG-DRAGONがBIGBANGの活動をサプライズで予告した。彼は「来年でBIGBANGは20周年を迎える」とし、「3人で来年成人式を構想中だ」と明かした。
◇G-DRAGON プロフィール
1988年8月18日生まれ。本名クォン・ジヨン。2006年にBIGBANGのメンバーとしてデビュー。BIGBANGのリーダーで、グループ内ではラッパーを担当している。作詞・作曲、そしてプロデュースのスキルにも定評があり、数多くの楽曲をヒットさせた。2019年10月に除隊。2022年4月に『Still Life』を発表し、BIGBANGとして約4年ぶりにカムバック。2023年6月にYGエンターテインメントとの契約が終了し、同年12月にギャラクシー・コーポレーションと専属契約を締結。2024年10月31日、7年4カ月ぶりの新ソロ曲『POWER』をリリースした。
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