切実だった。イメージが固定化されてから長い時間が経った。
40代が近づいているにもかかわらず、まだ「ラブコメキング」と呼ばれている。転換が必要だった。
ドラマ『花より男子~Boys Over Flowers』『相続者たち』『青い海の伝説』まで、俳優イ・ミンホ(37)が出演したジャンルは、恋愛を基盤としたロマンチックコメディだ。ひとつのジャンルの職人とされることは、韓流スターの基盤となる一方で、演技の幅を広げることが難しいという危険性もはらんでいる。
去る7月23日にシーズン2が公開されたApple TV+のドラマ『Pachinko パチンコ』は、イ・ミンホにとって転機となる作品だ。爽やかな愛ではなく、倫理的に禁じられた快楽を描く物語だ。
彼が演じるハンスは既婚者でありながら、若いソンジャと密かな関係を持つ人物。田舎に住む純粋な女性の人生を根底から揺るがし、純愛ではなく、所有欲で近づいていく。それでも彼には魅力がないわけではない。善なのか悪なのかが曖昧だ。
イ・ミンホは「新しい動機づけ、新しいエネルギーが切実に必要だったときに出会った作品」と語り、「コメントを見て興奮を覚えた。『今回は違う』という言葉が特に印象的だった。自分の中にある別の何かを引き出し、良い評価を受けると、俳優としての喜びを感じる」と満足感を示した。
さらに「20代の頃は『ラブコメキング』として目立った俳優だったとしたら、30代はもっと多くのものを引き出せる俳優と言われたい。そうすれば40代の俳優人生は、もっと輝かしいものになるのではないか」と付け加えた。
同名の小説を原作とした『パチンコ』は、1900年代初頭の韓国から始まり、1980年代の日本に至るまで、東アジア全域で展開された物語を描いている。帝国主義が主要なイデオロギーであった時代だ。見知らぬ土地に根を下ろして生きてきたソンジャ(演者キム・ミンハ/ユン・ヨジョン)の視点から、韓国移民家族の生活が描かれる。
最近公開されたシーズン2では、1940年代のより過酷で過激な日本の植民地時代と、1989年のアメリカが描かれる。
イ・ミンホが演じるハンスは、成功した事業家。他者に理性的な敬意を払う代わりに、感情が先行する。自分勝手に操作しようとするが、他者の望むものを与えようとはしない。応援したくなるような愛ではなかった。
シーズン2では、ハンスとソンジャの間にさらに複雑な関係が形成される。ハンスの子供を一人で育てていたソンジャは、ハンスを拒絶しながらも、決定的な瞬間にはハンスの助けを求める。その時代を感じさせる、しぶとい縁だ。
「シーズン2では、ハンスはさらに多くのものを得ることになる。経済力と権力がさらに強くなる。しかし、その力が強くなるほど、ソンジャへの執着も強くなる。シーズン1とはまた異なる感覚を与えるだろう」
新人時代に『花より男子』で一気にトップスターの座に登り詰めたイ・ミンホにとって、「オーディション」は忘れられた言葉だった。ドラマ制作者たちは、イ・ミンホを起用しようと忙しかった。長い間、自分が選択する立場だったのだ。『パチンコ』は、そんなイ・ミンホが13年ぶりにオーディションを経験した作品でもある。
「選ばれるために情熱を燃やす時間は久しぶりだった。貴重な経験だった。オーディションの過程が非常に細かくて、演技というよりも実際の人物がそこにいて、去っていくような感じがした。韓国ではトップスターがわざわざオーディションを受ける必要があるのかという見方も多いが、完璧なキャスティングのためにはオーディションが必ず存在すべきだと思う」
世界中の人々が知らなかった東アジアの歴史に熱狂した。ユダヤ人が経験した悲惨な歴史が東アジアにも存在していたという事実が、多くの創作者たちに火をつけた。
その熱気に支えられ、『パチンコ』シーズン1は「クリティクス・チョイス・アワード」「ゴッサム・アワード」など、世界の名だたる賞を席巻した。シーズン2には、なんと1000億ウォン(約108億円)が投入された。『イカゲーム』(200億ウォン)の5倍の金額だ。
「アイデンティティの混乱を経験している方々が共感してくださったようだ。アメリカには特に多くの人種の移民がいるため、より身近に感じられたのだと思う。韓国の物語だが、結局は土地に根を下ろして生きていく人々の物語だ。見知らぬものが何であるかを知っている人なら、共感できる作品だろう」
◇イ・ミンホ プロフィール
1987年6月22日生まれ。2009年に放送された韓国版『花より男子~Boys Over Flowers~』(KBS)で道明寺司(韓国名:ク・ジュンピョ)を演じ、日韓で絶大な人気を誇るスターとなった。その後も『個人の趣向』『シティハンター in Seoul』『相続者たち-王冠を被ろうとする者、その重さに耐えろ』『青い海の伝説』といった人気ドラマで存在感を発揮する。2019年4月に兵役を終え、2020年のドラマ『ザ・キング:永遠の君主』で俳優業を再開。
前へ
次へ