「ク・ハラ法」に続いて「イ・ソンギュン防止法」提案…利益追求の“過激”マスコミや警察にも、韓国文化人団体が警鐘

2024年01月13日 話題

『パラサイト 半地下の家族』で知られるポン・ジュノ監督を筆頭に、韓国文化人たちが悲劇が繰り返されぬよう団結した。

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1月12日午前、ソウル中区のプレスセンターでは、「故イ・ソンギュン俳優の死に向き合う文化芸術家たちの要求」という声明書が発表された。この場にはポン・ジュノをはじめ、歌手兼作曲家のユン・ジョンシン、映画監督のチャン・ハンジュン、イ・ウォンテ、俳優のキム・ウィソン、チェ・ドクムンなど、関連団体のトップたちが参加した。

29の文化芸術関連団体を中心に結成された「文化芸術家連帯会議(仮)」は、昨年12月27日に突然この世を去ったイ・ソンギュンさんの訃報を受け、二度とこのようなことが繰り返されてはならないということで意見が一致。捜査当局関係者の徹底した真相究明要求、マスコミの自浄努力とともに、報道目的に合致しない記事の削除要求、文化芸術家の人権保護のための現行法令の再改正などを要求した。

声明書の朗読はポン・ジュノ監督、イ・ウォンテ監督、俳優キム・ウィソン、歌手ユン・ジョンシンなどが務め、俳優ソン・ガンホを含む2000人の文化人が力を合わせている。

警察、マスコミに警鐘

ポン・ジュノ
(写真提供=OSEN)1月12日、声明を発表した文化芸術家連帯会議(仮)

文化芸術家連帯会議は大きく3つに言及。捜査過程に対する徹底した真相究明要求、マスコミの自浄努力とともに報道目的に符合しない記事削除の要求、文化芸術家の人権保護のための現行法改正だ。

声明発表で最初に出てきたキム・ウィソンは、「10月19日、ある日刊紙の“俳優L氏の麻薬と関連した情報を土台に内偵中だ”という仁川市警関係者の話を引用した最初の報道以降、10月23日に彼が正式立件された時から2カ月余りの間、彼は何の保護装置も取られずに言論とメディアに露出された。簡易試薬検査、国立科学捜査研究院の精密鑑定のための試薬採取から陰性判定までの全過程が、3回にわたる警察召還調査に出席する姿が全てマスコミを通じて生中継され、事件関連性と証拠能力有無さえ判断が難しい録音ファイルがマスコミとメディアを通じて大衆に公開された」と残念さを訴えた。

続いて、「結局、彼は19時間の捜査が行われた3回目の召還調査で、嘘探知機を使って陳述の真偽を隠してほしいという要請を残し、自ら人生に終止符を打つという残酷な選択をすることになった」として、「これに対し、この2カ月余りにわたって彼に加えられた苛酷な人格殺人に対して私たちの立場を明らかにすることが、亡くなった同僚への最小限の道理だと考え、以下のような立場を明かす」として声明書を公開した。

そしてポン・ジュノ監督は、イ・ソンギュンさんに対する警察の調査に関して、徹底した真相究明を要求。「故人の捜査に関する内部情報が最初に漏れた時点から死亡に至るまで、2カ月余りの期間にわたって警察の捜査保安に一寸の問題もなかったのか、関係者の徹底した真相究明を促す」と話した。

続いて「捜査が進められている間、公報責任者の不適切な言論対応はなかったのか、公報責任者ではない捜査業務従事者が個別にマスコミと接触したり、記者などから捜査事件などの内容に関する質問を受けた場合、不適切な答弁をしたりした事実はないのか。一寸の疑問もなく調査し、その結果を公開することを要請する。特に、国立科学捜査研究院の精密鑑定の結果、陰性判定が出た11月24日のKBSの単独報道には、多数の捜査内容が含まれているが、どのような経緯と目的で提供されたのか綿密に明らかにしなければならず、3回目の召喚調査で故人が19時間の徹夜捜査で一貫して容疑を否認したあとの12月26日に報道された内容もやはりそうだ」と重い表情を隠せなかった。

また、「言論関係者の取材協力は適法な範囲内で行われなければならないにもかかわらず、3回にわたる召還手続き全てで故人が出席情報を公開にした点、当日に故人の露出しないようにいかなる措置も取らなかった点が、果たして適法な範囲内の行為なのか明確に明らかにすることを要請する」とし、「捜査当局は適法な手続きにより捜査したという一文で、このすべての責任に対して自由ではない。捜査過程に対する徹底した真相調査だけが誤った捜査慣行を正し、第2、第3の犠牲者を作らない唯一の道」と話した。

イ・ソンギュン
(写真提供=OSEN)イ・ソンギュンさん

ユン・ジョンシンは、「マスコミやメディアに聞く」と前置きし、「故人に対する内偵段階の捜査報道が、果たして国民の知る権利のための公益的目的で行われたと言えるのか。大衆文化芸術家だという理由で、個人のプライバシーを浮き彫りにして扇情的な報道をしたのではないか。大衆文化芸術家だという理由で、故人をフォトラインに立たせることを警察側に無理に要請した事実はなかったのか」と反問した。

政府への要求も

何よりもユン・ジョンシンは、「特に、容疑事実とかけ離れた、私的な対話に関する故人の音声を報道に含めたKBSは、公営放送の名誉をかけてひたすら国民の知る権利のための報道だったと確信できるのか。KBSを含むすべてのマスコミおよびメディアは、報道目的に符合しない記事内容を早く削除することを願う」と強調し、「大衆文化芸術家が大衆の人気に基づくしかないという点を利用し、悪意的に検証されていないソースを流したり、十分な取材や確認手続きをせずにイシュー化だけに汲々とした一部ユーチューバーを含むイエロー・マスコミ(利益のために事実よりも過激に報じるマスコミ)、いわゆる“サイバーレッカー”(利益目的を指す)の弊害にいつまで沈黙しなければならないのかということについては、沈黙しなければならない?」と怒りをあらわにした。

イ・ウォンテ監督は、政府および国会への要求として、「たとえ、捜査当局の捜査手続きが適法だったとしても、政府および国会は今回の死亡事件に対して沈黙してはならないだろう。刑事事件の公開禁止と、捜査に関する人権保護のための現行法令に問題点がないか点検し、必要な法令の再改正作業に着手しなければならない。被疑者の人権と国民の知る権利の間で原則と例外が変わることがないよう、捜査当局が法の趣旨を恣意的に解釈・適用することがないよう、明確な立法的改善が必要だ。私たちは上記の要求と質問に対して、納得できる結果が出るまで最善の努力を尽くす」と声を高めた。

また連帯会議は、「これ以上、惨憺たることが発生しないよう、文化芸術界全般が共に助けることができる連帯会議を具体化させて作る」とし、「被疑事実公表と内容流出など、不当な被害を防ぐための立法努力のために今回の声明書を国会議長に伝達する予定だ。不法捜査慣行とイエロー・ジャーナリズムに向かうマスコミの自浄作用のために、警察庁とKBSにも声明書を提出する」と強調した。

続けて「今回の事件を契機に、いわゆる“イ・ソンギュン防止法”を制定するため意を共にする協力団体と多様な努力を傾け、色々な対応を積極的に共にしていく計画だ。私たちの意志が世の中に広く知らされ、これ以上、悲劇が繰り返されないことを願う」と話した。

この日の現場では、“イ・ソンギュン防止法”というワードに注目が集まった。以前にも、芸能人の名前を用いた法が社会的に話題を呼んできたためだ。

思い出されるKARAク・ハラさんの悲劇

過去、ガールズグループKARA出身のク・ハラさんがこの世を去ったことで、実兄のク・ホイン氏は、養育義務を果たさなかった両親の相続資格を制限できるよう現行民法に「直系尊属または直系卑属に対する保護・扶養義務を顕著に解胎した(怠慢な)者」を追加することを主な内容とする「ク・ハラ法」の立法を促したことがある。

これは大きな社会的問題となり、多様な意見があふれた。ク氏を苦しめた相続問題は、「公務員ク・ハラ法」(公務員災害補償法、公務員年金法)という名で現在、施行されている。

ク・ハラ
(写真提供=OSEN)ク・ハラさん

「公務員ク・ハラ法」によれば、災害遺族給付を受けられる公務員が死亡した場合、養育責任のある両親がこれを履行しなかったとすれば審議を経て、両親に給与の全部または一部を支給しないこともありうる。ただこれは公務員に限ったもので、ク・ホイン氏が促した民法一部改正法律案(ク・ハラ法)は閣議通過後、まだ国会に係留中の状態だ。

一方、昨年10月から麻薬投薬の疑いで警察の調査を受けてきたイ・ソンギュンは、3回呼ばれ、肝臓、精密、体毛などすべて陰性判定を受けたにもかかわらず、自由ではなかった。 実際、イ・ソンギュンは死亡前日まで麻薬投薬の疑いと関連して調査を受けた中で、悔しさを吐露し嘘発見器の調査を要請した。 故人は江南風俗店の室長A氏とA氏の自宅で数回麻薬を投薬した疑いで立件され、警察の調査を受け、事実上すべての検査で麻薬陰性判定を受けた。 死亡前日にもイ・ソンギュン側は、麻薬投薬容疑と関連した証拠がA氏の供述しかないとし、容疑を否認した。 警察に向かって「物証のない捜査」という批判も絶えなかった。

なお、昨年10月に違法薬物疑惑で警察の調査を受けてきたイ・ソンギュンは、3度にわたる調査を受けていたところ、12月27日に突然自らこの世を去り、衝撃を与えた。享年48歳。

訃報が伝えられて以降、警察には「あまりにも無理な捜査ではなかったのか」「高圧的な捜査が疑われる」などの疑惑が提起される事態に。これに対して仁川(インチョン)警察庁は12月28日、「高圧的な捜査には同意できない」と反論し、「すべての調査は被疑者イ・ソンギュン氏の同意を得て行った。捜査中に亡くなった点については残念に思う」として公式コメントを発表した。

(記事提供=OSEN)

◇イ・ソンギュンさん プロフィール

1975年3月2日生まれ。2001年、MBCのシチュエーションコメディ『恋人たち』(原題)でデビュー。2007年のドラマ『白い巨塔』韓国版で正義感の強い“チェ・ドンヨン(日本の里見脩二)役”を演じてブレイクし、『コーヒープリンス1号店』『パスタ~恋が出来るまで~』『ゴールデンタイム』『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』と数多くの人気ドラマに出演した。映画『僕の妻のすべて』『最後まで行く』『パラサイト 半地下の家族』などでも高い演技力を発揮。プライベートでは2009年5月に女優チョン・ヘジンと結婚しており、同年11月に長男が、2011年8月に次男が産まれている。2023年12月27日、48歳でこの世を去った。

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