蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)で最も好調の選手は、横浜F・マリノス戦が“入隊前最後の試合”となるかもしれない。
兵役義務遂行のため、来る4月29日に軍隊チームの金泉尚武(キムチョン・サンム)入隊予定のMFイ・ドンギョン(26)が、圧巻のパフォーマンスでKリーグ1(1部)を“支配”している。
イ・ドンギョンは4月13日、ホームの蔚山文殊(ウルサン・ムンス)サッカー競技場で行われたKリーグ1第7節の江原(カンウォン)FC戦で4-2-1-3のトップ下として先発出場。1ゴール2アシストの活躍でチームを4-0の大勝に導いた。
2アシストはいずれもFWチュ・ミンギュ(33)の得点を演出。そして、蔚山が先制して迎えた前半42分に自身もゴールを決めるのだが、なぜイ・ドンギョンが絶好調なのかを感じさせる場面だった。
当時、ペナルティエリア手前でチュ・ミンギュとのワンツーで相手選手を剥がしたイ・ドンギョンは、トラップでボールを左に流すと、最後は左足の強力なシュートをファーサイドに放ち、ゴールネットを揺らした。
これにより、イ・ドンギョンはリーグ戦開幕7試合で二桁スコアポイント(6ゴール4アシスト)を達成。同部門でリーグ全体1位をマークしている。
枠内シュート数も、元ヴィッセル神戸のFWステファン・ムゴシャ(32、仁川ユナイテッド)とともに1位タイ(11本)を記録している。
イ・ドンギョンは、去る3月28日に兵務庁が発表した2024年2次国軍体育部隊合格者20人のうちの一人に名を連ねた。
韓国では成人男子に兵役義務が設けられているが、スポーツ選手の場合はオリンピックで金・銀・銅、アジア大会で金メダルを獲得すれば、「芸術・体育要員」資格を得て兵役免除の恩恵を受けることができる。
同恩恵を受けた選手は、新兵が受ける3週間の基礎軍事訓練に参加するほか、自身の特技分野を生かしたボランティア活動を544時間消化することで「兵役義務を遂行した」とみなされる。
だが、イ・ドンギョンは2018年ジャカルタ・アジア大会でメンバー外。2021年東京五輪ではU-24韓国代表10番を担い、準々決勝のメキシコでは2得点と活躍するも、チームは3-6と敗れメダル獲得を逃した。当時の会場は横浜国際総合競技場(日産スタジアム)だった。
そして、兵役免除の“ラストチャンス”と言えた昨年の杭州アジア大会も、U-24韓国代表のオーバーエイジ枠に選ばれず。このため金泉尚武に志願し、今月末より入隊することとなった。
目前に入隊を控えた選手が、所属チームでこれほど圧倒的なパフォーマンスを見せることはKリーグでは珍しい。入隊によってしばらくチームを離れることになるだけに、モチベーションが多少落ちてしまう選手もいる。
ただ、イ・ドンギョンは違った。蔚山ユース出身で、チームに対する自負心が人一倍強いイ・ドンギョンは、ドイツに進出して失敗を経験した後、昨年夏に蔚山に復帰した。
しかし、復帰直後は以前のようなパフォーマンスを見せることができなかった。
それでも、冬のオフシーズンで真摯にトレーニングに取り組んだイ・ドンギョンは、かつての全盛期以上の技量を持って帰ってきた。
今年3月19日には第一子となる娘が誕生。父親として、家族の前で圧巻の活躍を披露している。
ホン・ミョンボ監督をはじめとするコーチ陣はもちろん、蔚山のファン・サポーターとしても、イ・ドンギョンの入隊を残念に思わざるを得ないだろう。
江原戦の試合直後、蔚山の公式SNSには「イ・ドンギョンの代わりに軍隊に行きたい」というコメントが殺到し注目を集めた。それだけ、サポーターたちはイ・ドンギョンの活躍に魅了されているのだ。
イ・ドンギョンは来る4月17日、ホームの蔚山文殊(ウルサン・ムンス)サッカー競技場で横浜F・マリノスとのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝第1戦を控えている。24日にはアウェイの横浜国際総合競技場で第2戦が待ち受ける。
もしかしたら、今回の2連戦が入隊前最後の試合となるかもしれない。
日程上、イ・ドンギョンは入隊前日の28日に行われるKリーグ1第9節の済州(チェジュ)ユナイテッド戦にも出場することができる。
しかし、入隊前の準備はもちろん、しばらく別れて暮らすことになる家族との時間が必要なだけに、コーチ陣が配慮する予定だという。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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