韓国政府と自治体の一方的な決定に、プロサッカーKリーグのファンが激怒している。
全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースのサポーターは8月6日、ホームの全州(チョンジュ)ワールドカップ競技場で行われた仁川(インチョン)ユナイテッドとのKリーグ1(1部)第25節で、試合に先立ち以下のような横断幕をゴール裏で掲げた。
「ジャンボリーもダメにして、全北もダメにして!」
「グァンヨン氏!協力?脅迫の兆し」
また、キックオフ前には「キム・グァンヨン、出ていけ!」という過激なコールも叫ばれるなど、サポーターたちが不満を爆発させていた。
もっとも、これらは理由ある抗議だ。
韓国政府・文化体育観光部のパク・ボギュン長官は同日、ジャンボリープレスセンターで記者会見を開き、「収容人員と移動条件などを総合した結果、退役式の11日に全州ワールドカップ競技場でコンサートを開催することにした」と発表した。
また、全羅北道(チョルラブクト)のキム・グァンヨン道知事も「K-POP公演を前後にして全北現代のホームゲームが予定されていたが、(クラブ側が)ほかの会場に移して試合を行うようにしたことに感謝している」とし、「K-POP公演のフィナーレを飾ることができるよう、医療、消防など全羅北道のすべての人材を動員する」と説明した。
韓国では現在、世界スカウト機構による合同キャンプ大会「2023セマングム第25回世界スカウトジャンボリー」が全羅北道・扶安郡(プアングン)のセマングム干拓地で開催されている。
158カ国から約4万3000人もの14~17歳の青少年が参加している今大会だが、開催直後から問題が次々と発生。会場内のコンビニにおける“ぼったくり問題”や、猛暑による熱中症患者の続出、さらには参加者に支給されたゆで卵からカビが発見されるなど、連日物議を醸す事態となっている。
今回のK-POP公演も、当初は6日20時から扶安郡のセマングム野外ステージで開催する予定だった。しかし、前出のパク長官の説明の通り、急きょ場所と日時が変更となってしまったわけだ。
キム知事はいかにも全北側が全面的に協力してくれたかのように発言したが、事実はそうではない。
全北の関係者は「クラブも今日(6日)初めて知らせを受けただけだ。何の協議もなかった」と説明した。
つまり、政府、自治体の一方的な決定だったという意味だ。
全北は当初、全州ワールドカップ競技場で9日に仁川とのFAカップ準決勝、12日に水原三星(スウォン・サムスン)ブルーウィングスとのKリーグ1第26節を行う予定だった。
しかし、今回の政府の決定によって、正常的にスケジュールを消化できなくなった。
現在、全北は各試合の延期に関して、FAカップについては韓国サッカー協会(KFA)、Kリーグについては韓国プロサッカー連盟に要請している。
問題は延期する場合、アウェイチームの仁川と水原三星の日程にも影響を及ぼすという事実だ。
仮に日程を延期しない場合、全州ワールドカップ競技場ではなく急きょ決定した他会場で試合を行わなければならない。
延期するとしても、仁川と水原三星は準備したスケジュール通りに動くことができなくなる。
いずれにしても、Kリーグ全体が大きな被害を受けるという事実には変わりがない。
全北のとある30代女性ファンは、「一方的に知らせたことに腹が立つ。選手たちも試合のスケジュールに合わせて準備をするはずなのに、チームを無視しているようにしか思えない。ファンもKリーグの日程に合わせてすべてのスケジュールを決めている。芝生も壊れてしまうのではないか」とし、「K-POPコンサートをする場所は益山(イクサン)にも郡山(グンサン)にも十分ある」と皮肉った。
また、全北を率いるルーマニア出身のダン・ペトレスク監督も、「生まれて初めて経験することだ。まったく理解ができない。全北に多大な影響を及ぼすだろう。特に、全州城というホームには12人目の選手たちの応援がある。痛手が倍になる」とし、当惑の意を隠さなかった。
今年、韓国サッカーは政府のあらゆるイベントによって大きな被害を受けている。つい最近では「Coupang Playシリーズ」によって釜山(プサン)アイパークが犠牲となったが、今度は全北が2番目の犠牲者となった。
全北対仁川が行われた6日、全州ワールドカップ競技場は猛暑で大雨が降るなかでも大勢の観客が集まった。
彼らの大多数は全羅北道の有権者、もしくは今後有権者になる人々だ。地域住民の支持を得るべきキム知事にとって、決して蔑ろにして良い対象ではない。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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