本当に韓国サッカーの全分野を管掌する最上位機関なのかと疑いたくなる。
最も慎重に取り扱うべき代表チームの運営において“事故”を起こしただけに、その衝撃は大きい。
韓国サッカー協会(KFA)が再び重大なトラブルを起こした。今度は国際的な恥と言うべき事案だ。
というのも、メジャーな国際大会の一つであるアジア競技大会を控え、“代表資格のない選手”を最終エントリーに選出したからだ。
前代未聞の事態で議論に包まれているKFAには、チョン・モンギュ会長3期体制の“アマチュア行政”に対する辛辣な批判が寄せられている。
KFAは7月18日、過去に飲酒運転摘発で罰金刑を受けた経歴のあるDFイ・サンミン(23、城南FC)を、杭州アジア大会に出場するU-24韓国代表の最終エントリーから除外したことを発表した。
同日発表した声明文では、「14日にエントリーを発表したアジア大会の国家代表に関する選手選抜過程で、サッカー国家代表チーム運営規定に合わない選手を選抜した点に対して謙虚に認め、今後の行政体系整備を通じて類似の状況が再発しないよう最善を尽くすと約束する」と伝えられた。
KFAの国家代表チーム運営規定第17条「懲戒及び欠格事由」によると、「飲酒運転などと関連した行為で500万ウォン以上の罰金刑が宣告され、その刑が確定してから3年が経っていない者」は国家代表にはなれない。
この規定は大韓体育会の国家代表選抜規定第10条(欠格事由)の内容に従ったものだ。
1999年8月生まれで蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)下部組織出身のイ・サンミンは、2020年にプロ入りしてKリーグ2(2部)の忠南牙山(チュンナム・アサン)FCにレンタル移籍した当時、同年5月に飲酒運転を警察に摘発されたことがある。
摘発後、7月10日に道路交通法違反で500万ウォン(日本円=約50万円)の罰金刑を言い渡された。判決確定日は同年8月5日だ。
また、イ・サンミンは飲酒運転摘発後も事実をクラブに知らせず公式戦数試合に出場しており、摘発から約1カ月後の6月に遅れて報告した。
これに対し、Kリーグを管轄する韓国プロサッカー連盟は、イ・サンミンにリーグ戦15試合の出場停止と制裁金400万ウォン(約40万円)の処分を科していた。
このような前歴を持つにもかかわらず、イ・サンミンは世代別代表に選ばれてきた。
KFAは「2021年9月、U-22代表に該当選手を初めて選抜して以降、計3回にわたりU-23及びU-24代表に選抜している」とし、「規定上、同選手は2023年8月4日までは国家代表に選ばれることはできない。関連規定をしっかり検討できていなかった」と伝えた。
U-24韓国代表メンバーが発表された当時、KFAはイ・サンミン選出による批判に対し、「(U-24韓国代表率いるファン・ソンホン監督が)イ・サンミンの過ち、懲戒を履行した点などを総合的に、十分に考えて判断し、選抜した」と釈明した。
ただ、ファン・ソンホン監督はKFAから「欠格事由」と関連して伝えられたことはなかった。
実際には、KFAは声明を発表する前日まで、イ・サンミンの判決確定日などを探すことに必死だったという。
今回の事態は“システム不在”が問題なのではなく、既存のシステムを破壊した「アジャイル(Agile)組織」による影響の延長戦だと見られている。
チョン会長は2021年1月に3選に成功した後、自身が運営する施工会社の建設大手・HDC現代(ヒョンデ)産業開発で導入している「アジャイル組織」をKFAにも取り入れた。水平的に素早く業務を推進する文化の造成を掲げたのだ。
つまり、以前までは大多数の人員が特定の部署で専門的に業務を遂行していたのを、「アジャイル組織」では他部署の仕事も兼任しなければならず、すべての人員が“マルチプレーヤー”として業務をこなさなければならなくなった。
もっとも、「アジャイル組織」導入以降、KFAはこの2年以上雑音が絶えなかった。
豊富な人材を持つ大企業と異なり、人材が小規模なKFAでは「アジャイル組織」は身の丈に合わなかった。
特定業務を1~2人が専門的に処理してきたこれまでと違って、「アジャイル組織」では責任所在が不透明なまま業務が進められたことで、いくつかの“行政事故”が発生した。A代表の選手選抜騒動、E-1サッカー選手権でのビザ発給ミス問題などが代表的な例だ。
そして今年5月、理事陣総辞退につながった懲戒中のサッカー関係者100人に対する赦免措置(後に撤回)は、広報及び対外機能がマヒした組織の現住所が明らかになった惨事だった。
今回の“無資格選手”選抜も同じだ。
そもそもKFAでは、各世代の代表チームとKFA事務局内の架け橋の役割をしながら、各種実務と選手の身辺チェックを執り行う主要実務者が、最近になって「アジャイル組織」の影響で他部署に異動となるなど、無理に業務を並行する状況となっていた。
そのため、自然に主要なリスクを予め対応する状況が造成されていなかった。
イ・サンミンの前歴を認知したファン監督が、エントリー提出前に細かくチェックできなかったことは否定できない。
とはいえ、数多くの選手が候補に挙がるなか、特定の個人の欠格事由などをすべて把握することは現実的に不可能だ。
世界中どの国であっても、まずは協会内の代表選抜システムから一時的に選ばなければならない。
KFAはこの部分に一見識を持つ職員を設けながらも上手く活用できず、結果として類を見ないトラブルを起こしてしまった。
アジアオリンピック評議会(OCA)は15日に各国のアジア大会最終エントリーの受付を終えた。
大会規定上、最終エントリー変更のためには負傷及び医学的所見が伴わなければならない。
つまり、過去の飲酒運転騒動で除外されたイ・サンミンの代替選手を招集することは困難な状況というわけだ。
KFAは大韓体育会に最終エントリー変更の協力を要請する計画だという。
しかし、大韓体育会の関係者は本紙『スポーツソウル』の電話取材に対し、「最終エントリーは大会規定に従うしかない。他国及び多種目との公平性問題が生じかねないため、慎重にならざるを得ないのが事実だ」と伝えた。
杭州アジア大会に出場するU-24韓国代表は当初、22人で構成されていた。しかし、今回のイ・サンミン除外で21人での出場が不可避となった。
加えて、最終エントリーに含まれたMFイ・ガンイン(22、パリ・サンジェルマン)は、未だクラブと調整中のため招集が不透明。場合によってはイ・ガンインも参加できず、本来より2人少ない20人で出場せざるを得ない状況にもなりかねない。
KFAが史上最悪とも言える“行政事故”により、韓国国内はおろか国際舞台でも大切な地位を失う危機に直面した。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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