感動、ロマン、エンターテインメントのすべてが揃った演出だった。
ヴィッセル神戸からモンテネグロ代表FWステファン・ムゴシャ(31)を完全移籍で獲得した仁川(インチョン)ユナイテッドの「ムゴシャ上陸作戦」が、韓国国内でKリーグファンを中心に大きく話題を集めている。
仁川が今回試みた韓国初の“空港オフィシャル”は、楽しさに加えて感動ももたらした。
仁川は7月10日、昨夏に神戸へと移籍したムゴシャの1年ぶり復帰を発表した。背番号は9番を着用し、契約期間は2025年までとしている。
ムゴシャはかつて2018年から2022年夏までの4シーズン半、仁川でリーグ戦通算129試合68ゴール10アシストを記録するなど、絶対的ストライカーとして活躍を披露した。
ただ、昨年6月にバイアウト条項が発動され、神戸へと移籍した。
だが、神戸での挑戦は順調ではなかった。
移籍初年度はリーグ戦で5試合のみの出場にとどまり、先発出場は1試合のみ。プレータイムはわずか85分だった。ベンチからも外れる試合が多く、主力に定着することができなかった。
状況は2023年シーズンに突入しても変わらず。今季はリーグ戦途中出場1試合、リーグカップ3試合の出場にとどまった。ムゴシャが神戸で公式戦でのゴールやアシストを記録することはなかった。
そんななか、ムゴシャは自ら神戸との契約解除を試みたが、これもスムーズではなかった。神戸側は、バイアウト条項を発動してまで獲得したムゴシャを簡単に手放そうとはしなかった。
仁川はムゴシャ復帰を試みようとあらゆる方法を模索していた。そして、今月初めに神戸に送付した公文書で状況を覆した。
仁川は2日、今季終了後にFA(自由契約)資格を得るムゴシャと2024年シーズンの契約に関する交渉を始めるという意向書を神戸に送った。
ムゴシャが仁川と来季の契約に合意した場合、神戸は今夏の移籍市場でムゴシャを放出することができない。そのため、移籍金を確保するためにも神戸はムゴシャと合意し、契約解除を提案した。
ムゴシャも、神戸での残り年俸を自主的に全額放棄した。こうして、仁川の「ムゴシャ上陸作戦」が本格的に始動した。
仁川は「ムゴシャ復帰」の公式発表をどのように進めるかについて深く考えた。
Kリーグの各クラブは近年、選手ごとに特色ある加入発表映像などを披露し、ファンの注目を集めている。そのため、仁川もストライカーの復帰を大々的にファンに伝えるべく、さまざまな発表方法を模索した。
こうして実際に行ったのが、写真でも動画でもなく“ライブ放送”での加入発表だ。
仁川は10日、「クラブ創設20周年及びACL初出場記念特集ライブ」と題してユーチューブでライブ放送を実施した。
とある飲食店内で行われたライブ放送では、チョン・ダルス代表取締役やイム・ジュンヨン戦力強化室長などが出演し、チャット欄に寄せられたファンのコメントとリアルタイムでコミュニケーションを行っていた。
すると放送の終盤、実際には仁川国際空港内の飲食店でライブを行っていたことが明らかに。そして、最後にムゴシャの空港到着現場を映し、復帰をサプライズで発表した。
空港に到着したムゴシャは、ポロシャツを脱いで中に着ていた仁川のホームユニホーム姿を披露すると、カメラに向かって満面の笑みでポーズを見せた。国内初の“空港オフィシャル”に、仁川のファンは熱い反応を寄せていた。
ムゴシャが復帰した仁川は現在、21試合終了時点で5勝9分7敗の勝ち点24とし、12チーム中9位としている。
シーズン前半戦では絶対的ストライカーの不在で得点力不足に悩まされてきたが、後半戦はムゴシャの復帰で巻き返しを期待できるようになった。
もっとも、神戸でほとんど試合に出場できなかっただけに、実戦感覚と体力については早急に本来のコンディションを取り戻さなければならない。
ムゴシャは仁川復帰に際し、「慣れた場所と人たち、そしてコーチ陣、チームメイトとともに、全員で一つになって後半戦で巻き返しを見せたい。私の復帰を待ってくれた最高の仁川ファンと市民に感謝している。チョ・ソンファン監督のモットーのように、人々に楽しさをもたらすサッカーがしたい。依然として仁川が強いということを証明する」と意気込みを伝えていた。
仁川は本日(12日)、アウェイの蔚山文殊(ウルサン・ムンス)サッカー競技場で蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)とのKリーグ1第22節を戦う。
16日にホームの仁川サッカー専用球場で行われる大田(テジョン)ハナシチズンとのKリーグ1第23節では、ムゴシャの入団式とサイン会が開催される予定だ。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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