結局、答えは攻撃面にある。
韓国Kリーグ1(1部)の全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータースは現在、2023年シーズン開幕から7試合を終えて2勝1分4敗の勝ち点7とし、12チーム中9位に沈んでいる。
7試合で決めたゴールはわずかに7得点。総得点数最下位の江原(カンウォン)FC(3得点)の次に少ない数字だ。一方の守備は8失点と決して悪くないだけに、攻守のバランスが良くない状況だ。
全北現代は元々攻撃に強みがあるチームであり、怒涛の勢いでゴールに迫るスタイルは「タッチゴ(ひたすら)・コンギョク(攻撃)」という意味で“タッコン・サッカー”とも呼ばれていた。その戦い方は伝統として受け継がれ、2017~2021年の5連覇含むKリーグ1最多9回の優勝を積み上げた。
ところが、今季は全北現代特有の破壊力が見られず、序盤から順位争いに苦労している。
各種指標を見てみると、攻撃面での不振が明らかに目立つ。シュート回数は計78回で全体8位であり、枠内シュート数も全体の37%にあたる29本のみ。0-1で4敗目を喫した直近の第7節水原(スウォン)FC戦でも、シュート数で9対16と相手が大きく上回った。
攻撃面で不振が続く原因は、敵陣で細かいプレーが行われないことにある。水原FC戦の一試合だけ見ても、キーパス数はわずかに4回。前後半の90分間で、22.5分に1回しかキーパスが成功しなかったという意味だ。
チャレンジングで決定的なチャンスを生み出すパスが少なければ、当然、シュートの機会創出にも苦労するしかない。
全北現代の攻撃陣は国内トップクラスではあるものの、メンバー構成や戦術などが上手く行かず、シナジー効果も十分に発揮できていない。選手は十分に多いだけに、まずは適切な組み合わせを見出すことが必要だが、第7節が終了しても確固たる武器と言えるコンビネーションは定着していない。
不振脱却にはキム・サンシク監督をはじめとするコーチ陣の覚醒が必要だ。ファンの応援ボイコットでチームを取り巻く雑音が騒々しいなかではあるが、選手たちが萎縮するのとは別に、戦術や戦略を通じてチームの競争力を高めてこそ、巻き返しを図ることができる。
指揮官やクラブの代表取締役にはファンからの辞任要求が相次いでいるが、結局のところ、これを乗り越えるためには結果と試合内容で証明しなければならない。
新加入の外国人選手たちの活躍ぶりも惜しい。
横浜F・マリノスからレンタル中の元日本代表MF天野純(31)は5試合1ゴール1アシストと気を吐いているが、元アルビレックス新潟、浦和レッズのブラジル人FWラファエル・シルバ(31)は出場5試合で1ゴールとまだパフォーマンスが物足りない。
何より、シルバと同じ新加入で序盤から出場機会を得ているブラジル人MFアンドレ・ルイス(25)は落第点に近い。多くのプレータイムを与えられているにもかかわらず、未だチームに溶け込めない様子を見せている。結局、水原FC戦ではベンチからも外れた。
負けている状況でも監督が投入をためらう選手であるならば、そもそもの獲得に疑問符を投じるしかない。
全北現代の絶対的ライバルで昨季Kリーグ1王者の蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)が、スウェーデン人MFグスタヴォ・ルドヴィグソン(29)を獲得して結果を得ているのとは明らかに対照的だ。
ルドヴィグソンは現在まで7試合5ゴール1アシストとし、得点ランキングで単独首位。チームもルドヴィグソンの活躍に支えられ、6勝1敗(勝ち点18)で首位を走っている。これを見るに、全北現代のスカウトシステムに問題があると言わざるを得ない。
もっとも、Kリーグ1はまだシーズンの序盤だ。すでに蔚山現代との勝ち点差は11ポイントも離れてしまっているが、まだ優勝の可能性が途絶えたわけではない。
昨季にはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝で浦和レッズとPK戦までもつれる死闘も演じた全北現代。再び勢いを取り戻すためにも、本来の強みである攻撃力を生かすための方法を探さなければならない。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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