「我々は(日本に)はるか昔の時点から負けていた」
韓国Kリーグ1(1部)の水原(スウォン)FCでGM(ゼネラルマネージャー)を務める元サッカー韓国代表のチェ・スンホ氏が、日本と格差が広がりつつある韓国サッカー界に警鐘を鳴らした。
3月21日、「DENSO CUP SOCCER 第21回大学日韓(韓日)定期戦」が行われた浦和駒場スタジアムで、チェ・スンホ氏が韓国報道陣の取材に応じた。
チェ・スンホ氏は1980年代~1990年代前半に浦項(ポハン)製鉄アトムズ(現・浦項スティーラーズ)やラッキー金星黄牛(クムソン・ファンソ/FCソウルの前身)などで活躍した韓国サッカー界のレジェンドだ。
韓国代表でも国際Aマッチ通算96試合30ゴールを記録。特に日本戦では通算10試合に出場して8勝1分1敗で、自身も2ゴールを決めていることから、「日本キラー」「“韓日戦”の男」などと呼ばれていた。
引退後は指導者に転身して浦項や江原(カンウォン)FCなどの監督を務めた後、2023年シーズンから水原FCのGMを務めている。
そんなチェ・スンホ氏は、今回来日した経緯について「(GMを務める水原FCが)市民クラブであるため、(ホームタウンの)水原市圏域の大学選手をチェックするべく試合を訪れた。また、(水原FCが)女子チームも運営しているため、女子選手もチェックしたかった」と伝えた。
今年の「DENSO CUP」は従来のような男子選手間の定期戦だけでなく、「第1回大学日韓(韓日)新人戦」「第1回大学女子日韓(韓日)定期戦」も初開催し、交流の幅を広げた。
その代わり、両国のU-23年代の格差をさらに思い知らされた。20日に行われた新人戦では、韓国代表として出場した仁川(インチョン)大学が筑波大学イン1-5で大敗。女子日韓戦では前後半90分を1-1で引き分けるも、延長戦に3失点を喫し、1-4で敗れた。21日の男子日韓戦も0-1で敗戦となった。
チェ・スンホ氏は「女子チームにはとても驚かされた」と、世界的に女子サッカー強豪国で知られる日本相手に善戦した韓国を称賛。
それとともに、「(過去に副会長を務めた)サッカー協会にいたときから、女子選手は若い時点からしっかり練習を積めば男子より競争力が良くなると思っていた。しかし、実質的には関心がなかった。すべてがピラミッド式にならなければならないのに、反対になってしまっている。それでは希望がない」と、韓国国内の劣悪な女子サッカーの環境を嘆いた。
また、「韓国の選手たちは日本よりも前後半で自信を持って戦えていた。柔軟でディテールがあった。国内の女子チームも男子と同水準のシステムを整えられれば、さらに良くなるはずだ」と期待を込めた。
一方、男子U-23年代の競争力については、現実的な対策を早急に講じる必要があるとチェ・スンホ氏は指摘する。
「我々は全体として、“意欲を持ってプレーする”ということについては上手だ。ただ、一瞬の細かさが足りない。日本は底辺が広いとはいえ、サッカーはそれだけでできるものではない。すべてを細かく指導することで可能になる」
また、韓国サッカー協会(KFA)が主導するU-22やU-21ルールなどの低年齢政策、大学入試制度の変化などで大学サッカーの競争力が落ち、選手たちが早期にキャリアを終えてしまう現象についても見解を述べた。
「リーダーが積極的に乗り出さなければならない。(低年齢政策を)理解させ、議論にならないようにするか、大学サッカー部の意見を聞き入れるしかないだろう。現場は制度のせいだけにしてはならない。より良い方法を見つけなければならない。成果だけに重点を置いてはならない」
「DENSO CUP」はもちろん、近年の国際Aマッチの結果からもわかるように、日本はA代表から世代別代表まですべてが上昇曲線を描いている。一方、韓国は各世代の“日韓戦”でことごとく日本に敗れ、その差はさらに開いている。
こうした現状を残念がったチェ・スンホ氏は、「30年前から予見していた。我々が(目先の)スケジュールに集中していたとき、日本はプランニングを行っていた。はるか昔の時点から負けていたのだ。韓国の人々だけが知らなかった。大きな“重病”だったはずなのに、ただの“風邪”としか思ってこなかった」と伝えていた。
(構成=ピッチコミュニケーションズ)
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