「弟はどんな性格ですか?」という質問に、イ・ジェソン(27、ホルシュタイン・キール)の兄であるイ・ジェヒョクさんはしばらく考えたのち、「落ち着いている」と口にした。
また、これにまつわるエピソードを教えてくれた。
【インタビュー】ドイツに移籍して1年を過ごした韓国代表MFイ・ジェソン「幸せだった」
「ドイツに着くやいなや、ジェソンは日記に欧州で成し遂げたい夢を一つひとつ綴っていきました。多くを犠牲にして欧州へと渡っただけに、自分が決めた道を再確認し、気持ちを引き締めたのです。それがすべて成し遂げられたわけではないですが、その目標に向かって今も一歩ずつ進んでいます。兄だからそういっているわけではなく、彼は本当に努力する選手なのです」
Kリーグでプレーしていた頃、イ・ジェソンは何も困ることがなかった。
プロデビュー前からアンダー各代表に着実に招集されるほどの実力を持ち、2014年のプロデビュー以後は“強豪”全北現代モータースで主力としてプレーすると、3度のリーグ優勝に貢献、MVPにも選ばれた。
2018年ロシアW杯出場に続き、現在A代表でも定着しているイ・ジェソン。そんな彼が自身の移籍金を下げてまで、ドイツ2部リーグ(2.ブンデスリーガ)へと移籍した理由は、ただ1つしかない。
それは、自身が熱望するUEFAチャンピオンズリーグへの出場だ。
困難の多い厳しい挑戦ではあったが、落ち着いた性格のイ・ジェソンが下した決断に家族も反対しなかった。その中でも兄イ・ジェヒョクさんは特に弟を熱心に支え、イ・ジェソンが早く現地にできるよう尽力し、ドイツにも弟とともに渡った。
ドイツ最北端に位置するキールは、この時期から冬の風が吹いてくる。あまり寒がりではないイ・ジェソンにとって、自身の考えが変わった気候であった。グラウンドに出れば、芝を踏む感覚が違う。じめじめした雨の天気が続く中、クラブは選手たちにサプリメントの服用を義務付けた。
現地の料理が合わないと見るや、兄は韓国の料理を求めあちこちを回った。イ・ジェソンにとって、初めての欧州生活は試行錯誤の日々が続いた。ここ1年間は毎週ドイツ語のレッスンに励み、今ではネイティブスピーカーとも意志疎通できるレベルにまで上達した。痛みを抱えたまま臨んだ欧州最初のシーズンを終え、今夏は十分な休息を取りつつもコンディションを100%にまで仕上げてきた。
渡独後2シーズンの成績表が、それを証明している。
昨季は31試合に出場し、5得点8アシストと好調なデビューシーズンを送った。だが、今季はまだ7試合の出場にも関わらず、すでに4得点と昨季を上回るペースで得点を重ね、得点ランキングでも1位タイに立っている。
もともと中央とサイドをこなし、守備にも積極的な選手だったが、キールでは最前線で起用されてマルチゴールを挙げたこともあってか、本職以外にもさまざまなポジションで起用されている。
成績不振で監督が交代された中でも、その立場は揺るがない。欧州2年目で新たな全盛期を迎えようとしているイ・ジェソンは、“1部昇格”という次なる目標を見据えている。
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