韓国では非難もギリシャでスター扱い。いじめ問題で物議の女子バレー選手、海外移籍が“神の一手”に

学生時代のいじめをめぐる議論で韓国バレーボール界を混乱の渦に巻き込んだ末、世論から逃げるかのようにギリシャリーグへの移籍を選んだイ・ダヨン(25、PAOKテッサロニキ)が、現地で“看板スター”級の扱いを受けている。

【写真】イ・ダヨン、“モデル顔負け”のキス顔

イ・ダヨンは去る2月17日(日本時間)、ミクラ国立体育館で行われたA1リーグのパナシナイコスとのホームゲームで先発出場した際、予期せぬケガを負った。

当時、第1~2セットで縦横無尽に活躍を見せていたイ・ダヨンは第3セット途中、味方リベロがレシーブしたボールを何とか生かそうと飛び込んだ際、支柱に体を強くぶつけた。

直後、イ・ダヨンは辛うじて起き上がって見せたが、強打した腰の部分を右手で抑えて痛みを訴えていた。結局、イ・ダヨンはチームの医療スタッフに助けられ、診断のため会場を離れた。

この試合でPAOKはセットカウント3-0で完勝した。ただ、チーム公式SNSに掲載された試合結果の投稿には、負傷交代したイ・ダヨンを心配するコメントで埋め尽くされた。

「イ・ダヨンが重傷でないことを祈る」「イ・ダヨンの状態が気になる」「イ・ダヨンの早期復帰を願う」など、イ・ダヨンと関連した英語やギリシャ語のコメントが60件以上寄せられていたのだ。このことからも、チーム内はもちろん、ギリシャ現地におけるイ・ダヨンの立場を伺うことができた。

(写真提供=KOVO)韓国時代のイ・ダヨン

イ・ダヨンは翌日、自身のSNSを通じてファンの心配に自ら答えた。

検査の結果、負傷離脱を回避したというイ・ダヨンは、「私は大丈夫。皆さんの心からの心配に感謝したい。これは私にとって大きな意味があること」と現在の状態を明らかにした。すると、この投稿には4800件を超える「いいね!」と、約600件のコメントが寄せられていた。

悪質ないじめ加害で物議醸した“バレー姉妹”

そんなイ・ダヨンも、元々は若くして韓国プロバレーのVリーグ女子部、ひいては韓国女子バレー界を代表する名セッターと呼ばれた選手だった。加えて、優れたルックスを備えていたことから、双子の姉イ・ジェヨン(25、PAOKテッサロニキ)とともに国内で絶大な人気を誇っていた。

ところが、Vリーグ女子部の興国生命ピンクスパイダーズに在籍していた昨年2月、イ・ジェヨンとともに、学生時代にいじめの加害者だった疑惑が浮上。

ネット上で行われた暴露ではいじめの内容も伝えられた。それも「一緒に宿舎を利用した際、“任せた仕事をしなかった”という理由でナイフで脅迫された」「“汚いから”、“臭いから”と、隣に来るなと言われた」「事あるごとにお金を取られ、腹をつねられたり、口を叩いたり、集められて拳で頭を殴られたりした」など、どれも悪質なものだった。

2人は疑惑浮上後、自身のSNSを通じて直ちに謝罪文を発表。ただ、興国生命から無期限の出場停止処分を下され、韓国バレーボール協会からも代表資格をはく奪されると、新シーズン前にフリーとなり興国生命を退団。

韓国でのプレーが事実上閉ざされた2人は、国際バレーボール連盟(FIVB)から国際移籍同意書を発給してもらった後、昨年10月にギリシャのPAOKテッサロニキに加入していた。

イ・ジェヨン(左)とイ・ダヨン(右)

いじめ問題は“忘れ去られた過去”に

韓国国内での冷たい視線を背にギリシャへ渡ったイ・ダヨンだが、PAOK加入からまだ半年も経っていないにもかかわらず、現地ではすでに看板スターとしての位置を固めている。

いじめ問題以前の人気の要因だったルックスの良さに加え、元々韓国でもトップレベルの実力を誇っていたこともあり、韓国Vリーグよりレベルが劣るとされるギリシャリーグでは一人跳び抜けたパフォーマンスで活躍している模様だ。

PAOKも各種マーケティングでイ・ダヨンを全面的に起用し、多くの恩恵を受けている。イ・ダヨン加入後、PAOKのYouTubeチャンネルには有料メンバーシップも誕生したが、こちらも熱い反応を見せているという。

ギリシャでのイ・ダヨン人気は個人SNSへの関心にもつながった。去る2月7日にインスタグラムで再び個人アカウントを開設したイ・ダヨンは、約2週間でフォロワー数1万人を突破。PAOKも公式SNSでイ・ダヨンのSNS開設を取り上げるほどで、いかにイ・ダヨンの認知度と人気が高いかがわかる。

Vリーグ時代にSNSをやっていた当時は写真の無断盗用、先輩選手を狙撃した批難、秘密結婚などさまざまな問題で物議を醸したイ・ダヨンだが、ギリシャ現地で始めたSNSではそのような過去があったことも感じられないほどだ。

韓国国内のバレーボール界を荒らしに荒らした末、被害者への謝罪などもないままギリシャに“逃避”したイ・ダヨン。彼女にとって、批判が避けられない韓国を去った決断は“神の一手”となったわけだ。

韓国では地に堕ちたスターとなったイ・ダヨンも、ギリシャでは圧倒的な人気を誇る看板スターの一人になった。

(記事提供=OSEN)

◇イ・ダヨン プロフィール

1996年10月15日生まれ。韓国・全羅北道出身。身長180cm。韓国のプロバレーボール選手で、元韓国代表。双子の姉イ・ジェヨンもバレー選手で、2人ともギリシャのPAOKテッサロニキに所属している。実父は陸上競技(ハンマー投げ)韓国元代表のイ・ジュヒョン、実母はソウルオリンピック代表セッターのキム・ギョンフィというサラブレッド家系。2014年のプロデビューから2021年1月まで韓国国内で活躍していたが、学生時代のいじめ発覚で物議を醸し、無期限出場停止と代表資格はく奪処分を受けた。その後、活躍の場を求め、2021年秋からギリシャでプレーしている。

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