予想通りというべきか、懸念通りというべきか。韓国Kリーグ2(2部)の自動昇格枠は金泉尚武(キムチョン・サンム)のもとに渡った。
10月17日のKリーグ2第34節で勝利したことにより、金泉尚武は2試合を残して1部昇格を決めた。2位のFC安養(アニャン)を8ポイント差で離す余裕ある優勝だった。
国軍体育部隊傘下のサッカーチームであり、兵役義務がある有能なサッカー選手の受け皿でもある金泉尚武。
昨シーズンをもってホームタウンをそれまでの尚州(サンジュ)から金泉に移したことにより、過去最高成績の1部4位という結果を残したにもかかわらず、韓国プロサッカー連盟の規定に基づき2部へと降格させられた。それでも今回、わずか1シーズンで1部復帰を果たした。
金泉尚武は「Kリーグ2の生態系の破壊種」と呼ばれた。昨季1部の上位チームであるうえ、今年は韓国代表に4選手を派遣するなど、優れた選手を数多くそろえているからだ。
元北海道コンサドーレ札幌のGKク・ソンユン(27)、元サガン鳥栖、鹿島アントラーズのDFチョン・スンヒョン(27)、元FC東京、アビスパ福岡のMFユ・インス(26)といった元Jリーガーをはじめ、韓国代表に選ばれているFWチョ・ギュソン(23)やDFパク・ジス(27)。
ほかにも、韓国代表予備メンバーのMFコ・スンボム(27)、2016年リオ五輪メンバーのFWパク・ドンジン(26)とDFシム・サンミン(28)、さらには世代別代表経験者のMFカン・ジフン(24)、MFハン・チャンヒ(24)、DFキム・ヨンファン(28)など、すでに1部での活躍が知られている選手もいる。これにはクラブ関係者の間で公平性をめぐる議論が出るのも当然だ。
韓国サッカー界では金泉尚武の昇格を歓迎しない声が多い。
公正性をめぐる問題はもちろん、入隊・除隊の関係で選手構成が変わり続けるため、金泉尚武のファン層は薄く人気も相対的に少ない。それだけに、興行面でも大きく役立たないという見方も存在している。
実際、首都圏に本拠地を置くFC安養や、企業クラブに転換した大田(テジョン)ハナシチズンなどの昇格を望むサッカーファンは多い。注目度で言えばこれらのクラブの方が高く、話題性でもはるかに優れているのが事実だ。
このため、他クラブが金泉尚武を囲んで牽制する構図が作られている。といっても、金泉尚武は正々堂々と競争に挑んで優勝したのだから、これについて外部があれこれ言うことはできない。
かといって、金泉尚武の昇格を制度として制限することは難しい。
仮に韓国プロサッカー連盟が金泉尚武の1部昇格を禁止すれば、チームを受け入れてくれるホームタウンはいなくなるだろう。プロサッカーチームを運営しているにもかかわらず、1部に昇格するチャンスがないとなれば、決して少なくない予算を投資する理由がないからだ。
韓国プロサッカー連盟のチョ・ヨンサン事務総長も、「プロサッカーチーム誘致の意思があるいくつかの自治体と会ってみたが、1部昇格制限を“中身のない果物”と見る視線が強い。現実的にそうした契約条件を受け入れる自治体を探すことは難しい」と明かす。
一部では金泉尚武をセミプロのK3リーグに縛る案も提起している。しかし、代表クラスの選手がパフォーマンスをある程度維持するためには、2部であっても最低限プロの舞台でプレーしなければならないというのがサッカー界の一般的な意見だ。
金泉尚武の存在を否定しているわけではない。もし金泉尚武というチームが存在しなければ、選手は兵役のために一時的にキャリアを断絶しなければならない。彼らの古巣となるクラブとしても、全盛期の選手を何の保障もなしに手放さなければならないリスクを抱える。
韓国のサッカー選手にとって、選手生命を続けるためにも金泉尚武はなくてはならない組織だ。これが、金泉尚武が常に抱える“明”と“暗”である。
ただ、韓国プロサッカー連盟は長期的な視点で、金泉尚武の昇格を制限しなければならない意見に重きを置いている。最初から公正な競争ではないうえ、クラブをめぐってさまざまな議論が浮上しているだけに、金泉と尚武のホームタウン契約が終了した後は、制度としてメスを入れなければならないという計画だ。
2部にとどまり続けることに同意する自治体を探すか、韓国プロサッカー連盟自ら尚武を運営する方法も検討されているという。
韓国プロサッカー連盟のチョ事務総長は「まだ構想段階ではあるが、尚武の1部進出を阻止する方向性は維持する考えだ。時期的にいつになるかわからないが、可能性を開いて方法を講じる」と述べた。
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