地獄のイラン遠征を乗り越える解決策はあるのだろうか。
パウロ・ベント監督率いる韓国代表は9月27日、10月に行われる2022年カタールW杯アジア最終予選2試合に臨むメンバー27人を発表した。
韓国代表は来る10月7日、ホームの安山(アンサン)ワースタジアムでシリア代表と対戦した後、12日にアウェーのアザディ・スタジアムでイラン代表と対戦する。
9月から始まった最終予選で、韓国代表は不安なスタートを切った。
初戦のイラク代表戦は拙戦の末に0-0のドロー。格下と言えるホームでまともな攻撃ができず、相手の密集守備を攻略することができなかった。中東勢特有の“ベッドサッカー(試合中すぐに倒れてあからさまな時間稼ぎをすること)”が以前と比べて目立たなかったにもかかわらず、最後までゴールが決まらないもどかしい90分を過ごした。
第2戦ではレバノン代表に1-0で勝利できたものの、ホームでの序盤2試合で勝ち点4に終わったことは満足できる結果とは言えないだろう。
内容が悪かっただけに、ベント監督の選手選抜に疑問が生じた。ベント監督は攻撃陣にKリーグ2(2部)でプレーするFWチョ・ギュソン(23、金泉尚武)を初招集し、守備陣では5人の選手が1分も試合に出場しなかった。結果的に攻撃面で課題が残っただけに、10月の最終予選ではある程度変化が加わると予想されていた。
しかし、ベント監督は9月の招集メンバーをベースにした。FW登録は前回と変わらずファン・ウィジョ(29、ボルドー)とチョ・ギュソンの2人だけだ。
「ソン・フンミンやファン・ヒチャン、ナ・サンホ、イ・ドンジュン、ソン・ミンギュも前線で起用できる。1トップでのプレーが可能な選手もいる。ほかのシステムでも活用できる」というのがベント監督の説明だが、彼は韓国代表の新指揮官に就任後、フォーメーションに大きな変化を与えたことがない。
ベント監督はほぼ毎回の試合で、1トップを基調とする4-2-3-1や4-1-4-1のフォーメーションを用いている。10月に入って急遽2トップを採用する可能性は低い。冷静に考えれば、彼の言葉に矛盾があるという意味だ。
MFイ・ガンイン(20、マジョルカ)を招集しなかったことにも議論の余地がある。世界最高の舞台と言えるラ・リーガでプレーする選手にも関わらず、9月に続き今回もメンバーから外した。
その代わり、センターバックとサイドバックをそれぞれ5人ずつ、計10人招集する方式は固守した。加えて、今回はGKも4人だ。前線より守備陣の厚みを維持、あるいは強化した。
ベント監督は「バランスを考慮した決定」と簡単な回答をしたが、今回も9月と同程度の攻撃に終始するのであれば、攻撃に変化をもたらせるオプションとなり得るイ・ガンインを外したことへの批判は避けられないだろう。
10月の最終予選は韓国代表にとって最大の山場だ。というのも、地獄のイラン遠征が待ち受けているからだ。
韓国代表は元々、イラン代表にめっぽう弱い。通算対戦成績で9勝9分13敗と負け越しており、2011年にカタールで行われたアジアカップ準々決勝で勝利したのを最後に、直近10年間で2分4敗。加えて、イラン開催の試合では通算2分5敗と一度も勝利したことがない。
韓国代表にとってイラン代表は恐怖の対象でしかないが、ベント監督はイラン代表戦に対する明確な青写真は示さなかった。「初戦のシリア戦に集中した後、イラン戦について考えるつもりだ」と、まずはホームでのシリア戦に集中する意志を示した。
実際にはイラン代表を分析して準備するだろうが、かといってほかの試合よりも大きな比重を置くわけではない。ベント監督は10月の最終予選2試合の目標を「勝ち点6」と定めた。つまり、イラン遠征でも必ず勝利するという覚悟だ。
問題は試合に敗れたときのシナリオだ。いくらシリア代表に勝ったとしても、イラン代表に負けて帰国するようではベント監督の立場はますます狭まるしかない。今すぐではないとはいえ、11月の試合内容や結果によってはその座も危うくなる恐れがある。
上手く行けば「底力を発揮した」となり、そうでなければ「固執した」となる。結果によってベント監督を見る視線や評価、立場は大きく変わる。ただひたすら“我が道”を行くベント監督は、10月の最終予選でどのような結果をもたらすだろうか。
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