物議を醸した張本人は沈黙したまま、球団と監督が代わりに謝罪をしている。主体の抜けた謝罪に何の意味があるのだろうか。
韓国プロ野球KBOリーグは発足以来最大の危機を迎えている。相次ぐ事件と事故によって、ファンの心はすでに底をついている状況だ。東京五輪でメダルを獲得できていればまた変わったかもしれないが、その希望も消えた。
ファンの怒りが冷めやらぬなか、物議が収まる様子は未だ見えない。そして、問題を起こした選手たち本人による釈明や謝罪もない。ときには虚偽の供述が先行することもある。韓国球界では今、愚かな行動が繰り返されている。
“東京惨事”ではカン・ベクホ(22)に厳しい目線が向けられた。
去る8月7日、横浜スタジアムで行われた東京五輪野球3位決定戦のドミニカ共和国戦。当時、8回表に韓国が逆転を許した直後、ダッグアウトで口から出したガムを噛むカン・ベクホの姿が中継カメラにとらえられた。
これにはKBSの中継放送で解説を務めた元メジャーリーガーのパク・チャンホ氏も、「カン・ベクホの姿が少し見えたが、ああしてはいけない。負けたとしても、見せてはいけない姿を見せてはいけない。引き続き“ファイト”を叫ばなければならない」と、カン・ベクホの態度を叱咤した。そのほかにも、多くの球界関係者が批判の声を高めた。
その後、カン・ベクホが所属するKTウィズのイ・ガンチョル監督は、「本人が一番大変だと思う。カン・ベクホの態度について、所属球団の監督として謝罪する」と頭を下げた。
続けて、「カン・ベクホとも話を交わした。苦労している様子だった。言い訳を言うならば、思いがけずあのような表情になることがある。(試合を放棄したという)そのような考えではなかったはずだ。本当に申し訳ない。今後、こうしたことが起きないように注意していきたい」とし、再び謝罪した。
キウム・ヒーローズのホン・ウォンギ監督も、ソン・ウヒョン(24)の飲酒運転事故について惨憺たる気持ちを伝えた。
ソン・ウヒョンは去る8月8日、知人と酒を飲んだ後に車を運転していたところを警察に摘発された。当時、ソン・ウヒョンの血中アルコール濃度は免許取り消しレベル(0.08%以上)だったという。
これに先立ち、ハン・ヒョンヒ(28)とアン・ウジン(21)が遠征先で飲み会を開き、新型コロナウイルス感染症防疫違反で処分を受けていた。それだけに、ソン・ウヒョンの飲酒運転はさらに大きな衝撃をもたらした。
これらの不祥事について、ホン監督は「申し訳ない。わずか数日前にも選手の不祥事があり、再発防止を約束して謝罪した。にもかかわらず、またしてもこのようなことが発生し、多くの人々に心配をかけた。チームの首長として、選手管理に対する責任からは逃れられない」と述べた。
衝撃と失望を与えたソン・ウヒョンに対し、球団は容赦しなかった。キウムは11日、韓国野球委員会(KBO)にウェイバー公示を要請した。ホン監督は「期待していた選手だ。(将来を)嘱望された選手だっただけに、残念な気持ちでいっぱいだ」と暗い表情で伝えた。
このように、監督はいつも選手の過ちに対して「申し訳ない」と述べ、深々と頭を下げる。そして、再発防止を約束する。ところが、当の選手たちはこれらに対する立場を明らかにしない。
今回も、ハン・ヒョンヒだけが韓国代表を辞退する旨の自筆謝罪文を掲示しただけで、残りの選手たちは球団と監督の後ろに隠れて事態を見守った。
こうした光景は他球団でもみられた。NCダイノスも、パク・ソクミン(36)だけが説明に近い謝罪文を発表した後、ほかに問題を起こした当事者は姿を消した。ハンファ・イーグルスも、球団が先頭に立って事態を収拾したが、選手から一言も謝罪の言葉はなかった。
事件や事故を起こした選手はいつもそうだ。球団と監督の後ろに隠れるばかりだ。そして、復帰時期が決まれば何食わぬ顔でまた選手生活を続けるだろう。これが今回も目の前で繰り広げられただけに、ファンの憤りはまだ収まりそうにない。
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