来る7月23日の開会式に先立ち、本日(21日)から競技がスタートした東京五輪。今大会は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、全競技の96%が無観客で行われる。
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そんななか、本紙『スポーツソウル』からはキム・ヨンイル記者が取材のために韓国から東京入りをしている。
第1弾のルポでは、多くのオリンピック関係者が苦労を強いられた複雑な入国手続きと日本の「行き過ぎた完璧主義」を伝えた。今回は、ホテル到着後の隔離生活で直面した「コンビニ利用15分」の問題についてお届けしよう。
「コンビニ利用は15分。守れなかった場合は組織委員会に通報します」
複雑な入国手続きを経て東京五輪の現場にたどり着いたオリンピック関係者は、最初の2週間(14日間)は統制された生活をしなければならない。
これに先立ち、東京五輪・パラリンピック組織委員会(以下、組織委)が提出したアクティビティプランに明示された場所のみ使用できるが、最初の3日間は自主隔離をしなければならない。入国日を“0日”と示すため、実質的には4日間の隔離だ。
予約したメディアホテルで隔離をすることになるが、組織委が配慮したのは「コンビニ利用15分」だ。隔離中の関係者の食事を組織委がすべて用意できないため、食事だけは自主的に解決するよう求めた。外部の食堂などは訪問できず、ホテル付近にあるコンビニで15分以内に買い物を済ませる条件で利用するようにしたのだ。
組織委が事前に配布した案内書を見ると、「コンビニで買う品物以外は触れず、できれだけ早く購入して出てくること」と書かれている。組織委は逸脱行為を防ぐため、携帯電話のGPS機能をオンにするようにしている。
「コンビニ利用15分」は思わず笑ってしまうようなシステムだ。まず、ホテルロビーの出入り口前に検疫保安要員が交代勤務で24時間常駐する。出入口を出る前、外出記録紙に手書きで部屋番号と出発時刻を記入。その後、コンビニを利用してホテルに戻った際、到着時刻を記入する方式だ。
それぞれが泊まるホテルによって、自然と“15分”の利用の質は変わる。
記者が宿泊する東京・西葛西のとあるホテルは、すぐ隣にコンビニがある。ゆっくり歩いたとしても20秒で到着する。7月20日(隔離2日目、入国日除く)時点で、ゆっくりコンビニで買い物を楽しんだとしても、10分程度の時間しかかからなかった。
しかし、新宿や日本橋などのホテルを利用する取材陣は、歩いて3~4分の距離にコンビニがある場合が多い。羽田空港側にあるメディアホテルを利用する取材陣は、ホテルとコンビニ間の移動距離だけで往復10分もかかるという。
その取材陣は「空港と隣接しているホテルを利用しているが、コンビニに行く場合は空港の地下から移動しなければならない。15分以内に利用しようとすれば、実際に品物を選ぶ時間は3~4分しかなかった」とし、「コンビニで決済をした後、走ってホテルに戻らないといけないので大変だ」と失笑していた。
「コンビニ利用15分」を守ることができなければどうなるのだろうか。記者が泊まるホテルの検疫保安要員に聞いてみると、彼は自分の足元の紙袋に入った電話機を指差し、「これで組織委に通報する」と無関心そうに述べた。
15分を超えると、1回目は警告、2回目はADカード返却と同時に追放措置が下されるという。「15分は安全で、16分は危険なのか」という不満の声が出る理由だ。
だからか、一部関係者はコンビニに行かず食品配達サービスの「ウーバーイーツ」を利用している。食べ物はもちろん、コーヒーや酒類などすべてがホテルのロビーに配達されるが、組織委はこれを制止していない。
そんななか「コンビニ利用15分」が話題になったことで否定的な視線も現れている。
19日に日本メディアが報じたところによると、日本政府は組織委に「15分の外出許可」を見直すよう求めたという。
隔離期間のコンビニへの出入りは、事実上動線を自由にさせることと同様だとし、隔離の実効性を指摘したのだ。特に、コンビニとホテルの移動間にほかの宿泊客と動線が重なることによる“新型コロナウイルス感染”のリスクも懸念した。
だからといって、オリンピック関係者の食事に関する対策案を出したわけではない。
ふとこの瞬間、「早く隔離を終えよう」という考えが頭に浮かんだ。
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