韓国卓球協会が去る5月17日、記者陣に送った「ユ・スンミン会長、東京五輪代表メダル報奨金」関連報道には驚きの声が多く挙がった。
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内容は、国際オリンピック委員会(IOC)委員も務めるユ・スンミン会長が卓球韓国代表の善戦と士気高揚のため、史上最大規模のメダル報奨金支給を発表したというものだ。
報奨金は男女団体戦で金メダル5億ウォン(日本円=約5000万円)、銀メダル2億ウォン(約2000万円)、銅メダル1億ウォン(約1000万円)と、予想をはるかに超える巨額。男女シングルスや混合ダブルスでは、金メダル1億ウォン、銀メダル5000万ウォン(約500万円)、銅メダル3000万ウォン(約300万円)だった。
10年以上にわたって心強い後援者の役割を果たしてきたチョ・ヤンホ前会長の突然の死去で、大韓航空の後援(年間10億ウォン=約1億円)が途絶えた後、今年からとある中小企業と後援契約を結び、年間5億ウォンをしてもらうことが決まった韓国卓球協会。
納得がいかなかったのは、韓国卓球協会が何の自信を持ってこれほど巨額の報奨金を出せたのかだ。
「どうせ取れない金メダルだから、最初から10億ウォンをかけているのか…」。卓球界のとある指導者に話を聞くと、こんな答えが返ってきた。特に、団体戦の金メダル5億ウォンはあまりに巨額なだけに、ほかの種目と公平性に欠いて混乱も起こしかねない。テニス界のある地域協会会長も、「卓球協会の発表した巨額の報奨金を見て驚いた」と語っている。
もう1つ納得がいかないのは、肝心な“男子シングルスの選手選抜”に関する説明を卓球協会側がまともにせず、報道資料の裏側にこっそり忍ばせた事実だ。
卓球協会は最近、競技力向上委員会を開き、東京五輪出場が確定した選手のうち誰を男女シングルスに入れるか決めたという。そのため、同委員会委員長は「近いうちにこれを発表する」とまで述べていた。
ところが、同日の報道資料にこれに関する説明はまったくなかった。資料の最後に書かれていた種目別選手リストは以下の通りだ。
団体戦(男子):チャン・ウジン(25、ミレアセット証券)、チョン・ヨンシク(29、ミレアセット証券)、イ・サンス(30、サムスン生命)
団体戦(女子):チョン・ジヒ(28、ポスコエナジー)、チェ・ヒョージュ(22、サムスン生命)、シン・ユビン(16、大韓航空)
シングルス(男子):チャン・ウジン、チョン・ヨンシク
シングルス(女子):チョン・ジヒ、シン・ユビン
混合ダブルス:イ・サンス、チョン・ジヒ
これについて卓球関係者に聞くと、「(選手選抜問題を)うやむやにしようという意図だ」と指摘した。
男子シングルスの場合、東京五輪代表選抜戦で1位の選手が除外されるなど、卓球界の内部ではすでに不公正性が問われている。1位選手が所属するチームの指導者は協会に引き続き問題提起をしていたが、結局受け入れられることはなかった。
当初、代表選抜戦で1~2位に入れなかった選手が、「国際経験豊富でランキングも高い」という理由で推薦選手として東京五輪に出場することになり、議論を呼んだ。ところが、その選手は団体戦はもちろん男子シングルス出場権まで手に入れた。女子代表では選抜戦1位のシン・ユビンがシングルス出場権を得たこととも相反する。
男子代表選抜戦2位のアン・ジェヒョン(21、サムスン生命)と1位のイ・サンスに何の罪があるというのか。なお、2人ともサムスン生命所属の選手だ。
卓球関係者や関連選手の所属チームは、公に問題提起をできずにいる。オリンピック金メダリストでまだ38歳と若いユ・スンミン会長が意欲的に協会を引っ張っている状況で、ともすれば悪影響を及ぼしかねないという懸念のためだ。
ただ、とある指導者は「選手選抜は客観性があるものでなければならない。人権、人権と叫びながらそうではいけない」と皮肉った。さらには、「イ・サンスが男子シングルスに選ばれない理由はない。これは正常ではない」と続けた。
問題は、会長の下で幅を利かせるとある権力者の行き過ぎた“身内の世話”だ。これはすでに卓球界で指摘されていることだが、未だ改善の兆しはない。“公正性”が求められるこのご時世、韓国卓球協会は一体何の“小細工”を弄しているというのか。
去る16日に東京五輪出場選手リストを確定、発表した中国卓球協会は、「意見収集と集団的意思決定」を強調した。特に、協会会長や関係者が公開の場でマスコミに名簿や選定理由を詳しく説明し、元老やジャン・イーニンなど卓球界のレジェンドとも映像でつながり、意見を聞き入れる姿勢を見せていた。
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