米メジャーリーグ、タンパベイ・レイズのケビン・キャッシュ監督は、昨シーズンのワールドシリーズ第6戦で先発投手のブレイク・スネル(現サンディエゴ・パドレス)を6回に交代させたことで大きな非難を浴びた。対戦相手だったロサンゼルス・ドジャースのファンは、「ワールドシリーズ優勝の立役者はキャッシュ監督だった」と皮肉っているほどだ。
当時、スネルは6回の交代まで、5.1イニングを2被安打、9奪三振と好投していた。にもかかわらず交代させ敗北したのだから、当然その余波は避けられない。
しかし、キャッシュ監督は記録を根拠にスネルを交替したとしている。スネルは相手打線との3巡目の対戦で失点の危機を免れなかった。スネルは、MLB史上、先発投手として歴代最少イニング(180.2イニング)でサイ・ヤング賞を受賞した投手で、2018年に21勝5敗、防御率1.89の数字を残している。
スネルの通算成績からもはっきりとわかる。打者との初対戦時の被安打率は0.205で、三振は平均3.64個を奪っている。しかし2巡目には被安打率0.235、三振は2.32に落ちる。そして3巡目の被安打率は0.247、三振は2.04となる。この数字が示す通り、2巡目、3巡目と回が進むにつれて被安打率は高くなり、三振の割合も落ちていることがわかる。
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そして去る5月6日(日本時間)、セントルイス・カージナルスのキム・グァンヒョンとテキサス・レンジャーズのヤン・ヒョンジョン、2人の韓国人投手が先発登板。キム・グァンヒョンは4イニングを2被安打、3与四球、2奪三振、1失点を記録し、先発デビューをはたしたヤン・ヒョンジョンは3.1イニングで4被安打、1与四球、8奪三振、1失点の素晴らしい成績でマウンドを降りた。
しかし両投手は偶然にも4回に無死満塁の危機を迎えた。このピンチをキム・グァンヒョンは1失点で切り抜け、ヤン・ヒョンジョンは後続のリリーフ投手と交代して無失点で危機を乗り切った。
2人の韓国人投手が同じタイミングでピンチを迎えたことは偶然の一致だったのだろうか。これはほかならぬ、前述したスネルのように2巡目の相手打線を相手するのが難しくなったからだ。
まずヤン・ヒョンジョンの場合、三振を8個も取った投手を早めに交替するということは、韓国プロ野球では異例のことだ。レンジャーズのクリス・ウッドワード監督は、ヤン・ヒョンジョンに代わって左腕のジョン・キングをリリーフとして送り出した。監督としては左打者のマックス・ケプラーとジョン・キングが初対戦だったので、はるかに有利だと判断したためだ。この采配は結果的にケプラーを投手ゴロで抑え、後続打者も凡打で処理し、満塁走者を残してヤン・ヒョンジョンの追加失点はなかった。
現在、キム・グァンヒョンとヤン・ヒョンジョンはまだMLBでの経歴が少なく、累計記録を根拠に答えを見出せるほどではない。キム・グァンヒョンはまだカージナルスのマイク・マダックス投手コーチやマイク・シルト監督から全幅の信頼を得られていないことも事実だ。これは2巡目、3巡目でピンチを自ら招いたことがあるためだ。
彼らの先輩であるトロント・ブルージェイズのリュ・ヒョンジンが、年俸2000万ドルもの額を受け取っている理由は、このピンチを招かないからだ。
1回から3回を見事に投げ、危機に直面すると急に乱調に陥るパターンも少なくない。打者は投球パターンを読み、投手が上回ることができないからだ。抑え投手が試合を締めくくるのが難しいのも、打者はすでに投手の癖や球筋などを把握しているからだ。
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