「ずっと“放り込みサッカー”をするわけにはいかないじゃないですか…それでは韓国サッカーは足踏み状態のままです」
サッカー韓国代表の主力左サイドバックであるDFホン・チョル(30、蔚山現代)が、先日行われた日本代表との国際親善試合で完敗して以降に再浮上した“ベント監督のビルドアップサッカー”の実効性について、信念を持って語った。
ホン・チョルは去る4月8日、蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)のクラブハウスで本紙『スポーツソウル』のインタビューに応じ、次のように述べた。
「こんなことを言うと悪口を言われるかもしれないが、後方からのビルドアップは現代サッカーの主流だ。韓国の選手は幼い頃からただ勝つためにボールを遠くに蹴り込み、セカンドボールを取って攻めることに集中していた」
「結果が悪いからといって、今すぐ監督を交代してまた“放り込みサッカー”をしてしまえば、我々のサッカーが発展することはできるのか?」
韓国代表を率いるパウロ・ベント監督は、去る2018年8月に新指揮官に就任後、後方からのビルドアップによる攻撃的なサッカーで話題を集めた。
ベント監督はホン・チョルなど左右のサイドバックを中心にしたサイドからのビルドアップはもちろん、中央での有機的なパスワークも用いて多様な攻めを描いていた。実際、就任直後に国内で行われた欧米諸国との親善試合で印象的な戦いを見せたことで、周囲の期待も日に日に高まっていた。
しかし、2019年1月にアジアカップ準々決勝で敗れて以降、ベント監督の掲げるビルドアップにクエスチョンマークが付けられた。さらに、先日の“日韓戦”で0-3の大敗を喫した直後には非難の世論が殺到した。
後方からのビルドアップにおける前提条件は、後方で安定的にボールを保持できることと、いかに相手のプレッシャーを脱出できるかだ。ところが、日本代表の前線からのプレスに対応できなかったことで、韓国代表には非難の声が多く届けられた。
韓国代表は“日韓戦”前から選手派遣をめぐるクラブとの疎通不足を指摘され、全選手がそろっての練習もままならないなど、正常なパフォーマンスを発揮することが難しい状況だった。とはいえ、これといった抵抗もできず無気力に崩れたことに韓国のサッカーファンは衝撃を受けた。
ホン・チョルは“日韓戦”での敗北に関する申し訳なさを伝えつつも、代表が目指すビルドアップサッカーについては力を込めて語った。
ホン・チョルは「後方ビルドアップが不安なのは、実際のところ同様のサッカーをするどのチームも同じだ。例えば、マンチェスター・シティもビルドアップをする過程でボールを奪われるとマイナス要素が生まれるが、一度解決すれば大きな力を発揮し、面白いサッカーをする」とし、「代表チームのビルドアップが不安で時期尚早とも言われているが、選手たちは“韓国サッカー発展のためにやらなければならない”という覚悟だ」と強調した。
また、後方ビルドアップに対する挑戦と完成への意志は、韓国サッカーの課題となっている“サイドバック飢饉”を解決するカギになると言及。
「現代サッカーでサイドバックは戦術の基本になっている。以前までサイドバックの競争力を問われた際に機動力しか出てこなかったが、今は多くの才能がなければならない。自分もいずれ指導者をする際には、サッカーが得意な選手をサイドバックにしたい」と述べた。
ホン・チョルは“日韓戦”の期間、誰よりも気苦労を抱えていた。というのも、代表メンバー選出をめぐる論争の中心にいたからだ。
2021シーズン開幕以降、ホン・チョルは膝の軟骨負傷から回復して徐々に実戦感覚を取り戻している段階だった。
ところが、ベント監督が無理に招集したのではと批判の声が出ていた。蔚山現代のホン・ミョンボ監督も「疎通をよりすべきだった」とコメントしたほどだ。
これらの議論に関して、ホン・チョルは当時をこう振り返る。
「ホン監督に“行くべきでしょうか”と正直に尋ねるほど、最初はコンディションに自信がなかった。だが、代表に合流したときに責任感が生まれた。コンディションを理由にしたくなかった」
「より一層忠実にトレーニングをして体をコントロールし、ベント監督に日本戦で“プレーしたい”と伝えた」
試合当時は一部選手のパフォーマンスに対しても批判が相次いだが、ホン・チョルは本調子でないにもかかわらず、後半に印象的なプレーを見せた。
「日本に何もできず押し込まれたとき、腹が立ったよ。“自分のときは…”というと説教臭い年寄りみたいになるが、過去の“日韓戦”を戦った先輩たちを思い返し、もう一歩でも走ろうとした」
「日本にこうやって負けると、過去にホン監督が“日本にもう一度負けたら引退する”とおっしゃっていた気持ちがわかる。次に戦うときは必ず雪辱を果たす」
ホン・チョルは最後に、「ホン監督が自分のために(代表招集期間に)苦言を呈してくださったようで感謝している。より死に物狂いで走ることにした。それと、あまりにたくさん報じられたからか、今も多くの人が自分に“体は大丈夫か”と聞いてくる。ここで言おう。もう痛くない」と笑いながら語った。
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