“韓国の神童”襲う過剰非難、狂気に満ちた魔女狩り なぜイ・ガンインは「犯罪者級」に叩かれるのか

日本でも大きな話題になったサッカー韓国代表の“内紛騒動”。その主要人物として取り上げられたのが、キャプテンのFWソン・フンミン(31、トッテナム)とMFイ・ガンイン(22、パリ・サンジェルマン)だった。

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当時、一部のベテラン選手は怒り、監督にイ・ガンインのメンバー除外を要請した。何人かの選手はボイコットを言及したりもした。

ただ、現在まで確認された事実はこれ以外にはない。

現場で実際に争う様子を直接目にした選手、関係者以外の人々は、イ・ガンインとソン・フンミンがなぜ争ったのか、どのように争われたのかは明確にはわからない。

当事者となる選手たちは一貫して沈黙を貫いている。ただ、一部メディアは2人が争ったという場面を“アクション映画”のように具体的に描写する報道を出した。まるで実際に現場を目撃したり、映像を見たりしたかのような書き方だ。

イ・ガンインには「先輩に殴り掛かった人」というレッテルが貼られた。ただ、目撃談はあくまで目撃談に過ぎない。

情報が回り回れば誇張、誤伝となり、事実が歪曲される恐れがある。だからこそ、慎重に報じる必要がある。

イ・ガンインを襲う“狂気の非難”

韓国国内で、イ・ガンインに対する狂気の“魔女狩り”が続いている。

選手の個人アカウントに誹謗中傷が殺到するSNSテロは基本であり、今回の事態を“卓球ゲート”として嘲弄する投稿まで登場した。一部メディアはそれらをキャプチャした画像を用いて記事を作成した。

韓国でリーグ・アンを中継する放送局は、イ・ガンインがリーグ戦で先発出場したにもかかわらず、いつも中継画面に表示させていたイ・ガンインの画像を表示しなかった。イ・ガンインをモデルに起用していた一部ブランドは広告掲載を中止した。

多くの韓国国民に愛されてきた“神童”は一瞬にして“問題児”と呼ばれ、後ろ指を指されるようになった。

大会期間、それもキャプテンのソン・フンミンと争ったイ・ガンインに過ちがないわけではない。批判に値するのは確かだ。

何より、争いの過程でソン・フンミンは負傷している。十分、問題の素地はある。

イ・ガンイン自身もSNSを通じて「自分が先頭に立ってヒョン(兄)たちの言葉に従うべきだったのに、サッカーファンの方々に良くない姿を見せることになり、申し訳なさしかありません。自分に対し失望した多くの方々にお詫び申し上げます」とし、「これからはヒョンたちを助け、より良い選手、より良い人間になれるよう努力します」と長文の謝罪文を掲載した。

謝罪の一言で何もかもなかったことになるわけではない。合理的な批判は十分にあり得る。

しかし、あまりに過剰ともいえる狂気に満ちた大衆の非難は、イ・ガンインの立場では当惑せざるを得ない。イ・ガンインは犯罪を犯したわけではない。

イ・ガンイン
(写真提供=AP/アフロ)イ・ガンイン

日常的に知られていなくても、選手間の葛藤は頻繁に起きるものだ。

代表選手となればほとんどが高いプライドを持っており、個性もハッキリしている。“我”というのを出したがるから、さまざまな理由で摩擦も起きる。

今は成熟したソン・フンミンも“葛藤の当事者”となったことはなる。今回の件も、争いの程度は異なれど賢明に縫合すれば何の問題もなく解決したはずだ。

イ・ガンインは2月19日に23歳の誕生日を迎えたばかりだ。まだ十分若い選手と言えるし、未熟で足りない部分もあるかもしれない。

それでも、ソン・フンミンやMFキ・ソンヨン(35、FCソウル)のような先輩選手たちも、多くの試行錯誤を経て韓国を代表するトップ選手に成長した事実をサッカーファンたちは理解している。

イ・ガンインは韓国サッカー界の大切な資源だ。大会期間はチーム内で最も優れたパフォーマンスを見せたし、韓国代表から唯一アジアカップの大会ベストイレブンに選ばれた、

5年前の2019年、イ・ガンインは2歳年上の選手が出場するU-20W杯で大活躍し、韓国代表の準優勝をけん引。自身も最優秀選手を表彰するゴールデンボールを受賞した。もしかすれば、国際大会で二度と見られない場面かもしれない。

今後もしっかりと成長を見守り、ソン・フンミンのような世界的選手になる過程を期待しなければならない。

有望株が登場するテレビ番組を見ると、親や周囲の人物の努力によって変わる子どもたちの姿を簡単に見ることができる。

今回の件は、イ・ガンインにとって大きな教訓となったに違いない。

これまでは先輩たちの理解や配慮、監督の仲裁などによって問題が大きくなることはなかった。“自然人”イ・ガンインだけの力ではミナを説得することは難しいという事実を知ったはずだ。

(構成=ピッチコミュニケーションズ)

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◇イ・ガンイン プロフィール

2001年2月19日生まれ。韓国・仁川広域市出身。身長174cm。大韓民国のサッカー選手で、サッカー大韓民国代表。幼少期に出演したKBSサッカーバラエティ番組『飛べ、シュットリ』で類まれなる才能を発揮し、“神童”として一躍注目を集めた。2011年にスペインに渡りバレンシア下部組織に入団し、2018年10月にトップチームで公式戦デビュー。2021年夏にフリーでマジョルカに加入、2023年夏にフランスのパリ・サンジェルマンに完全移籍。マジョルカ時代の同僚である日本代表MF久保建英(レアル・ソシエダ)とは同じ2001年生まれで、普段から仲が良いことで知られている。

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