米メジャーリーグでは、チームの生え抜き選手に長期契約を提示しても断られるケースが多い。
2022年シーズンの初め、ワシントン・ナショナルズは外野手フアン・ソト(25、現ニューヨーク・ヤンキース)に15年4億4000万ドルの契約延長をオファーしたが断られた。結局、ソトはトレードでサンディエゴ・パドレスへ移籍した。
メジャーの敏腕代理人で知られるスコット・ボラス氏は、FA市場で選手の価値を秤にかけることで有名だ。
稀に、前所属チームと契約する場合もある。元ロサンゼルス・ドジャースの右腕投手ダレン・ドライフォート(51、引退)、元ナショナルズのスティーブン・ストラスバーグ(35、引退)だ。しかしあいにく、負傷により長期契約は失敗した。
FA市場に出ると予測が難しい。年俸は各球団の獲得競争によって簡単に跳ね上がる。特に先発投手、生え抜きスターのような人気選手などがそうだ。引退後の名誉の殿堂入りまで計算したからだ。
昨年のFA市場を熱く盛り上げたスターはヤンキースのアーロン・ジャッジ(31)だ。
球団はシーズン途中、再契約を望んだが失敗した。ジャッジの代理人はPSIマネジメントだ。結局、オフに9年3億6000万ドルの契約を結び、大谷翔平(29)がドジャースと10年7億ドルを結ぶまではFA市場過去最高となる金額を記録した。
ポスティングでFA市場を盛り上げている日本人投手・山本由伸(25)も同じだ。
12月19日時点の報道によると、メジャーで資金力のある球団は軒並み獲得競争に飛び込んでいるという。
先週末には獲得競争の先頭走者であるニューヨーク・メッツが動いた。オーナーのスティーブン・コーエン氏が自宅に山本を招き、夕食をともにしたという。コーエン氏はすでに一度日本に渡り、直接会ったこともある。
隣家のヤンキース、ボストン・レッドソックス、ドジャース、サンフランシスコ・ジャイアンツ、フィラデルフィア・フィリーズ、トロント・ブルージェイズなどがすべて山本獲得競争に乗り出したのを受け、オーナー自ら乗り出した形だ。
山本側はこの3日間でメッツ、フィリーズ、ヤンキースの関係者などと会ったとも伝えられている。
こうなれば、山本の市場価値は天井知らずに跳ね上がるしかない。シンシナティ・レッズの元GMで、現在はアメリカメディア『ジ・アスレチック』のコラムニストを務めるジム・ボーデン氏は、山本の契約を「10年3億ドル以上」と見込んでいる。
メジャーのFA市場において、投手の10年契約は過去に一度だけあった。
1976年冬、クリーブランド・インディアンス(現クリーブランド・ガーディアンズ)が右腕投手ウェイン・ガーランドと10年総額230万ドルの契約を結んだのが最長だ。
もっとも、ガーランドが優秀な投手だったために10年契約を結んだわけではない。
当時はFAが導入された初期だった。結局、契約後のガーランドは5年プレーし、通算55勝66敗の防御率3.89で現役を終えた。
ただ、山本はすでに日本プロ野球で実力が証明されており、年齢も25歳と若いことから、10年契約恩価値があるというのがメッツ元GMのスティーブン・フィリップス氏の分析だ。
山本は2023年シーズン、オリックス・バファローズ所属で23試合に先発登板し、16勝6敗の防御率1.21を記録した。投球回は164回、奪三振率は9.3、WHIP(投球回あたりの与四球・被安打数合計)は0.88だ。
また、今年3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、2試合に登板して7.1回の12奪三振、2失点を記録した。
『MLBネットワーク』は19日、山本関連のニュースの見出しに「escalate」と付けた。資金力のある球団がすべて競争に参入し、契約期間の年俸がいずれも予想を上回る状況となった。FA市場の属性を上手く利用していると言って良い。
専門家たちは、クリスマス前までには山本の新天地が決まると予想している。
はたして、どれだけ天文学的な契約金額となるか、想像を絶する推測が飛び交っている。
ただ、明らかなこともある。アメリカスポーツにおける「Never say Never(あり得ないなんてことはない)」だ。大谷の7億ドルも誰が予想していただろうか。
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