政府・自治体から一方的に利用される韓国サッカー界…世界スカウト大会の“お粗末行政”で犠牲に

2023年08月08日 サッカー #Kリーグ

「自発的協力」と「一方的な犠牲」はまったく異なる概念だ。

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全北現代(チョンブク・ヒョンデ)モータース対仁川(インチョン)ユナイテッドのKリーグ1(1部)第25節が行われた8月6日の全州(チョンジュ)ワールドカップ競技場。

この日、全北サポーターはゴール裏で「ジャンボリーもダメにして、全北もダメにして!」「グァンヨン氏!協力?脅迫の兆し」「死んだジャンボリーに追い出されるサッカー」など、過激なメッセージが盛り込まれた横断幕を掲げた。

また、試合中には全羅北道(チョルラブクト)のキム・グァンヨン知事への抗議として「キム・グァンヨン、出ていけ!」というコールも叫ばれた。

抗議の横断幕を掲げる全北現代サポーター

もっとも、これらは理由ある抗議だった。

韓国では今月1日から、世界スカウト機構による合同キャンプ大会「2023セマングム第25回世界スカウトジャンボリー」が全羅北道・扶安郡(プアングン)のセマングム干拓地で開催されていた。

158カ国から約4万3000人もの14~17歳の青少年が参加している今大会だが、開催直後から問題が次々と発生して物議を醸した。

例えば、会場内のコンビニにおける“ぼったくり問題”や猛暑による熱中症患者の続出。さらには参加者に支給されたゆで卵からカビが発見され、キャンプ場内の女性シャワー室に30~40代と推定されるタイ人男性指導者が侵入したことが発覚するなど、あらゆる問題が連日のように起きた。

そんななか、大会を締めくくる一大イベントとして、当初は6日に扶安郡のセマングム野外ステージで「K-POPスーパーライブ」を開催する予定だった。

ただ、韓国政府・文化体育観光部のパク・ボギュン長官とキム知事は開催予定日だった6日、ジャンボリープレスセンターで記者会見を開き、「延期されたジャンボリーのK-POP公演を11日、全州ワールドカップ競技場で開催する」と発表した。

キム知事は「K-POP公演を前後にして全北現代のホームゲームが予定されていたが、(クラブ側が)ほかの会場に移して試合を行うようにしたことに感謝している」と、あたかも全北側が全面的に協力してくれたかのように発言したが、事実はそうではなかった。

同日、全北の関係者は「クラブも今日(6日)初めて知らせを受けただけだ。何の協議もなかった」と困惑した様子を見せていた。

政府と自治体の一方的な決定により、全州ワールドカップ競技場で行われる予定だった9日の全北対仁川のFAカップ準決勝、12日の全北対水原三星(スウォン・サムスン)ブルーウィングスのKリーグ1第26節は正常に開催できなくなった。

全北はもちろん、アウェイに乗り込む予定だった仁川と水原三星とも何の協議もないまま伝えられた決定によって、Kリーグは大混乱に陥った。

FAカップ準決勝の開催場所・時期をめぐり、FAカップを主催する韓国サッカー協会(KFA)、そして全北と仁川が鋭く対立し、三者が満足できる結論を下せなかった。

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)8月6日に行われた全北(緑)対仁川(白)

結局、KFAは7日、全北対仁川のFAカップ準決勝延期の公文を両チームに発送した。

仁川は大会延期を明確に反対した。

仮にFAカップ準決勝が8月29日か30日に延期となる場合、仁川は真夏に殺人的なスケジュールを消化しなければならない。

仁川は22日にホームでAFCチャンピオンズリーグ(AFC)のプレーオフを戦った後、25日にアウェイで水原FCとのKリーグ1第28節、9月2日にホームで浦項(ポハン)スティーラーズとのKリーグ1第29節をこなす。

しかし、この間に平日にFAカップの試合が割り込んだ場合、9月2日の浦項戦までの約10日間でなんと4試合をこなさなければならない。

「ジャンボリー・バタフライ効果」が、2023年シーズン後半戦を戦う仁川に莫大な悪影響を及ぼすわけだ。

まさに寸劇だ。Kリーグを混沌に陥れたこの決定は、わずか1日で覆された。

日本の九州南部を通過予定の台風6号が全州も通ることを考慮し、K-POP公演の会場を首都圏のソウルワールドカップ競技場に変更することにしたのだ。

また、台風の接近に伴い、参加者全員がキャンプ地のセマングム干拓地から早期撤収。ソウルや京畿道(キョンギド)などの首都圏を中心に分散され、各地で文化体験を行うことになった。

台風予報は以前からすでに伝えられていたが、ジャンボリーの組織委員会や政府、自治体はこの変数を考慮せず、無理やり全州ワールドカップ競技場で公演を開催しようとした。

だが、結局は台風を憂慮して、遅れて急きょ会場を変更する拙速行政に一貫したわけだ。

ただ、8月12日の全北対水原三星のKリーグ1第26節は予定通り全州ワールドカップ競技場で開催されることになったが、9日に予定されていた全北対仁川のFAカップ準決勝は延期が正式に決定した。

“ジャンボリー事態”によって韓国の国家ブランドのイメージと価値が心配される状況で、サッカー界も要請に協力する余地はある。

サッカー、ひいてはスポーツも社会の一部であるだけに、助けの手を差し伸べる行為自体におかしなことはない。

問題はやり方だ。最近の韓国政府と自治体は、サッカー界を配慮しない一方的な決定で迷惑をかけ続けている。

道理に合わない、一貫的に無理を押しつける態度はいくら指摘しても全く変わる気配がない。

今回が初めてではない。Kリーグ2(2部)の釜山(プサン)アイパークは今年5月、気候産業国際博覧会の閉幕式を兼ねたK-POPフェスティバル「ドリームコンサート」、6月の国際Aマッチのための会場補修により、ホームの釜山アジアード主競技場を明け渡した。

さらには今月3日、パリ・サンジェルマンの訪韓試合によってやはりホームを遣えなかった。当時、釜山市はクラブにまともな協力要請を行わなかったことから、ファン・サポーターを中心に議論を呼んでいた。

Kリーグは今季、観客平均1万人を維持して興行に成功しているが、社会全体で見れば依然として波及力が足りないのが事実だ。

国内屈指の大企業ですら政府の顔色を伺うのに、KFAや韓国プロサッカー連盟が堂々とサッカー界を保護できるような状況ではない。

それでも、大企業は政府と利権や規制緩和などさまざまな利害関係が絡んでいるとはいえ、サッカー界はそうでもない。

韓国政府と自治体がサッカー界に示す無礼な態度は、150万人をゆうに超えるKリーグの観客を無視する処置だ。

(構成=ピッチコミュニケーションズ)

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